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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第11話 俺は新事業を見守る

 みんなでカキ氷を食べ終わり、ソゾンさんによってカキ氷機がもう1台完成したころには夕方になっていた。

 姉さんはこの1台の作製をずっと観察していた。

 こういう勉強熱心なところが姉さんのいいところだよね。


 ソゾンさんとヤーナさんにお礼を言い、かき氷機を持って鍛冶屋を出る。このカキ氷機が採用されるといいけど。


 この時間からヴルツェルへ飛んでいくと途中で夜になってしまうから、出立しないことになった。

 家に帰る途中で冒険者ギルドに寄って、ヴルツェルへの通信をお願いする。

 今日はもう冒険者ギルドに来ないから返信は要らないと付け加える。


 久しぶりに姉さんが家に居るから、父さんが喜ぶね。寂しがっちゃって大変なんだよ。

 あ、ジークさんが父さんに連絡してくれるの?

 ありがとう。早く帰って来ないとみんなで夕食食べちゃうよ、って伝えてください。


 ジークさんと別れて帰宅する。

 まだアイスが残っているかコックに確認。よかった、夕食後に食べるからね。


 その日の夕食は賑やかだった。なんとか夕食に間に合った父さんは特に張り切っていた。やっぱり姉さんが居ると違うな。


 でも父さん、姉さんが爺さんを褒める度に悪態をつくのはやめた方がいいよ。その度に母さんの表情が変わるんだけど。

 母さんも姉さんとの久しぶりの夕食だからここで怒るのは我慢してるんだよ。これは後で呼び出しだね。


 父さんは爺さんが嫌いだから家を出たの?

 伯父さん2人は爺さんと一緒に働いているんだよね。手広くやってるみたいだし、仕事はいっぱいあったでしょ。


「確かに親父は家業だった農業と畜産業に加え、織物業や運送業に手を広げた優秀な商人だ。もともと豪農で有名な家系だったが、今やヴルツェルの支配者と言ってもいい。でもあの街の領主は親父じゃない、別の人だ。その領主に頭を下げる親父が嫌いだった。親父の方が街に貢献しているのに。だから俺は商人じゃなくて領主になってやろうと思った。いま俺は小さいながら領主だ。親父より偉いんだぞ」


 父さん、酔っぱらってるよね?

 しょうもない自慢に姉さんがドン引きしてるから、早く気付いて。

 しょうがないわねと母さんが立ち上がり、父さんを寝室に連れて行った。張り切って飲みすぎたんだな。


 食後のアイスは牛乳の風味が残って甘さのバランスも丁度いい。俺が思い出しながら書いたレシピだけでここまで美味く出来るなんて。

 これは商売になる。

 姉さんが新しい魔法技術を開発したら他人の仕事が無くなったなんて、そんな話聞きたくない。だから氷結魔導師さんたちも、お菓子作りを頑張って練習してほしいね。




 姉さんがカキ氷機を持ってヴルツェルに行った約半月後、王都を含め10箇所の街で新事業フリーグアイスクリームが動きだした。

 ヴルツェル産の牛乳や卵でアイスクリームを作り、冷蔵で各街に運搬して販売する。冷凍した果物を混ぜ合わせ、味も色々用意した。

 各街で作らないのは料理が苦手な氷結魔導師が多くいたためだ。プリンよりは簡単だと思うけどね。新たに料理人を雇って人件費が増えるよりは、ヴルツェルで纏めて作った方がいいと言うことだ。

 料理下手な魔導師は店舗で保存と販売担当。各街でどの味が好まれるかのマーケティングも担っている。


 かき氷は目の前で用意しないとふわふわ感が損なわれるから暫くは販売しない。

 ソゾンさんが作ったかき氷機があれば誰でも作れるんだけど、初めての商売で一度に色々やらない方がいいと爺さんが判断した。

 店舗が軌道に乗って商売に慣れたらかき氷も販売する予定だから、ソゾンさんにはかき氷機を各街分作ってもらっている。本格的に暑くなる前にかき氷を販売出来るようになるのが理想だ。


 ソフトクリームも様子見。ゼラチンを安定して製造できるようになるまでもう少しかかるらしい。ヴルツェルでは少しだけ販売されて人気があるみたいだけど。


 冬になると売れなくなるんじゃないかという疑問には、アイスをクレープやワッフルに添えて販売する。暖かい生地にアイスが馴染んで美味しいんだぞ。

 そして今開発してもらっているのが、アイス用のコーンだ。現在は厚手の紙で作ったカップに入れて販売しているが、この紙の費用もばかにならない。容器も美味しく食べられたらゴミも出ないし言うことないよね。


 俺が考えていた、知り合いの店に優先して作物を卸す話しは無くなった。王都のフリーグアイスクリームで使わない分は市場で販売し、必要ならそこで買ってもらう。

 お騒がせしたお詫びも込めて、ヴルツェル産の布とお酒、ワインとビールを渡した方が喜ばれた。冷蔵品じゃないこの2品目は安くならないけどね。

 もう少し安くなるなら酒の仕入れ量も増やせるのに、とエマさんのお父さんも残念がっていた。ヴルツェル産の酒は王都近くの町で作られている酒より美味いが断然高価らしい。

 食料品の販売が増えて輸送回数が増加したら、酒の運搬量も増えて値下げするんじゃないかな。


 新事業が動き出したことでようやく姉さんは解放され、自宅に帰ってきた。

 姉さんが毎日居ることに父さんが喜びすぎて、姉さんへのスキンシップが激しい。

 あんまり激しくすると家出しちゃうよ。

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