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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第10話 俺はかき氷機を説明する

「うちは鍛冶屋だぞ、なんで菓子を作る道具を作らにゃならん」


 俺を連れて鍛冶屋に飛び込んだ姉さんは、ドワーフ族の男女を見つけ突撃した。

 興奮する姉さんから何とか用件を聞き出したドワーフ族の男性は、鍛冶屋だからと姉さんの依頼を拒否した。

 店の中には武器や防具が飾られている。見ただけでは作品の良し悪しは分からないけど、きっと良い物なんだろう。

 カウンターの向こうで姉さんと揉み合っているドワーフ族にきちんと挨拶をして、印象を良くしよう。


「初めまして。弟のゲオルグと言います。いつも姉がお世話になってます」


「おう。アリーの弟とは思えないほど丁寧だな」


「今回依頼した道具は刃物も設置するため、本職にお願いした方がいいかと思いまして。気に障ったのならすみません」


「こんにちは、ゲオルグ君。私はヤーナ。あっちは旦那のソゾン。嫌な旦那でごめんね。あれでも久しぶりにアリーちゃんが来たから喜んでいるのよ」


 口が悪いドワーフ族の男性がソゾンさんで、優しそうなドワーフ族の女性がヤーナさんね。


「師匠、いつも作ってる物と違うから自信がないんでしょ」


 姉さんがソゾンさんを煽ってる。ちょっと、頑固な職人を刺激しないで。


「なんじゃと。儂はどんな物でも作れるわい」


「じゃあどっちが上手に作れるか勝負ね。私も初めて作るから対等だよ」


「製作速度じゃなく質で勝負なら、例え不利な状況でもまだまだ負けんわ」


「ね、楽しそうでしょ?」


 あれは楽しんでいるのか。確かに笑顔だけど。発言と顔が合ってないよ。

 まあ作ってくれるならなんでもいいか。

 どういうものを作ってほしいか書きますので、紙とペンあります?




「ふむ。この天板のスパイクで氷が滑らないように掴んで、上のハンドルを回すことで氷が回転。回転した氷が下の刃物で削れていくと。面白いな。自分で考えたのか?」


「図書館の本で見ました」


 3歳が考えたレベルじゃないよね。本を探しに行かれたら困るけど、まあ大丈夫でしょ。


「そうか。この氷が入るところと、一番下で氷を受ける容器が入るところはどれくらいの大きさにするんだ?」


 氷を高く積みたいから、一番下の空間は大きな方がいいよね。ヤーナさん、手ごろな大きさの器があれば貸してください。

 氷のサイズも決めよう。製氷用の道具を作れば、同一規格で量産しやすいよね。


 ヤーナさんも含めてみんなで相談して大きさを決める。

 よし、これで作ってみてよ。


 鍛冶場に行くと、ジークさんが見守ってマリーが金属魔法の練習をしていた。ナイフを作ってるそうだ。汗だくで大変そうだね。後で冷たくて美味しいおやつを御馳走するよ。


 アンナさんとヤーナさんには練乳を作っておいてもらう。かき氷機が出来たらすぐに食べたいもんね。


 姉さんもソゾンさんも真剣に準備をしている。俺はジークさんの隣に行ってみんなを見守ろう。




 30分もかからず姉さんの試作機が完成し、ソゾンさんは1時間と少しで手を止めた。

 姉さんは終始魔法で。ソゾンさんは魔法を使いながらハンマーなんかも振るっていた。


 姉さんに同じ大きさの氷を2つ作ってもらう。言霊はみんなにバレないようにコッソリとね。

 2台の試作機に氷をセットする。

 容器を下において、試し削りだ。まずは姉さんの方から動かしてみよう。


「ぐぐぐ、か、かたい」


 なんだこれ、ハンドルが動かない。マリーもやってみて。だめだね。

 氷を外してやってみようか。うーん、俺の力では動かないな。ジークさんはどう?

 ジークさんがハンドルを回してなんとか回転する。ギギギっと嫌な音が鍛冶場に響く。姉さんには悪いけど、これじゃあ使えないね。

 ソゾンさんの方はどうだろう。


「うわ、もの凄く軽く回る」


 僅かな抵抗しか感じない。回すたびに削れた氷が容器に落ちる。見た目にはふわふわに出来ているぞ。


「アリーはハンドルの支柱を周囲とキッチリ合わせすぎたんじゃ。合わせすぎると摩擦が増えて回り辛くなるからの、遊びが必要なんじゃ。ま、経験の差じゃな」


 ソゾンさんが自慢げだ。姉さんももうちょっとゆっくり作ったらよかったね。


「それから、刃物は簡単に取り外せるようにしてある。硬い氷を削るとすぐに刃こぼれしそうじゃからな。こういう道具は整備のしやすさも大事じゃ」


 ソゾンさんが姉さんに指導している。刃以外にも施してある工夫を、割と丁寧に説明しているのが意外だ。


「ソゾン爺は気難しく見えるけど面倒見がいいんだ。腕もいいけどな」


 ジークさんが教えてくれた。顔に出てたかな。ちょっと顔の筋肉をマッサージしよう。


「戦争が終わって何年も経つ。そのころに比べて武具の注文は減った。年に一回の誕生祭と、たまに来る冒険者くらいでしか鍛冶屋は稼げない。爺さん達も新しい事に挑戦する必要があったのさ。かき氷機はいい仕事になるな」


「お前に言われんでも分かっとる。儂らのことより自分の心配をしたらどうだ。鍛冶屋以上に傭兵が活躍する時代でもないし、兵士の数も減らされるんじゃないか?」


「俺はいつでも冒険者として動き回れるから」


「ふん、儂だって魔物相手に遅れはとらんわ」


「はいはい、練乳を持ってきたからかき氷を食べましょうね」


 ヤーナさんとアンナさんがいいタイミングで練乳を持ってきてくれた。

 言い争ってるジークさんとソゾンさんは放っておこう。


 いただきます。


 うん、美味しい。食感がいい。姉さんが風魔法で削った時の物と甲乙つけがたいね。

 マリーも気に入ったみたいだ。

 このカキ氷機をもう一台作ってもらって、ヴルツェルに持っていこう。

 アイスクリームより材料費は安く済むから、こっちも販売したいよね。


 2人はまだ言い合ってるけど、王都の外ってそんなに危ないの?魔物でいっぱい?


「私たちがここ何日か移動している間に、魔物とは遭遇していません。国内の街道や街の周囲は定期的に兵士が見回りをしていますから安全ですよ。たまに見回りに漏れた魔物が商隊と出くわすようですが、盗賊と出会う方が多いでしょう。街道から敢えて外れ、森林や山岳を越えて他国に渡ろうとすると、魔物に遭遇する危険性は増えますね」


 そうなんだ。見回りする必要があるなら、兵士の数が減ることはないんじゃない?

 ジークさんは兵士の戦闘訓練をしてるんだよね。仕事が無くならなそうで良かったね。

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