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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第18話 俺は2人の対立を見守る

 姉さんが南の炭鉱都市エルツに出発して3日目。姉さんはまだ帰って来ない。


 姉さんは近場だと日帰りで帰って来る。

 街の滞在時間が少ないとエルフ族を探せないから、ちょっと遠いと1泊する。エルツは1泊の予定だった。

 2泊するなんて珍しい。もしかしたらエルフ族が見つかったんだろうか。

 でも見つかったら冒険者ギルドを使って直ぐに報告してもらう手筈になっているんだ。

 連絡が無いってことは見つかってないんだと思うけど、興奮した姉さんが忘れてる可能性もある。


 まさかほんとに鉱山で迷子になってるとかないよね。

 後は食べ物に魅かれて帰りたくなくなっちゃったとか?

 うーん、どっちも考えられる。姉さんだからな。


 ただ待っているだけだと無駄なこと考えちゃうな。

 次はベルクブルクに行ってもらうから、そこの情報でも調べて時間を潰そう。

 意外と風土記というか旅行雑誌というか、各地の情報誌が図書館に結構あるんだよな。




 図書館で新たに本を借りて帰って来ると、家の中に姉さんの声が響いていた。

 よかった、無事に帰って来たみたいだ。

 さっそく姉さんに話を聞きに行こう。


 姉さんの部屋に入ると、地図を広げて眺めている姉さんが目に入った。

 次の目的地を確認してるということはエルフ族はやっぱり居なかったか。


「エルツはどうだった?」


 エルツはどんな街だったのかな。何か美味しい食べ物はあったかな。


「居なかった。エルフに炭鉱の街は似合わないかもね」


 似合うかどうかなら似合わないと思うけど、そう言う理由でエルツを選んだんじゃないでしょ。


「エルフを探しているんですか?」


 あれ、アンナさん居たの?

 急に声を出すからびっくりした。まったく気付かずエルフの話をしちゃった。


「そうだよ。言ってなかったっけ」


 ぶっきらぼうに姉さんが答える。もしかしてアンナさんと喧嘩してる?

 さっき家に声が響いていたのはそのせいか?


「エルフに会ってどうするんですか?」


「エルフに草木魔法を教えてもらおうと思って」


 機嫌が悪そうに見えるけど、聞かれたことにはしっかり答えている。

 どういう状況なんだろう。俺は息を殺して二人の顔色を窺うことしか出来ない。


「草木魔法はエルフ特有の魔法として知られてます。我々には無理じゃないでしょか」


「それはやってみないと分からないじゃん。今までの人は、色や言霊を知らなかったんだし。私がヴルツェルで麦や野菜を育ててるのを見てるでしょ。それも草木を理解するためだから」


 苦手な本も読んで勉強してるんだから、と付け加える。

 うんうん、これまで以上に姉さんは頑張ってると思うよ。


「最近ヴルツェルに居る間、私はアリー様をデニスさんに任せてリタさんと料理をしたりしているので、いつもアリー様の様子を見ているわけではありません。ヴルツェルに行く目的はクロエと遊ぶ為ですよね。いつも直ぐに会いに行くじゃないですか」


 ええっと、父方の婆さんの名前がリタだったよね。爺さんがデニス。

 2人に会った記憶は無いけど、名前くらいは忘れないように気を付けないとね。


「クロエは可愛いからしょうがないね。そうだ、今度クロエをここに連れて来てゲオルグにも紹介するね。クロエはふわっふわだよ」


「クロエと仲良くするなとは言いませんが、仕事の邪魔をしてはいけませんよ」


 アンナさんは本当に姉さんが遊びに行ってるんだと思ってるみたいだ。もっと姉さんのことを見てあげてよ。


「土魔法で土地を耕して、水撒きも手伝ってる。金属魔法で農具の手入れもやった。私以上の手伝いは居ないね。邪魔してるとかいうなら、美味しい野菜が出来てもアンナにはあげないから」


 思ったより色々やってて俺の方が驚いた。

 種を蒔いて育てているだけかと思っていたら、土魔法と金属魔法か。

 水撒きも水魔法でやってるんだろうね。魔法でなんでも出来ちゃう姉さんならではの手伝い方だ。


「それは知りませんでした。すみません」


 アンナさんも驚いたのか素直に謝罪した。分かればよろしいと姉さんが胸を張っている。

 勝ち誇っている顔がまたいいね。


「よく農具の手入れとか知ってたね」


「師匠に教えてもらった。農業やるなら農具の手入れくらい出来んといかんぞ、って言われてさ」


 ソゾンさんと出会った当初は武具しか作らない人なのかと思ってたけど、意外となんでもやれるんだよな。金属が絡む仕事なら何でも出来るぞって感じだ。武具以外は多少愚痴は言われるけどね。一番好きな仕事は武具の製造なんだろうな。


「今回行ったエルツのご飯も美味しかったよ。お土産も買ってきた。王都では食べたことない料理がいっぱいあったんだ。初日に食べ過ぎて、2日目はベットから起き上がれなかったよ」


 今回遅れた理由はそれか。食い過ぎで動けないパターンは考えてなかったね。

 よっぽど料理が気に入ったのか涎を垂らしている。いいなぁ、お土産は嬉しいけど、俺も食べに行きたい。


「次は北のベルクブルクだよね。また新たな食べ物との出会いの予感がするね」


「今日その街の事を詳しく調べてたんだ。そこは北側の国との国境を跨いで建てられた街で、街の南北で管理している国が違うんだって。だから両国の食材や調理法が混ざり合って、新しい料理が出来ているらしいよ」


「へぇ、それは楽しみだね」


 うん、俺は食べられないけど感想を楽しみにしてるよ。お土産もね。


「やっぱりキュステに行きましょう」


 俺達が次の街の事で盛り上がっていると、アンナさんが割り込んできた。

 アンナさんも知ってるでしょ、その街は駄目なんだよ。


「嫌だって言ったでしょ。もう次の行き先は決まったんだから、今回はアンナと別行動で」


 姉さんがイライラしてる。

 あ、もしかして俺が入ってくる前もそのことで喧嘩してた?

 姉さんがアンナさんを睨みつけているが、まったく効いていない。むしろ今度はアンナさんが勝ち誇っているように見える。


「そうですか、それは残念ですね。では私は1人でキュステに行って、昔馴染みのエルフに会って来ますね。ああ、残念だなぁ」


 ことさら大げさに残念がるアンナさん。

 それはどっちだ、嘘か?本当か?

 あのアンナさんの態度を見るにかなり自信がありそうだ。アンナさんに嘘をつく理由は無いし、本当に知り合いのエルフがいるのかも。

 姉さん、どうする?アンナさんを信じる?

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