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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第55話 俺は年下の子供を不安にさせる

 リカルドさんの辛勝から始まった武闘大会は白熱した試合が続いている。


 我が村から出場した3人は皆勝ち進んでいる。


 俺が謹慎していて観戦出来なかった去年の大会から魔導師の部のシステムが変わっている。


 以前は円形の台に乗ってお互いの魔法をぶつけ合い、魔法を喰らって台から落ちたら負けというものだった。


 しかしそのシステムは皆が土魔法を使って台を揺らすようになって崩壊した。まあ台から落とすにはそうするのが合理的だから仕方ない。事前にルールで決めなかった方が悪いよな。


 で、そのシステムは第二回の1度きりで終了し、他の部門と同様に対面で自由に戦う形式となった。


 接近戦も織り交ぜる混合の部とは違い、魔導師の部はお互いほとんど動かず強力な魔法を撃ちあう遠距離戦。見た目にも派手な試合となっていたが、難点は決着まで時間が掛かるところだな。その点、台に乗って戦うのは決着が付くのが早く試合の回転率は良かった。

 自分が提案した試合形式だもの。少しくらい良い所を見つけたいじゃないか。


 各部の本戦出場者は8名ずつ。トーナメントで試合を薦め、3回勝てば優勝となる。


 全ての出場者が対戦して4名ずつの勝者が決定すると、1回目の休憩時間となる。この時間に行われるのは、冒険者ギルドが用意した人達による舞踏だ。

 男女合わせて20人前後で現れた人々は、火魔法を使いつつ息を合わせて舞い踊り、その姿はとても綺麗でかっこよかった。


「一昨年もあの人達が演武をしていました。一昨年は剣の演武でしたね。美人ばかりで見惚れていたのを覚えてますか?」


 そうだっけ、全然覚えてないや。去年は何をやったの?


「去年は誰かさんが謹慎していたので私は武闘大会を観戦していませんが何か?」


 エッ、ソウダッケ。


 別に俺の謹慎に付き合わなくても良かったのに。自由にしてもらった方が俺も気にしなかったのに。


「では次回謹慎することが有れば、そのように」


 もう謹慎する事なんて無いよ。ニヤニヤしやがって、ちくしょう。


 去年も大会を観に来ていたと言うリカルドさんの息子君が、去年は水魔法の演武だったと教えてくれた。ありがとね。




 演武と前後のトイレ休憩合わせて20分ほどのインターバルが終わった後、トーナメント第2回戦、つまり準決勝が始まった。


 最初に登場したのはリカルドさん。先程の試合の影響が残っているようで若干左足を引きずりながらの登場だ。


 対するは、人族の剣士。何度見ても素手の獣人族対剣士の対戦は不平等だと思う。


「確かに不平等ですよね。獣人族は秘技を使えるのに、人族は魔法を放つことを禁止されているんですから。だから父と決勝戦で戦う相手は決まって獣人族の方なんですよ」


 ああ、確かにそういう面で言うと、獣人族の方が有利かもしれないね。その二年連続準優勝の獣人族も勝ち上がっていて、次の試合に出るんだったよね。


「そうですね。でも今朝試合前に会ったら、あまりやる気は無いみたいでしたよ。父が出場しない大会に勝っても意味が無いって言ってました」


 えっ、マリー知り合いなの?


「いや、御手洗いに行った時に通路ですれ違いまして。大会関係者に文句を言ってましたね」


 きっと今年こそはと意気込んで大会に来たんだろうな。こちらの事情で出場辞退しちゃったから、申し訳ないな。


「こちらとしては喜ばしい事じゃないですか。リカルドさんが優勝出来る絶好の機会です。ほら、リカルドさんが相手の剣を弾き飛ばしましたよ。やっぱり秘技が有る方が有利でしたね」


 その秘技が有る獣人族相手に勝ち続けているジークさんって、化け物だよな。


「たぶん放出して無いだけで、父も金属魔法で身体強化しているんだと思うんですけど。ドワーフ族が良く使ってるアレです」


 あ~、アレね。うん。知ってる知ってる。ドワーフ族が重たいハンマーを振り回す為に使ってる金属魔法ね。


「あ、出て来ましたよ。準優勝の人。確か名前は、サンダリオさん」


 サンダリオ。毎年2位なのに、3だ。なんつって。




 無視は良くないと思うな。


 こんなに村の人達に囲まれている座席なのに、1人敵陣に潜入している気分だよ。




 ちょっとだけ俯いて凹んでいる間に、サンダリオさんの試合は終わってしまった。


 対戦相手の獣人族は競技場の中央で臥せたまま動かない。試合開始早々に意識を失ってしまったようだ。


「お互い4、5発打ち合って、最後の一撃が防御の隙間を縫って腹部にめり込みましたね。対戦相手が気の毒です」


 足を止めて殴り合うなんて、お互い命知らずだな。この戦い方を見せたサンダリオさんに、リカルドさんはどう戦うだろう。足を痛めているから、逃げ回るなんて無理だろうし。


「父さんは逃げたりなんてしない。絶対に勝つんだから」


 俺の言葉を聞いたリカルドさんの息子君が、こちらを振り向いて反論する。声にした内容には多少の怒りが含まれていたが、顔には不安でいっぱいだと書かれていた。


 ごめんごめん、負けると言ってる訳じゃないんだ。一緒にリカルドさんを応援しような。




 戦士の部の2回戦が終わり、魔導師の部、混合の部も終了した。アヒムさんもヴァルターさんも勝ち進んでいる。


 そしていよいよ、姉さんが登場する。

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