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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第72話 俺は久しぶりに授業を受ける

「おはようございます、エルヴィンさん。実習の方はどうでしたか?」


 種を蒔き、農地の見学等を終えて、半分以上の人間は馬車の方へ向かう。彼らは夜間の講義を受ける人達だ。


 残った人達は座学を行う為に借りた家へと向かっている。その途中、俺は漸くエルヴィンさんを捕まえる事が出来た。


「おはようございます、ゲオルグ君。実習と言うからどんなことをするのかと思っていましたが、少し拍子抜けしましたね。マルテさんとやった特訓はきつかったですが、あの辛さが懐かしいです」


 あの頃は毎日へとへとになるまで魔法を使ってましたもんね。今日の実習は殆どが見学でしたから、多くの参加者がつまらないと思ってるでしょう。


 でも、草木魔法を覚えるのには植物の事を理解するのが一番なんですよ?


「男爵家が手掛けている魔法教室だから、他の人達はどうかわからないけど僕達は無駄な実習じゃ無いって解ってるよ。次の講義ではどんな話を聞けるのか楽しみだ」


 まあ講義は講義なんでそんなに面白いもんじゃないと思いますけど。姉さんなら絶対に睡眠時間にしますね。


「ははは。高い授業料を払ってるから睡眠時間にするのは勿体無いね。アリーちゃんも自分でお金を払って授業を受けていたら眠らないんじゃないかな」


 多分姉さんは文字を見ると目を瞑っちゃうんですよ。身体を動かさずじっとしてるのも無理な性格ですしね。


 ところで、エルヴィンさん1人で魔法教室に来たんですか?


「いや、ヴィルマとレベッカも一緒だよ。2人は今お花を摘みにね」


 ラインハルトさんとヴェルナーさんは参加して無いんですね。


「まあちょっと色々あってね。身内の恥を曝すようなものだから、色々な部分は聞かないで欲しいな」


 解りました、詳しくは聞かない事にします。ヴィルマさん関連ですよね?


「それもあるけど、まあ色々さ。それで時間が出来たから、俺達3人は勉強しようと言う話になってね」


 じゃあ冒険者は一旦休業ですか。


「そうなるね。もしかしたらラインハルトは1人で依頼を受けたりしているかもしれないけど。護衛依頼なんかは人数調整の為に合同依頼の形で募集していることが有るからね。ヴェルナーは実家の手伝いでもしてるのかな」


 そうですか。姿が見えなくて心配していたんですが皆が元気なら良かったです。また5人で一緒に冒険出来るといいですね。


「そう、だね。いつになるかわからないけど、また皆で他国まで魔石や毛皮を獲りに行けるといいな」


 そう話すエルヴィンさんの表情からは、それはもう無理なんだと言っているように感じ取れた。




 草木魔法の講義は、草木魔法にとって植物学を理解することがどれくらい重要な事かという短い説明から始まり、植物学の総論に移行する。


 何日間か総論をやった後は、国内で多く育てられている作物や果樹、建材用の樹木等の各論に移る予定だ。


 その内容は、エルフ族が書いた植物学の本を参考にしている。以前古本屋で購入した本だが、長い事お世話になっている素晴らしい本だ。


 本当は受講者全員に教科書として配るか、授業ごとに必要カ所を書き出した紙を配布するかしたかったが、手書きで複製するしかない世界で流石にそれを実行する時間は無かった。魔導具でコピー機とか作れないかな。


 しかし何もないのも寂しいから、画家のクレメンスさんに頑張ってもらい、大きな紙に植物の絵を描いてもらった。それを教室の前面に貼って、クリストフさんがそれに書き込みながら授業を進めていく。


 受講者には真っ新な紙を無料配布し、筆記用具は授業毎の貸し出しにした。長机に2人から3人が並んで座り、講義を受ける。俺は一番後ろの席で見学しているが、皆話を聞いて熱心に手を動かしていた。


 朝早いのに誰も寝てないな。


 俺は若干眠たい。植物学の本は目を通しているから、今クリストフさんが講義している内容も俺は全部理解している。知っている内容をもう一度学ぶのはちょっと辛い。前世では部活での疲れを理由に授業中睡眠を取ることが有ったが、眠くなるのはそれだけが原因じゃなかったようだ。


 やはりエルヴィンさんの言う通り、自分で授業料を支払っていたら違うのかな。


 頑張って目を開くことに集中していると、隣に座っているマリーがすっと紙を渡して来た。


 授業中に手紙を渡されるなんていつ以来だろうとか思って、ウキウキしながらその紙に目を通す。


『寝たいなら教室の外でお願いします』


 簡潔な内容でマリーに叱られた。眠くないアピールを必死にしてたのに良く気付いたなとマリーを褒めてやりたいくらいだ。


 マリーの方をちらりと見ると、こちらを見向きもせずにクリストフさんに集中している。


 よし、俺ももう少し頑張ろう。




 うん、無理は良くない。


 危なく机に頭をぶつけそうになった俺はこっそり教室を抜け出した。

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