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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第8章
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第10話 俺は魔導具の再利用法を考える

 気落ちしているロミルダにどんな魔導具を作らせようかと一晩考えた結果を、朝のラジオ体操前にマリーに相談した。


「確かに一度作った魔導具の細部を変更して新たに作るのならロミルダも簡単に出来るでしょうが、ゲオルグ様は魚を飼育した経験は有るんですか?」


 ん?無いよ?


 そういうマリーは有るの?


「無いですよ。私はこの世に生を享けて以来、ゲオルグ様の世話しか行ってませんからね」


 人をペットのように言うのは止めなさい。どうどうどう、って馬じゃないんだよ。


「でもどうするんですか?浸種用の魔導具を一部改良して魚を飼育する為の魔導具に作り替えるのは妙案だと思いますが、入れた魚の飼育方法が分からずにすぐに死んじゃったら、ロミルダは余計悲しむと思うんですけど」


 うん、マリーの言う通りだ。


 魔導具の改良案は一晩じっくり考えたからすぐに作れるし、動物を飼うと休む事無く動き続ける必要が有るから倉庫に眠る事は無いし、ロミルダを元気付けられる良い案だと思ったんだけどな。


「良い案だとは私も思いますが、小さな命でも大切にしなければ。なので今日王都に戻って、魚人族の親方にでも相談してみましょう。図書館で魚類関係の本を探しても良いですし。何か村でやらなきゃいけない用事も無いですよね?」


 おお、それは良いね。流石マリーさん。御助言ありがとうございます。


「上手く飼育の為の情報を集められたら良いですけどね。ところで、男爵様から浸種用の魔導具を量産しろとは言われてないんですか?男爵様は明言していませんでしたが、他の貴族家に売る気満々でしたよね?」


 そうだね、俺に魔導具を作れと言ったあの日は分かりやすく目の色を変えてたもんね。


 でももう今年は必要無いってさ。男爵家と東方伯家以外で今年米を育て始めたのは5貴族家有るんだけど、どこも自分達の力でやるか東方伯と協力するかして種蒔きまで終わったんだって。ちょっと魔導具作りに時間掛け過ぎちゃったね。


「そうですか、それは残念ですね」


 そうでもないよ。クリストフさんの魔法教室を卒業した人達がしっかりと仕事をしている証拠だからね。これでまた魔法教室参加希望者が増えると、父さんは喜んでいたよ。転んでもタダじゃ起きないって言うのは父さんのことを言うんだな。


「男爵様らしいですね。卒業者を仲介する事で儲けたりしてそうです」


 確かに。俺と話した時のあの笑顔は、それくらいきっとやってるな。


「では、昼食の時間に合わせて王都へ戻るようにしましょうか。お昼休みなら親方も時間を作ってくれるでしょうし。良い時間に迎えに来てもらえるよう、高速艇の船頭さんに先に話を通しておきましょう」


 うん、マリーの提案に乗って今日は王都へ戻ることに決めた。ロミルダには声を掛けずに、他の子供達と一緒に魔法の練習を頑張ってもらおう。


 でも俺は、朝食後に小一時間程度の睡眠を取ろうかな。




「マリー、ちょっと」


 予定通りの時刻に王都に到着して船着場で愛妻弁当を食べていた親方に魚の飼育について相談した後、俺達も昼食を食べる為に男爵邸へ帰ると、珍しく母さんがマリーの事を呼び付けた。


 なんだろうと思って俺もついて行こうとしたら、女だけの大事な話だからと母さんに拒絶されてしまった。


 そういう言い方をされるととても気になるが、母さんを怒らせたら後が怖いからな。


 仕方なくカエデ達と遊んで時間を潰そうかと思ったら、昼食後のお昼寝中だった。仕方ない。昼食を食べるか。


 やっぱりロミルダにも声を掛けて王都に連れて来たら良かったと後悔しながら、俺は1人寂しく食卓に座った。




 マリーの食事終了を待って俺達は図書館へと向かう。俺とマリーとルトガーさんの3人でだ。ルトガーさんが俺の護衛について来るのは久し振りな気がする。


 サクラも行きたがるかなと思っていたがまだお昼寝中だったから起こさずに出て来た。サクラが楽しめるような児童書を探してあげようかな。


「随分とそわそわなさってますが、リリー様とどんな話をしたのか聞かないんですか?」


 隣で歩くマリーが茶化したような言い方で話しかけて来る。


 どうせ聞いても喋らないんだろ?何年マリーと一緒に居ると思ってるんだよ。


「リリー様からは、私の方からゲオルグ様に話すようにと言われたんですがね。聞きたく無いのなら別にいいんですけど」


 うん、聞かない。偶にはマリーに弄ばれないよう、確固たる意思を示すんだ。俺はいつまでもマリーのペットじゃないんだぞ。


「どうどうどう」


 馬じゃないし、興奮してもいないんだよ。


「おい、やっと見つけたぞ。父上、こいつです。何もしていない俺達に急に攻撃を仕掛けて来たのは」


 マリーに揶揄われている俺達の前に、4人の青少年と数人の大人が立ち塞がった。

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