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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第8章
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第29話 俺は魔法の援護を受ける

 魔導具を装備して突っ込むクロエさんに、サンダーバニーの電撃が襲い掛かる。


 電撃に反応したクロエさんは、左手に持っていた魔導具を起動して土製の盾を展開する。上半身を覆い隠すように現れた大型の盾を角度を付けて斜めに構え、電撃を左斜め後方へと受け流す。


 クロエさんの右斜め後ろにくっ付いて移動しながら、よくあの電撃に盾を難なく合わせる事が出来るなと感心する。アミーラと練習した時、俺は受け止める事しか出来なかった。それも何度も失敗して漸く成功したくらいだ。アミーラとの特訓は、アミーラのストレス発散に使われた気がしている。


 なんて事を考えていると2発目の閃光が左に流れて行く。俺はクロエさんの影に隠れながら、魔導具の武器を腰に携えて追いかけた。


 直撃を回避しているとはいえ衝撃は相当なものがあったようで、土の盾の一部がボロボロと崩れ落ちている。元々俺が一度きりで使う予定の盾だったから、盾の再生機能は搭載されてない。


 しかし、クロエさんは気にせず走り続ける。3度目の電撃を辛うじて防いで無用の長物となった魔導具を投げ捨て、目の前のサンダーバニー達を睨み付ける。獲物を逃すまいと一直線に駆け寄りながら、


「うがあああああ!」


 後方に控える俺の腹にも響く程の、大きな雄叫びを上げた。


 クロエさんの威嚇に雄ウサギは怯まなかったが雌ウサギ達は敏感に反応し、身を寄せ合って寒さから守っていた筈の雄ウサギから飛び退る。俺達より先に余興に参加していたクロエさんは1度雌ウサギ達を捕まえている筈だから、その時に何かのトラウマを植え付けていたのかもしれない。


 雌ウサギが離れた瞬間を狙って、クロエさんが身体を捻りながら右拳を勢い良く前に突き出し、纏っていた冷気を弾状にして射出する。


 冷弾が地面に着弾してこれ以上気温が下がる事を嫌ったのか、雄ウサギは逃げずに電撃を放って迎え撃つ。雄叫びに驚いて随分と距離を取ってしまった雌ウサギ達は、再び雄ウサギに近寄って温めに行くより、離れた地から電力を雄ウサギに渡す事を優先した。


 雌ウサギが離れ、雄ウサギの注意が飛来する冷弾に移ったタイミングを見計らい、一瞬にして地面の一部が迫り上がり、雌雄を切り離す土壁が出来上がる。


 ナイス父さん。高さも横幅も、タイミングも素晴らしい。壁の向こうに居る雌ウサギ達の捕獲は任せたよ。


 冷弾が電撃にぶつかって弾け飛んだ直後、間髪入れずにクロエさんが2発目の冷弾を発射する。


 電力供給が止まった雄ウサギは連続して電撃を放つ余裕が持てず、それならば壁の向こうの雌ウサギ達と合流しようと、グッと身体を縮めて力を蓄えた。


 見上げると首に負担が掛かる程の高さがある壁の上まで到達出来るとは思えないが、その動きはありがたい。俺は携帯している魔導具の魔石に向かって言霊を放つ。


「捕縛」


 溜めた力で思い切り地面を蹴り上げ、勢い良く上空に飛び上がった雄ウサギに、リュックのポケットから飛び出した数十本の植物の根が襲い掛かる。


 流石に飛び上がった後は一定の動きしか出来ないだろうと判断して使用したが、氷結魔法で下がった気温の為か想定より植物の発育速度が悪く、雄ウサギのジャンプ速度に追いつけそうにない。


 耐寒性を持つ植物にしておけば良かったかと後悔したその時、


「荷重」


 掠れた声で形作られた重力魔法の言霊と共に、バカと弱々しく罵る声が耳に届いた。




 その重力魔法の効果時間は一瞬だったが、雄ウサギの自由落下開始を早めるのには充分な効果を発揮した。


 ジャンプの頂点を無理矢理変更させられた雄ウサギは土壁を飛び越える事が出来ず、落下しながら壁を蹴って逃げようとしたところで植物の根に追いつかれて捕縛された。


 受け身を取れずに地面に落下した雄ウサギだが、雷撃魔法で植物を焼き切って逃げ出す程の足掻きを見せる。


 が、その間に気配を消して接近していたクロエさんが冷気を纏った右手で雄ウサギの角を捕まえた。冷気と落下による衝撃の為か、出会った当初の動きが雄ウサギには見られない。


「これで終わりだ。今楽にしてやるから、観念しろ」


 角から頭部に伝わる冷気に苦しむ雄ウサギ目掛けて、俺は炎を纏った直剣を振り下ろした。




 ふぅっと大きく息を吐いて、直剣を腰の鞘に納める。


 やり切った事に満足している自分が居るが、何の為にサンダーバニーと対峙していたのか、その目的は最早忘れてしまった。


 しかし、途中で援護が入ったのはしっかりと覚えている。


 魔法は使わないって言ってたのに。


 文句を言ってやろうか。


 それとも感謝を伝えようかと悩みながら後方を振り返ったが、俺の言葉を受け止める相手は既にそこには居なかった。

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