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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第30話 俺は回復魔法に対する新しい考えを得る

 回復魔法についてソゾンさんの意見を聞いたが、俺はその意見にもの凄く引っかかった。


 回復魔法は他人に魔力を与える魔法。


 それは今までアプリちゃんを苦しめて来た闇魔法の能力。


 そんなわけないよね。

 エルフ族の人からはそんな話を聞いた事が無いし。


 もしかしてドワーフ族にはそう伝わっているとか?


「ドワーフ族全体ではなく、儂の家に伝わっている話じゃな。儂の祖父が色々な魔導具を作っておったという話は以前にしたよな。その祖父が回復魔法の魔導具についても研究しておったようなんじゃ。儂が生まれた頃には祖父は各地を渡り歩くようになり、家に寄り付かなくなっておった。儂も父や母から聞いた話しかしらん。その研究にどのような成果が有ったかは解らないが、市中に魔導具が伝わってない事を考えると上手くは行かなかったんじゃ無いかと思う。それが闇魔法の研究に繋がっているかも儂には解らん」


 それならどうして今まで黙っていたんですか?

 闇魔法の魔導具を教えてくれた時に話してくれても良かったじゃないですか。


「教えるべき事じゃとは思っておらんかったし、そもそも教えられる程の知識が儂にも無い。今回はゲオルグが回復魔法のドワーフ言語に興味を持ったから一応その話を、それと忠告をしようかと思ったんじゃ」


 忠告って、まだ何か隠している事が有るんですか?


「隠している事、話していない事は山ほど有る。鍛冶屋の経営から儂の過去の事、へそくりを隠しておる場所まで様々な。忠告というのは、ゲオルグが思っている程回復魔法の魔導具を作るのは甘くないぞって話。研究に没頭し過ぎて家族を悲しませないようにって事じゃな」


 ソゾンさんのお祖父さんみたいにはなるなよって事か。


 今回の話は、俺が転生してくるまで広まってなかった枝豆や揚げ物を広めるのとは訳が違う。


 きっと今までも多くの研究者達が回復魔法の魔導具を作ろうと研究していたはずだ。

 しかしそれは上手く行ってない。前世の知識で偶々広められた枝豆と一緒に語ってはいけない。


 でも、国宝級の魔導具が有るって話だったよね。それは何時、誰が何処で作ったんだろう?


「さあな、それは儂も知らん。調べようにもその魔導具を外には出さんから調べられんしの。調べたドワーフ族は多分おらんじゃろうな」


 そうなんだ。まあ一般公開して盗まれたり壊されたりしたら大変だもんな。


「一部では偽物だとか、本当はそんな物無いんじゃと言う奴らもおるが、儂は有って欲しいと思っておる。その方がウキウキするじゃろ?」


 ウキウキって。

 そんなに眼を輝かせて興奮するのなら、ソゾンさんも一緒にドワーフ言語を研究しましょうよ。


「そうじゃな、儂1人では無理でもゲオルグと一緒なら何か出来るかもしれん。じゃが今直ぐには無理じゃな。船外機以外にも色々と仕事が詰まっておるんじゃ。今日の午後からはまた別の魔導具を作らんといかんはずじゃ。そうじゃったよな?」


 言語の研究に参加出来ない事を残念に思ったソゾンさんは、自分の予定をヤーナさんに確認する。言外になんとかならないかとの期待を込めて。


「そうね、暫く忙しいでしょうね。それよりもあなた。へそくりってどういう事ですか?いつから貯めていて、いくら隠しているんですか?」


 ヤーナさんの全身から怒気が漏れ出ているのを感じる。


 ソゾンさんが会話の途中にポロっと漏らしたへそくりの情報を耳聡く拾ったヤーナさんが、一歩踏み込んでソゾンさんに詰め寄った。


「あっ、儂はもう一度船外機の確認をせねばならなかったんじゃ。ゲオルグ、この話はまた後日な」


 ソゾンさんはヤーナさんの眼を直視する事が出来ず、工房へ逃げ出す事を選んだ。


 そんなバレバレな嘘を吐きたくなるほどに、ヤーナさんは怒りを露わにしている。


「まったく、いつのまにへそくりなんて作ったのかしら。金庫から盗っているのか、私の知らない仕事を受けているのか。最近は仕事の依頼が来て潤っているけど、いつそれが無くなるか解らないし、いつ働けない身体になるか解らないんだからちゃんと貯蓄をしておかないと」


 はい、ごもっともだと思います。


 俺達はこれから船外機を受け取りに来る客とソゾンさんの為に、ヤーナさんに全面賛成して機嫌を直してもらう事を選んだ。




 ヤーナさんの機嫌が直ったのを確認した俺達は、仕事の邪魔にならないようにと鍛冶屋を出た。

 ソゾンさんには挨拶出来なかったけど、まあそれは仕方ない。


 今日鍛冶屋に行って、回復魔法の魔導具作りが難しいと再確認した。

 それと同時に、回復魔法に対する新しい考えを得た。


 回復魔法は他人に魔力を与える魔法。


 一度、回復魔導士にこの話をぶつけてみたい。


 賛同するだろうか、反対するだろうか。


 モーリスさんに聞くのはまた話が長くなりそうだから、ちょっと時間を開けてからにしようかな。


 俺は急かすマリーに連れられて鷹揚亭へ向かいながら、まずは誰に聞くのがベストかと考えていた。

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