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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第16話 俺は姉さんに謝罪する

「ちーずばーがーもお芋も美味しいね」


 夕食に合わせてニコルさんが持って来てくれたチーズバーガーとフライドポテトはみんなに好評だった。

 バンズが硬めのパンだったのが俺としてはマイナス点だけど、この国で作られているパンはライ麦パンなどの硬いパンだから仕方ない。

 挟まっているソースが絶品で、味は文句なく美味しかったのがちょっと悔しい。急に言われても出来ないでしょって、ちょっと思ってた。


 フライドポテトを食べて、これは商売になるぞと声を出している父さん。やるならちゃんとニコルさんに許可を取ってね。それと油の扱いは気を付けて。


 視界の端でコックが悔しがっている。また食べたいからニコルさんに教わっておいてほしい。


 姉さんは魔法を使っている時と美味しい物を食べている時に、本当にいい顔をする。その無邪気な笑顔を見るとこっちも嬉しくなる。


 俺はいつもこの顔を見ていたいんだ。朝はちょっと姉さんを困らせてしまったけど。


 姉さんが最初に魔法を俺に使った時の顔は今も憶えている。

 とても嫌な顔。色々なことに押しつぶされそうな顔。あの時の姉さんの方が誰かの助けを必要としていた。

 もうあの顔を見たくないんだ。


 俺が魔法を使えないって知ったら、姉さんはどんな顔をするかな。

 がっかりするかな。

 笑い飛ばしてくれるかな。

 一緒に泣いてくれるかな。

 かってに思い悩んで、あの時のような顔にならないといいけど。


「また辛そうな顔になってるけど大丈夫?おなか痛い?」


 俯いて悶々と考えていたら、姉さんに見つかってしまった。

 俺もよく顔に出るらしいから気を付けないと。


「痛くないよ。どうやってこの美味しいチーズバーガーを作るのか考えていただけ」


「あ、私も気になる。アンナに覚えてもらって今度作ってもらおうね」


 そこはコックじゃないのか。

 まあ姉さんはヴルツェルに行ったりするから、いつも一緒にいるアンナさんが覚えた方がいいか。

 名前が挙がらなかったコックは更に肩を落としてるけど。




 楽しい夕食の後、就寝前に姉さんの部屋を訪れた。


「姉さん、朝はごめんなさい」


「いいんだよ、元気になってよかったね」


 そう言いながら抱きついて頭を撫でられた。弟が謝りに来たのがそんなに嬉しかったのか。


「ちょ、ちょっと激しすぎる」


 痛い痛い。興奮した父さんに撫でられているような乱暴さ。そんなところで親子を感じさせなくていいよ。


「ごめんね、ちょっと嬉しくなっちゃって」


 ふぅ。ようやく解放された。今回は謝罪に来ただけじゃないんだ。


「ええっと。朝言われた草木魔法について考えてきたんだけど」


「はい、よろしくお願いします」


 そんなにかしこまらなくても。


「ヴルツェルに行くようになってエルフの知り合いは出来た?」


「いないよ。ヴルツェルでは獣人族の女の子と友達になったけど」


「じゃあ草木魔法って見たことある?」


「ないね」


「そう、そこが問題なんだ。草木魔法を覚えたいけど、どんな魔法なのか見たことが無い。そんな魔法を急に出来るようになるとは思わないよね」


「うんうん」


「で、草木魔法を使えるのはエルフだけだと一般的に言われている。でも俺達にエルフの知り合いはいない」


「うん」


「まずはエルフ族を探さないとね。エルフ族を探して魔法を教えてもらう。少なくともどういう魔法なのか見せてもらう」


「そうだね」


「俺はまだ王都から出られないから、姉さんに探してもらうことになるけど大丈夫?」


「任せといて。でもどこを探せばいいのかな」


「父さんや母さんの知り合いにエルフ族が居ないか聞くのがいいんだけど、みんなには内緒にするんだよね?」


「もちろん」


「アンナさんにも?」


「しばらくはアンナにも内緒。氷結の時はすぐに教わっちゃってつまらなかったからね」


「それならまずは王都からヴルツェルまでの街を調べよう。ヴルツェルへ行く途中で休憩がてらに寄ったら、そんなに不自然じゃないでしょ」


「なるほど」


「そこで見つからなかったら、フリーグアイスクリームが店を出している街に行こう。店の店員にエルフ族が買いに来ないか聞けるしね」


「他の街でもいろんな人に聞いてくるよ」


「そんなことしたらアンナさんにすぐばれるよ?」


「ああ、そっか。内緒ね、内緒」


「そうやってエルフ族を探している間に、姉さんにやって欲しいことがあるんだけど」


「いいよ、なんでもやるよ」


「草木魔法は名前の通り、草や木を操る魔法だと思うんだ。だから姉さんには植物を育ててもらって、その成長の様子を学んでほしいんだ」


「ヴルツェルでちょっと手伝ってるよ?」


「うん。でも今度は成長の途中を手伝うだけじゃなくて、姉さんが種を蒔いて、育てて、収穫まで全部やってほしい。その体験が草木魔法に役立つんじゃないかな」


「わかった。クロエに手伝ってもらって野菜を育てるよ」


「あとやれることは、植物図鑑を見て勉強するとか。育てられない植物もいっぱいあるからね」


「げっ」


 姉さんは笑顔が1番だけど、その顔も可愛らしくて好きだよ。

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