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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第8章
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第11話 俺は事の成り行きを見守る

「おい、やっと見つけたぞ。父上、こいつです。何もしていない俺達に急に攻撃を仕掛けて来たのは」


 男爵邸から図書館に向かう道中、4人の青少年と数人の大人が俺達の前に立ち塞がった。


 それと同時にルトガーさんが俺とマリーの前に出る。


 周囲を歩く人々は、なんだなんだと野次馬根性を出して立ち止まる人と、とばっちりを受けないよう足早に去って行く人に別れていた。


「私どもに何か御用でしょうか」


 ルトガーさんが落ち着きを保ったまま、眼前で進路を妨げている面々に声を掛けた。


「用があるのはそこの娘だけだ。よくも俺達に恥を掻かせてくれたな。今更頭を下げても許さんからな」


 あちらの青少年の1人がマリーを指差して怒りを向けている。


 マリーさんや、あの方々はお知り合いですか?


「いえ、全く記憶に無いですね。誰かと勘違いなさっているのでは?」


 周囲の野次馬にも聞こえるように声高に惚けている。


「こ、こいつ、ふざけるなよ。この間の、冒険者ギルドでの事を、忘れたとは言わせねぇぞ」


「すみません。忘れてしまったので詳しく教えてください」


 即答して頭を下げるマリーに、青少年は更に激昂する。


「お、ま、え、が、風魔法で俺達を吹き飛ばしたんだろがっ」


「あ〜、思い出しました。年下の女の子をナンパしようとして失敗し、汚い言葉を使って嘲笑って来た挙げ句に、学校に通う前の子供が使う風魔法一発で目を回した胸糞へっぽこ新人冒険者さんじゃないですか」


 そんな大声で思い出さなくてもいいんじゃないですかねマリーさん。あんな小さな子供を、とか、魔法一発で、とか、野次馬の皆さんがコソコソ噂してますよ?


 どうやら野次馬の中にその出来事が起きた時にギルド内に居た人もいるようで、噂は正確性を帯びて広まっている。


「それで、その負け犬さんがどうしたんですか?今更謝罪されても、私はあの時言われた言葉を許すつもりはありませんが。なんなら、もう一度吹き飛ばしましょうか?次は手加減しませんが」


 言葉に怒りの感情を乗せて相手を挑発するマリーは、右手を天に向かって突き出し、頭上に小さな竜巻を発生させた。


 ビュウビュウと風切音が聞こえる程に凝縮された風魔法を見て、先程まで威勢が良かった青少年は及び腰となっている。なんだか凄そうな魔法を見て恐るのは分かるが、父上と呼んだ大人の影に隠れるのは流石にカッコ悪いぞ青少年。


 そんな息子の姿を見て、やれやれといった様子でその父親がルトガーさんに話し掛ける。


「そちらの少年はフリーグ男爵の御子息だと御見受けするが、間違いないかな?」


 ルトガーさんがそうだと答えると、野次馬達もザワザワと騒ぎ始めた。どうやら俺の噂を聞いた事がある人達が居るらしい。俺の知らないところで、俺は有名人になっているようだ。


「私の息子が何やら迷惑を掛けたようだが、冒険者ギルドの方からもその娘が先に手を出したと報告を受けている。出来れば謝罪を要求したいのだが」


「それは出来ません」


 風魔法を維持したままルトガーさんの隣まで歩み出たマリーが、向こうの提案を拒否する。あちらはルトガーさんに向けて話をしていたようだけどね。


「息子には社会勉強の為に冒険者をやらせてみたんだが、実は私はある貴族に仕える身でね。もちろん男爵家よりも上位の貴族だ。それでも、息子に頭を下げる気はないかね?」


「はい。父親が仕える貴族が立派な人物だとしても、当人には関係無いでしょう。これは私とそちらの4人との問題です」


「流石にそういうわけにはいかないんだ。君も貴族家に仕えているのなら主人間の上下関係を意識した方がいいね。男爵家に仕える者は娘にそういった教育はしないのかね?」


 今度はマリーが口を挟めないように、ルトガーさんをしっかりと見て話し掛ける。


「さあ、残念ながらこの子は私の娘では有りませんので。産まれた時からずっと見守っている家族では有りますが。マリー、今は魔法を使うのは止めなさい」


 ルトガーさんの忠告を聞いて、マリーは右手を下ろして風魔法を解除する。


「この通り、分別のある良い子なんですが、頑固な部分もありまして。余程そちらの御子息に言われた言葉に腹が立っているのでしょう」


「俺は、お前の仕える貴族の息子より、俺が仕えている貴族の息子の方が立派だからこっちに来た方が得だぞって教えてやっただけだ」


 あっ、馬鹿。ここでまたそんなことを言ったら、折角矛を収めようとしていたマリーがまた魔法を。


「そうですか、そんな事を。坊っちゃまに仕える身として、その言葉は私も看過出来ませんね。謝罪を要求します」


 ああ、ああ。マリーだけじゃなくてルトガーさんにも火がついちゃったよ。

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