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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第9話 俺は氷結魔導師の未来を担う

 ヴルツェルでもプリンは好評だった。

 プリンを持ち帰った翌日にまた飛んできた姉さんが、そう教えてくれた。

 今回は伝令として爺さんから仕事を依頼されたらしい。この前来た使いの人はまだヴルツェルに着いてないだろうからね。1日で往復出来る人に頼みたくなるのはわかるけど、まだ子供だよ?

 毎日飛んで大丈夫なの?

 姉さんは笑っているけど、アンナさんはちょっと疲れてるように見える。


「氷結魔法を使える人材は毎日増えている。しかしそれに伴って氷結魔導師が職を失ってしまう。彼らにプリンを売る店をやらせようかと思ったが、料理素人にはちょっと難しそうだ。他に何かいい案はないか」


 爺さんからの伝令はこうだ。俺3歳なんだけどそれをわかって聞いてるのかな。

 姉さんは、新しいおやつ食べたい、と騒いでいる。

 前世で妹のために色々作ってたから、まだあるにはあるけどさ。将来の自分のために、って感じじゃなくなって来ちゃったな。


 氷結魔法を使って簡単に出来るとなると、かき氷?

 牛乳と砂糖を使って練乳を作るとそれっぽくなる。果物のジャムをシロップ代わりに添えてもいいな。

 あとはアイスクリームとかソフトクリームとか?

 寒い地域のヴルツェルにならアイスクリームやかき氷はありそうだけど。


「冷たいおやつは果物を凍らせた物とかゼリーにした物があった。ゼリーって知ってる?ぶよぶよしてるんだよ」


 ゼリーあるのか。まあ畜産家だからゼラチンは作れるよね。これでソフトクリームは出来るかも。ソフトクリームのツンとした形を維持するためにはゼラチンが必要だからね。


「寒いところだから普段のおやつは暖かい物が出てくるよ。お婆様が焼いたクッキーが美味しかった」


 クッキーを作るならバターが必要だと思うんだけど、爺さんのところで作ってる?


「はい、お城にも出荷しているらしいですよ」


 姉さんの代わりにアンナさんが教えてくれた。バターがあるなら生クリームもあるはずだ。

 生クリームが無くてもアイスは作れるけど、あった方が俺は好きかな。


 今からすぐ作れるのはかき氷と練乳かな。じゃあアンナさん、練乳作るから手伝って。

 牛乳と砂糖を混ぜてゆっくり加熱するだけだけどね。


 牛乳を温めている間に姉さんは氷を削る練習をしようか。まずは氷を作って。


「色は黒、水から変われ、氷結よ。熱を奪えや、礫集まれ」


 ゆっくりと、一言一言丁寧に喋る。俺が短歌を歌った時を真似しているのか、ゆっくりだが気持ちよく流れていく。

 姉さんは右手の平を斜め前方に向け、最後に一言、大きく発声する。


「氷塊」


 姉さんが手を向けた床に小さな氷の粒が出現。そのまま音も無く急速に膨れ上がり、姉さんの膝下くらいまで達する大きさの、氷の塊が出来上がった。


 これが姉さんが考えた言霊。簡単な言葉を並べただけだけど、これを一晩で考えたなんて凄い。

 そんなに大きな氷は要らなかったけど、そこは黙っておこう。


 出来た氷はしばらく常温で置いといてね。表面が少し溶けた方が美味しくなるらしいよ。


 そのあと氷を細かく削るんだけど、風魔法で削れたりしない?

 そう、砕くんじゃなくて、削るの。

 いい感じだね。出来るだけ細かく削れるとふわふわな食感になるからね。

 練乳がまだだから削るのはこの辺で。うん、練乳が冷えるの待ちね。


 え、もったいないから食べる?

 それならジャムをちょっとかけたらおいしいと思うよ。ジャムに水を加えてさらさらの液体状にしてもいいけど、すぐ食べるならジャムのままでも。


「ふっわふわだ」


 姉さんが文字通り飛び上がって美味しさを表現している。

 俺も一口。うん、美味しい。姉さんの削り方が良かったんだな。


 出来た練乳をかき氷にかける。やっぱり俺はかき氷の中で練乳が一番好きだな。

 練乳はパンに塗ったり、料理の隠し味にしたり出来るよ。プリンに混ぜてもいいし。


 厨房に居なかった人たちにも練乳かき氷を振る舞う。みんな喜んでくれた。そろそろ暑くなる季節、冷たい物が欲しくなるよね。


 みんなが食べている間に、俺はアイスクリームとソフトクリームのレシピを書き起こした。その紙をアンナさんに手渡す。美味しく出来たら食べさせてね。


「じゃあそろそろヴルツェルに戻るね」


 余った練乳を抱えて直ぐにでも飛び立とうとする姉さん。今日は泊まっていったら?

 今日も父さんに会わずに行っちゃったら、そろそろ父さんが発狂しそうなんだけど。


「氷結魔導師達が反乱を起こす前に、早く戻らないと」


 そうか、それなら仕方ないね。父さんには子離れして親孝行しろって言っとくよ。




 数日後に帰ってきた姉さんは、アイスクリームが詰まった箱を持っていた。

 俺のレシピを参考に氷結魔導師が作った物だそうだ。

 何も入ってないノーマルな物と、刻んだ果物が入った物があるね。どちらも美味しそうだ。


 姉さんも練乳を気に入ってたのに、かき氷はやめたの?


 姉さんみたいに細かく削れる風魔導師が居ない?

 そうか、あれは凄い技術だったのか。

 うーん、勿体無いな。細かく削れる道具を作れないかな。構造はだいたい分かるから姉さん作れない?


「1個なら作れるけど、いっぱい作るならドワーフの師匠に相談しよう」


 作れるんだ。それも凄いことなんだろうな。

 マリーがジークさんと通ってる鍛冶屋さんだよね。そういえば俺は行ったことなかった。ぜひ連れて行ってもらおう。


「じゃあさっそく、いくぞー」


 姉さんが俺の手を掴んで飛び始める。

 ちょっと待って、行く前にアイス食べたいんだけど。


 ダメなのね、わかった。俺の分を残しといてよ。

 あ、アンナさん、牛乳と砂糖を持ってきてください。あとジャムも。

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