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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第71話 俺は農業実習の為に移動する

 早朝5時半前。俺は父さん達と一緒に馬車に乗り、魔法教室を開設した建物の前に集合する。


 建物の道路沿いには広いスペースを確保し、馬車の停留所を設けている。そこには既に馬車3台と多くの人々が集まっていた。


 これからこの馬車に乗って北門から王都を出て、プフラオメ王子の町まで移動する。そこで今日から農業実習が始まるんだ。


「おはようゲオルグ君とマリーちゃん。今日は男爵と一緒に実習と講義の視察をするんだってね。僕も同行するからよろしくね」


 馬車停留所に現れた俺達を見つけた第一王子に声を掛けられる。


 おはようございます。王子も朝から大変ですね。


「この馬車が簡便に問題無く王都の門を通行出来るかの調査も兼ねているからね。全員に通行許可証を発行する為に部署の皆には頑張って貰ったんだ。それを見届けないとね」


 第一王子が今回の魔法教室創設に関わっていたのは、自らが推進する城門通行簡便化事業の視察が主な目的だった。もちろん昨日の懇親会に参加したのは姉さん目当てだと思うけど。


 乗合馬車での城門通行が簡便になるとかなり便利だ。通勤通学が楽になるから王都の外に引っ越す人達も増えるだろう。城門の外まで警戒しないといけないから兵士の仕事は増えるかもしれないけど。


「戦争が無くなってから兵士の仕事はずっと盗賊や魔物への対処だから対して変わりないさ。それでも王都の周りで野党や危険な魔物が出るなんてここ数年無いんだから、辺境守備隊の人達と比べたら楽な仕事さ。税金を払っている市民の皆さんからタダ飯喰らいだなんて言われないように、しっかり働いてもらわないと」


 へえ、王子も偶には真面目な事を言うんですね。


「ははは、君は偶に失礼な事を口走るよね。そういう所は男爵に似なかったわけだ。おっと、従者が僕の事を呼んでいるみたいだ。じゃ、また後でね」


 失礼だと言う割には笑顔を崩さず王子は去って行った。いつも姉さんの事ばかりの王子を見ていると、急に真面目にされて驚くのは仕方ないじゃないか。出来ればいつも真面目で居て欲しい。


「ゲオルグ様、エルヴィンさん達も来ましたよ。馬車の発車時刻も近いので既に馬車に乗りこんでしまいましたが。私達も男爵家の馬車に戻りましょう」


 王子を見送っていた俺に、マリーがそろそろ時間ですと伝えて来る。


 我が村から派遣された乗合馬車の運営を担当する係員も、発車時刻が近づいているので乗車してくださいと皆に声を掛けている。


 なんだよ。来ているのならエルヴィンさんも声を掛けてくれたらよかったのに。


「王子と喋っている間に割って入るなんて良識ある普通の人には出来ませんよ。出来るとしたらアリー様とゲオルグ様くらいでしょうね。さっ、ぐだぐだしていると置いて行かれますよ」


 マリーも偶に失礼な事を口走るよね。


 さっさと歩いて行くマリーを追いかけて、俺達は馬車に乗り込んだ。




 馬車が王都内の道を進んで門に辿り着くと、馭者が事前に集めていた全員分の通行許可証を門兵に手渡す。少し時間が掛かるがここで一旦全員下車。許可証を見ながら手短に本人確認と手荷物検査を受ける。もちろん俺も王子も。


 通行証が無いと外出理由等の説明など詳しく話を聞かれて時間を消費するから、ちょっと降りて名前を呼ばれて手荷物を見せるくらいどうってことない時間だ。


 検査を行う兵士や役人も増員されていたのか、あっという間に手荷物検査も終わって皆が再度乗車する。最後に兵士達と話していた王子が乗車して、馬車は再出発した。




 王都を出て揺れが酷くなった馬車が暫く走り、再び停車する。


 これから実習をする農場に着いたようだ。


 馬車を降りると、クリストフさんを含めて20人を近くの集団が出迎えてくれた。この人達は王都じゃなくこの農場の周囲に居を構える受講生達。もちろんクリストフさんもこちらに引っ越している。


「馬車移動お疲れ様です。座っていて固まった身体を解す為に、まずは体操を行いましょう。皆さん、両手を水平に伸ばしてお互いに当らない距離に移動してください」


 クリストフさんの号令を聞いて皆が動き出す。俺達は体操の動き方を知っているからと、皆の前に出て動きを見せる事になった。


 後ろの人にも見えるように、必要以上に大きく体を動かし、声を出してラジオ体操を行う。


 皆の前でやるのは少し恥ずかしくもあるが、今日一回の辛抱だと言い聞かせて、何とか頑張った。


「それでは農業実習を始めます。先ずは皆さんにこれから育てる植物の種を数粒渡します。事前に農場の畑を区切って皆さんの名前の立札を差していますので、そこの畑に種を蒔いてください。種蒔きの後はこの辺りの農場にどのような作付けがされているのか見て回ります。座学はそれらの植物に対する講義になります。しっかりと目を凝らして植物の状態を見て覚えて下さいね」


 クリストフさんが皆に種を手渡ししながら今後の予定を説明する。


「ゲオルグ様もマリーさんもどうぞ」


 見学に来た俺達にも?


「受講生の子供達へ指導をお願いします。思ったより参加者が多くて、農業経験がある人達にも助手を頼んでいるのですがまだ手が足りなくて。後程御礼は致しますのでよろしくお願いします」


 そう言われたら断り辛い。


 俺はまだ暫く、エルヴィンさんに話を聞くことは出来ないみたいだ。

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