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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第68話 俺は父さんの血筋を再確認する

 草木魔法教室の設定に悩む父さんに、まずは教師役のクリストフさんを確保しようと提案した。


 その提案に乗った父さんと一緒に村へ移動し、クリストフさんに事情を説明した。


「解りました。その教師役は引き受けましょう。まだどのように教室を開設するか決めかねているという事でしたが、私もその話し合いに参加させてもらえるんですよね?」


 快く教師役を承諾してくれたクリストフさんを交えて、もう一度魔法教室の設定を話し合う。


「ゲオルグ君の言う通り受講者には植物を育てて貰いたいですね。それも毎日、私の眼の届く範囲内で。それから、草木魔法を覚える為には水魔法まで習得していた方がいいので、そこでも篩に掛けるべきでしょう」


 クリストフさんの新たな提案に、父さんは頭を抱えてしまった。


「そんなに悩むことは無いですよ。草木魔法は毎日の知識の積み重ねが重要ですから、1日何時間も勉強したところで習得出来ません。毎日1時間講義、1時間実習。後は自学自習ですね」


「その授業数で行うとして、クリストフさんは受講者がどのくらいの日数で草木魔法を習得出来ると考えている?」


「そうですね。水魔法を覚えていて植物を育てた経験が無い場合で考えると、半年前後と言ったところでしょうか」


「半年か。来春の種蒔きには間に合う計算か」


「もちろん農業経験が有ればもっと早いでしょうし、水魔法を習得していなければもっと時間は掛かりますね。ですが、基本的に時間を掛ければ1年以内に覚えられると思いますよ」


「基本的に、というのは?」


「ヴァルターさんのような混血の場合は五行の流れを改善させる必要がある為、更に時間が掛かります」


 なるほどと一声反応した後、父さんは黙って考えを巡らす。


 木火土金水の五行で判断すると、火魔法が得意な人族にとって草木魔法を覚える事は難しく時間が掛かる。


 クリストフさんはそれを意識しつつ、それでも効率の良い方法を父さんに提案している。村の大人も子供達も皆そうやって草木魔法を習得しているんだから、それが最良なんだと父さんも理解しているはず。何を迷う必要があるのか。


「そこまで条件を絞ると受講者が少なくなって、こちらの利益も少なく」


 何を考えているのかと思ったら、多くの受講者を集めて受講料で一儲けしようと考えていたのか。


 ちょっとだけ幻滅。


「いやいや、教室を借りる家賃に、農場を借りる使用料、クリストフさんの給料にと何にでも金が掛かるんだぞ。ある程度受講者を集めないと赤字になってしまう。赤字になっては国王に義理立てする事も出来なくなってしまうぞ」


 利益が出る見込みが有ったから父さんはこの話を引き受けたのか。


 でも手当たり次第受講者を集めて、魔法を習得出来ませんでしたでは困ったことになるよ。


「まあ受講者の能力や経験によって班別するのが良いでしょうね。1日3班に教えるくらいなら問題無く対応できるでしょう」


 クリストフさんの頼もしい発言を聞いて父さんの顔がパッと明るくなる。


「先ずは農業経験が無く水魔法を習得している班。農業経験が無く水魔法も習得していない班。そして農業経験が有り水魔法も習得している班。前者2班は農業実習は必須、最後の班は希望者のみで良いでしょう」


なるほど、と父さんが合いの手を入れる。


「農業実習は朝の涼しいうちに行うのが良いですね。6時に集合して男爵家の定番になったラジオ体操を皆で行い、そこから1時間実習を行う。その後の1時間は草木魔法の座学。日中は仕事が有る者も多いでしょうから、水魔法の座学は夕方、もしくは夜間でも良いでしょう。もしかしたら金属魔法から教えた方が良い物も居るかもしれません。そこも分けた方が良いかもしれませんね」


「仕事前後の時間を利用する、か。仕事を休まずに学べるのは喜ばれるだろうな。夜間の授業で草木魔法を教えてもらう事も出来るか?」


「朝の授業と全く同じで構わないのなら可能です。時間帯によって授業内容が変わってしまうのはこちらも混乱してしまいますからね」


「午前午後好きな時間帯の授業を選択出来るのはいいな。講義と実習は何人くらいまで許容できる?」


「実習は10人、多くて15人くらいでしょうか。講義は20人から30人は大丈夫だと思います」


「15人か。赤字になるかどうかは授業料をどう設定するかの問題だな。早ければ5日前後で教室を開きたいと思っているが、クリストフさんはそれで構わないか?」


「ええ、私はいつでも動けます」


 ある程度話は纏まったようだけど、教室の場所は結局どこにするの?


「それを忘れていた。出来れば交通の便を考えて王都内に教室を開設したいんだが、クリストフさんは、やっぱり王都には居辛いかな」


「まあ会いたくない人が居るので居辛いは居辛いですが、それでも構いませんよ。ただ、夕方以降の教室は王都でもいいでしょうが、朝の実習は王都内では無理でしょうね」


「そこは、王都郊外にあるプフラオメ王子の町で土地を借りよう。あそこなら、授業後に移動しても王都内の職場に間に合うだろう」


 こちらで通学用の馬車を用意しても良いしね。


「お、その案は良いな。問題は時間を掛けずに王都の門を通行出来るか、だが。今流行ってる通行証を利用したら問題無いか。各所にも許可が必要になりそうだな。忙しくなって来たぁぁ」


 父さんが拳を天井に向かって突き上げる。


 先程まで頭を抱えていた人とは思えない程に父さんが興奮している。


 忙しいのが楽しいと言うよりは、利益が上がる見込みが出来た事が嬉しいんだろうな。


 ヴルツェルで商圏の拡大を虎視眈々と狙っているデニス爺さんと仲が悪くてもやはりその人の息子なんだなと、俺は1人納得していた。

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