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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第87話 俺は不公平な組み合わせに不満を募らせる

武闘大会王者統一戦第3試合は、ヴァルターさんとアヒムさんとの試合だった。


ヴァルターさんは先程と同じ丸盾と片手剣を装備している。連戦になるが先程の試合で派手に打ち合うことなく降参した為疲れは無いだろう。


アヒムさんは今試合は装備を持たず身軽な衣装で登場したが、右腕に包帯を巻いて首から吊るしている。もしかして、骨折してる?

第1試合後に父さんが指摘していた、サンダリオさんに蹴られた時の負傷だろうか。金属性の籠手を装備していてもそれだけ大きな傷を負うとは。あれでまともに戦えるのかと不安になる。


しかし俺の心配は無駄だったようで、試合が始まるとアヒムさんの一方的な魔法攻撃がヴァルターさんに襲い掛かった。


「武具を持たない魔導師なら片手を使わなくても大丈夫ですから。ヴァルターさんは相手の怪我の具合を見て油断したのか、少し出遅れて後手に回ってしまいましたね」


父さんの解説通り、ヴァルターさんは守勢に回っている。足を止めて手当たり次第に魔法を放ち続けるアヒムさんに対して、ヴァルターさんは身を翻して躱し、時には盾で防ぎ、あるいは火球の弾幕を張って魔法を撃ち落とす。


このまま押し負けてしまわないようにヴァルターさんも必死の抵抗だ。


よくあれだけの連続魔法攻撃を、致命傷を負わずに防御出来るものだ。前後上下左右、あらゆる方向から多種の魔法が飛んで来るんだぞ。


俺が姉さんと、いや姉さんとは無理だな。


俺がマリーと対戦したとして、あんな風な攻撃に上手く対応出来るだろうか。


たぶん自動治癒魔法を信じて、怪我を負う事を気にせずに全力で前に進むだろうな。多少喰らった程度で即死する事は無いだろうと。


例え魔法が使えなくても自分が他人と比べて随分有利な立ち位置に居るんだなと再確認し、俺はヴァルターさんを応援した。




「ヴァルターさんも長時間耐えましたが、結局はそのまま押し切られてしまいましたね。ヴァルターさんの油断も有ったでしょうが、アヒムさんの魔力量に私は唖然としてしまいますよ」


試合が終わった後、クルトさんが感想を口にする。


長時間回避し続けたヴァルターさんの集中力が切れた瞬間を狙い、アヒムさんはヴァルターさんの盾に金属魔法で干渉した。

盾をドロリと溶かされたヴァルターさんは攻撃を防ぐ手段を1つ失い、それでも暫くは回避と魔法で対応出来ていたが、それも長くは続かなかった。


「ヴァルターさんの盾を奪いに行った間が絶妙でしたね。魔力や魔法技術に余程の差が無いと、相手が身に付けている物を奪う事は難しいです。ヴァルターさんも平時なら装備を失うなんてヘマはしなかったでしょうが、大軍の火球を捌いた後、息を吐いて緊張を緩めた瞬間を狙われましたね。これでヴァルターさんは2敗。最終戦は油断せず、頑張って頂きたいですね」


最終戦の相手はサンダリオさん。本当はアヒムさんに勝っておきたかったところだろうが、これで後が無くなってしまった。


村の防衛の為に残ってくれている奥さん、ヴァルターさんは頑張ってますよ。最終戦に勝てるよう、村に居る皆と一緒に祈っていて下さい。




組み合わせの関係上、第3試合から第4試合の間に急遽1時間の休憩が取られることになった。


怪我や魔力回復の為に休憩時間を多く取ることにしたんだろう。


丁度お昼時になった事もあってか、観客からは大きな不満も出なかった。


観客は皆各々席を立ち、自由な時間を過ごしている。


男爵家の屋台もきっと繁盛しているだろう。つくづく醤油と味噌を使い切らなきゃ良かったな。




第4試合。クルトさんが読み上げた選手の名に対し、観客達は不満を言葉にしている。


ジークさん対アヒムさん。


長い休憩時間を挿んだとはいえアヒムさんは2連戦で、これが最終戦。


それなのにサンダリオさんは第1試合を戦って以降姿を見せていない。アヒムさんから受けた傷のせいかもしれないけど、不公平感は否めない。


「冒険者ギルドは最後の試合をジークさん対サンダリオさんにしたいんでしょう。大会を盛り上げる必要がある主催者も大変ですよね」


マリーの意見も解らなくはないが。


「まあ決まった試合に何を言っても仕方ないですよ。そろそろ試合開始です。よそ見をしていると父の特攻であっという間に勝負が付きますよ」


マリーの言葉通り、試合開始と共にジークさんが走り出す。幅広の大剣を盾にしてアヒムさんの魔法を受け止めながら、その走る速度は衰えない。


右腕を首から吊るしたままのアヒムさんは何度かジークさんに魔法を放った後、今まで封印していた魔法を発動した。


飛行魔法。


ジークさんの接近前にふわりと浮き上がったアヒムさんは、ジークさんの剣の届かない安全圏から攻撃を再開した。


「父が普段から魔法を使わないからと言って、油断し過ぎですね。空に逃げるならもっと上まで行くべきです」


マリーの言葉が終わるかどうかというところで、ジークさんが遠心力を利用して大剣をアヒムさんに投げつけた。


先程まで魔法を防いでいた大剣が、ぐんぐんと迫って来る。魔法での破壊は不可と判断したアヒムさんは少しだけ体を横にずらして大剣を回避する。


どんっ。


そこに飛行魔法で飛来したジークさんがアヒムさんに体当たりを。


客席からは見えていたが、アヒムさんからは大剣が死角になって見えていなかったのか。


咄嗟の出来事にアヒムさんは対処出来ず、2人は揉みあいになりながら地面に落下した。

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