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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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閑話 アマちゃんの勘繰り

『というわけで、マキナ殿の言う通りに手助けしておいたぞ。これで私の子孫達の願いを叶えてくれるんだな?』


「ありがとう。私の世界で助けを求められたら、何時でも助ける準備はしておくんだよ。でも、私の世界の人々はこの世界と比べて信心深くないから、助けを求められない可能性は有るんだよ」


『それならそれで構わない。子孫達を見守ってくれていると言うだけで安心出来る。また何か有ったら呼んで欲しいぞ』


「わかった。私がこの世界に干渉出来る数少ない存在の1人だから、頼りにしている。そのうちもう1人の転生者が動き出すと思うから、その時は仲良くしてあげて欲しいんだよ」


『了解した。今の住居が気に入っているからさほど遠くへは行かないが、もし近くに来た時には気にかけておこう。一応、その人物の名前は聞いておくぞ』


「その子の名は」




 マキナ、そのドーナツ食べないんなら、何時でも食べてあげますよ?


「ちょっと考え事をしていただけで、私はお腹ペコペコなんだよ。アマちゃんはもう既に3つも食べてるじゃない」


 マギーからドーナツを受け取った後、それを見ながら固まっていたので嫌いなのかと思いました。因みに私はあと7個は食べられますよ。


「こら、貰ったドーナツは1人3個しかないんだから欲張るんじゃないよ」


 凄く美味しかったのに、残念ですね。シュバルトの分は余ってないんですか?


「余ってないよ。シュバルトの分はあいつの教会に行って直接渡しているみたいだからね。余っていたとしてもアマちゃんに食べさせないけど」


 仕方ありません。自分の世界に帰ったら下界の人におねだりしましょう。


 今回のドーナツを持って来たのはルトガーさんでしたっけ?

 随分と熱心にお祈りをしていたようですが、何か有ったんですか?


「彼は教会に来た時はいつも熱心にお祈りしていくが、今回は特に長かったな。腹部を斬られて生死を彷徨ったが桃馬のお蔭で一命を取り留めたらしい。だいたい何時も前回来た時から今までに有った事について話して、これからもよろしくと言って帰って行くんだ」


 なるほど。


 ということは、このドーナツは桃馬さんのお蔭ということですよね。


 ということは更に、桃馬さんをこの世界に送り込んだ私のお蔭ということにもなりますよね。


 つまり、もう一個くらい私がドーナツを食べても良いんじゃないですか?


「桃馬が事件に首を突っ込んだのがそもそもの原因だと聞いているが、という事はこの世界に桃馬を連れ込んだアマちゃんの責任を問えばいいんだな」


 ははは、もうお腹いっぱいでした。


「アマちゃん、私は2つで良いから、もう1つ食べていいんだよ」


 おおお、マキナありがとう。マギーと違ってマキナは優しい子ですね。


「マキナ、アマちゃんを甘やかす必要無いよ。恩を仇で返して来るから」


 ふぉんはふぉふぉ、ふぁいふぁふぇん。


「何言ってるか分からないから、ドーナツを頬張りながら喋るなよ」


「アマちゃんにはいつもお世話になってるから良いんだよ」


 わざわざ紅茶まで注いでくれてありがとうマキナ。マギーとは心の広さが違いますね。


「心が狭くて悪かったね。次からはアマちゃんの関係者からお供え物を貰っても絶対に呼ばない事にするよ」


 そういう事をするから心が狭いって言うんですよ。


 あれ?


 そういえば桃馬さんがお供えした物しか頂いた記憶が無いですね。マキナの世界から来た転生者はお供えしないんですか?


「私の世界では神に祈る慣習があまりないから、別の世界に行っても宗教施設には寄り付かない人が多いんだよ」


「私の世界の人々はお祈りはするが、お供え物の種類は少ないな。基本的に酒が多い。桃馬のお蔭で色々貰えるようになってきているが」


 やっぱり桃馬さんをこの世界に送り込んだ私の功績が大きいですね。


「はいはい、そうだね。アマちゃんにはいつも感謝してるよ」




 マキナ、マギーに内緒で何かやってるでしょ。

 マギーには黙っていてあげるから私が困った時には手を貸して下さいよ。


「相変わらずアマちゃんは目聡いんだよ。じゃあ今度アマちゃんが負けそうになった時にはこっそり良いカードを渡すようにするよ」


 ふふふ。これでマギーをぎゃふんと言わせてあげられますね。


 ってそうじゃないんです。ゲームは自力で勝つので、別の時に手助けして下さい。


「アマちゃんは自力では勝てないんだよ。デッキ構成が偏り過ぎてるから」


 そんなことありません。私のデッキは最強です。たまたま、本当にたまたま運が無かっただけで。

 まだ2連敗しただけ。今回も少し旗色が悪く見えるかもしれませんが、ここで良いカードを引いて来たら逆転の余地は有ります。


 では私のターンですね。


 私の左手が真っ赤に燃えるうう。勝利を掴めと、疼いて叫ぶうう。ドロオオオ。


「いつでもイカサマの手伝いはするけど、ご利用は計画的に、なんだよ」

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