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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第6章
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第16話 俺は面倒な老人から逃れる

「すまん、冒険者ギルドに到着したらアリーと入れ違いになっていて、アリーと合流するのに時間が掛かってしまった」


 マルティナ様の部屋で暫く面倒な老人の相手していたら、漸く父さんが姉さんと一緒に現れた。

 俺はもうこの爺さんの相手で疲れちゃったよ。マリーもロミルダもエステルさんも、皆マルティナ様としか話さずに、ずっと俺が話し合いになってたんだからな。早く帰ってゆっくり休みたい。


「おお、お前はデニスの末っ子じゃないか。でっかくなったなぁ。リタさんは元気か?こいつら皆、お前の子供か?」


 面倒な老人が機嫌良さそうに父さんに話しかける。

 どうやら俺の祖父母と知り合いみたいで、父さんの事も小さな頃から知っているようだな。


「何言ってるんですかディルクさん、去年も会ったじゃないですか。この歳になって更に身長が伸びていたら異常ですよ。それに、この中で俺の子供はゲオルグとアリーだけです」


「それならゲオルグはデニス似だな。リタさんに似たらもう少し知的な顔付きになっただろうに」


「ははは、俺の息子な時点で親父に似るのは仕方ないですよ。でも大事な時には良い顔をするんですよ?」


 父さんと老人が2人で盛り上がっている。

 ちょっとだけ気分悪い話をしているみたいだけど、ここは父さんに任せて退散しよう。

 怒りに任せて話に割り込んだら、また面倒な事になりそうだからな。


 俺は父さんの陰に隠れるように体を動かして、マルティナ様を囲んで盛り上がっている女子のグループに割り込んだ。

 なんとなく、こっちも居辛い気がするけど、気にしない気にしない。


 俺はなんでもないような風を装って、今まで何をやっていたのかと姉さんに聞いてみた。


「ギルドマスターに頭を下げた後、急いでお城に向かったんだ。でもゲオルグ達が居なかったからどうしようかなと思っていたら、コンラートさんを見つけて一緒にお城に入ったの。で、コンラートさんと一緒にアプリちゃんの魔力検査を観戦した後、ちょっとだけコンラートさんと食堂でお茶をしていたら父様がやって来たから、一緒にここへ来たんだよ」


 ほう、コンラートさんと。

 コンラートさんって軍で働いてるんだよね。今日は休みだったのかな。


「アプリちゃんの魔力検査を観る為に、随分前から休みを申請していたって言ってたよ。これからライネン侯爵邸に行ってアプリちゃんの様子をレナーテさんに話すんだって。あの2人はそういう仲らしいよ」


 そういう仲って、恋人とかそういう事?


「ちっちっち。2人の仲に口出しするなんて野暮な事やっちゃダメだよ」


 は、はあ。そんな事しないけどさ。

 ちっちっちと指を振る姉さんは、人には注意する割に何処か楽しそうだ。


 そういえば、アプリちゃんが姉さんに、ありがとうって御礼言ってたよ。

 何か変な事やってる?


「変な事はやってないけどね。何をやったかは、内緒だけど」


 姉さんはそう言いながら、振っていた右手の人差指の上に小さな土の塊を出現させ、すぐに消してしまった。


 それはもしかして、アプリちゃんの検査時に土塊を大量に放出したのは姉さんだって言ってる?


「さあ、どうでしょう。内緒だから私は何も言えません」


 もうその笑顔はそうだと言ってるとしか思えないんだけどな。

 いつのまにアプリちゃんの計画に加わったんだ?

 俺が遣り取りしている手紙と一緒に、第一王子を経由して遣り取りしていたのかな。


 魔力検査に割り込んで魔法を使っていたなんて知られたら、姉さんに何らかの罰が下りそうだから俺も黙ってるけど、先に教えておいてほしかったな。


「アプリちゃんが内緒にして驚かせたいって言うから黙ってたんだよ。驚いた?」


 そりゃあもう。プフラオメ王子と一緒に、唖然としちゃったよ。

 俺の言葉にマリーとロミルダも同意する。


「ふっふっふ。作戦成功だね」


 姉さんはエステルさんとハイタッチをして喜びを表現している。

 エステルさんは味方だったのか。


 でも姉さんがお城に入れなかったら計画失敗だったよね。計画成功はコンラートさんのお蔭って事か。


「私が居なくてもエステルが居たから大丈夫だよ。それよりもお腹すいたなぁ。アプリちゃん達はまだ帰って来ないのかな?」


 お腹を押さえる姉さんにマルティナ様が優しく提案する。


「あの子達は当分帰って来ないでしょうから、先に作って置いたドーナツを頂いちゃいましょうか」


 姉さんの喜びの声がテラスから大空に向かって響き渡った。




 その日、お昼の時間が過ぎてもプフラオメ王子とアプリちゃんは帰って来なかった。流石にこれ以上長居し続けるのもという話になって俺達は帰宅した。


 そしてその日の夕方、父さんは国王の使いに呼ばれて再度お城に行くことになった。


 アプリちゃんの件で呼ばれたのか、もしかしたら村の5人の子供が冒険者ギルドでやった言霊についてだろうか。

 頭を抱えながら家を出て行く父さんの姿に、流石の姉さんもごめんと謝っていた。

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