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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第12話 俺は2度目の誕生祭を楽しむ

 夏が過ぎ、誕生祭の季節がやってきた。


 フリーグアイスクリームは夏の間、順調に売り上げを伸ばした。

 当初は各店舗に氷結魔導師が1人滞在するだけだったが、各店舗2人に人員を増やしてかき氷の販売も行った。

 アイスとかき氷で、今年の夏はフリーグアイスクリームの一人勝ちだ。販売していない町からも人がやってくるほどの人気だったらしい。


 ヴルツェルのフリーグ家が何かしらの新技術を導入し、冷蔵品の運搬数を伸ばしているのは誰が見ても明らかだ。

 周辺の領主や商人、もしかしたら王家からも情報開示請求が届いているかもしれない。

 爺さんはまだ言霊の件を公にしていない。俺達への箝口令も継続している。

 父さんの方にも冷蔵の秘訣を聞き出そうと人が集まってきているらしい。父親のことを嫌っていてもさすがは商人の息子、商売の秘密はきっちり守っているようだ。一番口を滑らしそうな姉さんも我慢してるんだから、父さんも頑張ってほしい。


 いつになったら言霊を世間に公開するんだろう。

 父さんは2年以上先じゃないかなと言っている。

 植物も動物も急には増えない。運搬技術が向上しても運ぶものがない。1、2年は畑を作り動物を増やして輸送量の増加を目指す。その後、他の商人との差が開き切ったところで一般公開するだろう。というのが父さんの考えだ。思ったより真っ当な理由を考えているのが意外だ。


「作物が少ない間は、他の商人に輸送部隊を貸し出すかもな。そうなったら真っ先に俺の領地に格安で出向いてほしいんだが」


「父さんの領地って何か特産品あるの?」


「特にない。細々と小麦と野菜を作っているぞ」


 それじゃあ輸送隊が来ても、あまり意味がないでしょ。




 今年の誕生祭にはフリーグアイスクリームも屋台を出店した。

 9月はまだまだ暖かいから冷たいものも絶対売れる。

 手に持って食べられるコーンの開発も間に合った。主力は果物を混ぜたアイスクリーム。練乳をかけたカキ氷も販売する。

 かき氷に使う容器は返却してもらうため、座席を用意することになった。座席のために屋台2つ分の敷地を用意した。お金はかかるけど仕方ないね。


 そして座席を挟んで反対側の屋台にジャム屋さんを置いた。かき氷とジャムのコラボだ。練乳かき氷も美味しいけど、ジャムに水分を加えてシロップ状にした物をかけるのも捨てがたい。ということで行きつけのジャム屋さんに一緒にやりませんかと打診したところ、気持ちよく了承してくれた。


 この屋台を運営するにあたって、一番張り切っているのは姉さんだ。

 カキ氷は注文された後に客の目の前で削ることになるが、デモンストレーションとして姉さんの風魔法で氷を削るところを見せることになった。

 提供するのはかき氷機で削ったものにするつもりだけど、希望するなら姉さんのお手製かき氷も売るよ。


「なんども練習したからバッチリだよ」


 そう言って姉さんが魔法を発動する。

 左手でかき氷を入れる器を持ち、その上に氷塊を出現させる。以前見た物よりも小さな氷塊。

 それを風魔法で削る。氷の周囲を風の刃が渦巻き、薄く削られた氷がはらりはらりと器に落ちていく。氷塊を削りきったころには、器にこんもりとしたかき氷が盛り付けられていた。


 夏の間に練習した成果か、姉さんは言霊を使わなくても氷魔法を使用できるようになっていた。

 そのため姉さんにデモンストレーションをやってもらうことになったんだ。人前で魔法を使っても言霊のことがばれないからね。


「うん、バッチリだね。疲れたら母さんと交代してもらうつもりだから無理しないでね」


「大丈夫。誕生祭は子供のお祭りだからね、母様の出番はないよ」


 そうだね。でも屋台を手伝う子供は姉さん以外にいるかな。俺はまだ許可が下りなかった。早く大きくなりたい。




 俺は誕生祭の間、色々な屋台を食べ歩いた。

 が、特に目新しい屋台は無かった。どこも美味しいんだけど、去年も食べた味だ。

 ヴルツェルの食材が更に出回るようになれば、新しい屋台が増えるかもしれない。来年以降に期待しよう。


 フリーグアイスクリームの屋台には常に人が溢れていた。食べ歩きながら定期的に様子を見に行ったが、手際よく客を捌いているスタッフ達に見とれてしまったよ。


 アイスも売れたがかき氷もよく売れたそうだ。姉さんのデモがよかったみたい。

 姉さんはまったく疲れた様子も見せず、最終日までやりきった。一応交代の準備をしていた母さんの出番が無いのはもったいないから、最終日は母娘でデモをやってもらった。

 風の動きは母さんの方が見事だったけど、氷の出来は姉さんの方が綺麗じゃなかった?

 そんなこというときっと二人から怒られるから、どっちも凄いねと言っておく。


 屋台には知り合いも沢山来てくれた。

 エマさんや魚人族の子供たちは姉さんの魔法に見惚れていた。早く食べないからアイスが溶けちゃう子もいたくらいだ。

 ソゾンさんはかき氷機が正常に動いているか気になるようで、毎日覗きに来ていたそうだ。最終日はお酒を大量に買っていた。ありがとうございます。

 一番驚いたのは第一王子。数人のお供と共に現れ、アイスとかき氷を食べて姉さんの魔法を見学していった。まあ王子だって祭りを楽しみたいよね。

 お供の一人が姉さんやスタッフから氷結魔法の秘訣を聞き出そうとした時には困ったけど、王子が制してくれた。あんまりしつこくすると自称用心棒の父さんが現れるからね、王族関係者を攻撃しなくてよかったよ。


 最終日にはアイスを持って、マギー様とシュバルト様の教会へ挨拶に行った。

 シュバルト様の教会は去年より人が増えていた。教会関係者が死のイメージを良くするために頑張ってくれているんだと思う。

 両協会でお祈りをしたが今年は神域に呼ばれなかった。

 大事に持っていたアイスがお祈り中に無くなったから、俺が教会に居るのは認識していると思うけど。


 呼ばれないってことは特に大事な用件は無いってことだよな。

 また来年も来ます。1年間見守っていて下さい。

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