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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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閑話 アマちゃんの悩み

「今日も桃馬に話せなかったよ」


 またマギーがやってきました。

 頭を叩かれなくなったのはいいんですが、こうも毎回ウジウジされるとこっちの気が滅入ります。

 こんな性格だとは知りませんでした。


「もうすぐ1年経つんですよ。なんなんですかその言う言う詐欺は。悩んでないでさっさと話してください」


「うん。このままじゃ駄目だっていうのはわかってるんだけど」


 これはまた駄目ですね。

 激しく叱っても、優しく諭しても、無情に突き放しても、何をしてもこの反応。

 どうしてこっちに来るんでしょうか。悩むなら一人で悩んで欲しいんですけど。


「シュバルトには相談したんですか?」


「相談したいんだけど、最近シュバルトの教会にやって来る人が多くなって忙しそうだから」


 なんで遠慮してるんですかね。あなたの世界には2人しか居ないんですから仲良くやってください。


 あーもう、ため息が長い。桃馬さんに言えない悩みとシュバルトに相談出来ない悩みが重なってため息が長いです。こっちがため息をつきたいですよ。


「もうこっそり魔法を使えるようにしてあげたらどうですか?」


「そんなこと出来るわけないだろ。もし魔力が漏れて暴発したらどうするんだ。自分の世界のことじゃないからって適当なこと言うなよ」


 そんなに怒ることでしょうか。情緒不安定ですね、これは。

 気持ちを浮き沈みさせてると疲れませんか?

 そこまで悪い案でもないと思いますけどね。


「じゃあどうするんですか。そうやってずうぅっと悩み続けるんですか?」


「はぁぁ、どうしよう」


 また長いため息を。


「わかりました。私から桃馬さんに伝えましょう」


「え、いいのか?」


 いいのか、だなんて白々しい。

 どうせそれが目的で何度も来てるんでしょ?


「じゃあ今からそっちに行きますから、ちょっと待ってください」


 まったく、最初からこうしていればよかったですね。さっさと終わらせましょう。




「桃馬さん、来ないですね」


 マギーの世界に来てしばらく経ちましたが、桃馬さんが教会に来てくれません。

 教会から神域に呼びつけないと私は会話出来ませんよ。


「マギー、早く桃馬さんを呼んでくださいよ。いつまでも長居出来ませんからね」


「別にアマちゃんが居なくても地球は大丈夫だろ。今呼んでるからちょっと待って」


 なんとまあ失礼な。私だって大切な仕事はあるんですよ。ほんとですよ。


「2人でこっちにいるなんて珍しいんだよ」


「あれ、マキナ。どうしたんですか?」


「アマちゃんのところに遊びに行ったらこっちだって聞いたから。しばらく帰って来なくてもいいと伝えといてって言われたんだよ」


「ぷぷぷ、必要ないって言われてんじゃん」


 なあああ、誰ですかそんなこと言うのは。

 マギーも笑ってないでさっさと連絡してくださいよ。


「んー、駄目だな。呼び出しに応じない。多分寝てるな」


「私は直ぐに帰らないといけないんで、桃馬さんをたたき起こしてくださいよ」


「帰らなくてもいいんだろ。この前貰った地球産の紅茶を入れるから、桃馬が起きるまで休憩しようぜ」


「あ、私は砂糖多めでミルクも入れて欲しいんだよ」


「私も」


 さては桃馬さんが寝ててほっとしてますね。呼び出すことすら嫌なんですか。

 仕方ないですね。起きたら直ぐに呼んでくださいよ。


「テーブルゲームをやろうと思ってアマちゃんのところから持ってきたんだよ」


 なんで勝手に、とは思いますが時間つぶしにちょうどいいですかね。ちゃんと3人で出来る奴を持ってきたんでしょうね。




「あ、桃馬が起きたみたいだ」


「ちょっとマギー、そうやって逃げようとしても駄目ですよ。2位争いはまだ続いているんですから」


「最初の目的から変わってるだろ」


 自分が先に逃げ出したんじゃないですか。


「んー、起きたら他の人間と話を始めたからちょっと待とうか」


「こっちにも映像が見れるようにして欲しいんだよ」


 マギーがちょちょいと操作して、私たちにも桃馬さんの映像が見えるようになりました。

 室内に4人居ましたが2人が出て行って、桃馬さんともう一人が残っている状況ですね。


「桃馬と話しているのは地球からの転生者だな。アマちゃんも知ってるよな?」


 どれどれ、誰でしょうね。


「んー、身に覚えのない魂ですね。私の担当地区以外から転生してきたんじゃないですか?」


「そうだっけ」


「神様が返事をしてくれないって言ってるんだよ。マギーは薄情だよ」


「毎日何件の祈りが届くと思ってんだよ。全部に対応出来るわけないだろ」


 広い世界を二人で管理してると大変ですねぇ。私は居なくてもいいらしいですから、楽でいいですね。




「魔法を使うことは諦めないそうですよ。さっさと諦めた方が楽だと思いますけどね」


 桃馬さんはもう一人の転生者と話し終わったようです。呼びかけるなら今がチャンスですよ。


「やっぱりアマちゃんは冷たいよな。あんな桃馬を見てなんで諦めろとか言えるんだ。私には無理だ」


「言えないから私がここに来たんでしょ。早く教会に呼んでくださいよ。他世界から来た私は神域に桃馬さんが来ないと話せないんですからね」


「いや、やっぱ止めた。桃馬には言わない。もうちょっと桃馬が頑張っている姿を見守っていくぞ」


 もうなんなんですか。折角来たのに。


「そう決めたならそれでいいですけど、もう私の所で愚痴らないでくださいよ」


「決めることは大事なんだけど、それを継続するのはもっと大事なんだよ」


「わかってるよ。これからは気を付けるよ」


 ほんとに大丈夫なんでしょうか。またすぐに泣きついてくる未来が見えるんですけどね。

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