表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
364/907

第72話 俺は再び屋敷へ侵入する

 逃げる護衛隊長が残して行った炎を鎮火する為に、俺は背中のリュックから消火用の魔導具を取り出した。


 魔導具を起動し、燃え盛る炎に向かって放り投げる。


 周囲に水を撒き散らす魔導具によって、壁際の炎は少し勢いを弱める。よし、後2つほど設置するか。


『ゲオルグ、誰かがここにやって来るぞ』


 消火活動中の俺にアミーラが話しかける。アミーラは倒した敵の上に凛として座っていた。

 耳を澄ますと確かに足音が聞こえる。誰が来るんだ、敵か?


「ゲオルグ様、大丈夫ですか」


 アミーラが答える前に、扉が壊れて開けっ放しになっている入口からマリーか駈け込んで来た。

 なんだマリーか、敵じゃなくて良かった。


「村の広場での戦いは収束しましたが、炎壁の向こうに居た連中が居なくなっていたので急いでゲオルグ様を探しに来たんです。ゲオルグ様が無事でよかったんですが、アプリ様は何処ですか?」


 護衛隊長に連れて行かれちゃった。

 火を放って逃げて行ったから消化を優先させるしかなかったんだよ。ここに来る時にすれ違わなかった?

 取り敢えず主犯格のローラントさんと護衛隊長の部下が倒れているから、2人はマリーの草木魔法で縛っておいて。


「すれ違いませんでしたね。外には団員さん達がロミルダと一緒に控えていますし、ルトガーさんがこの建物内を捜索しているので、そちらで見つけてくれるかと思いますが」


 マリーは草木魔法を利用してパパッと2人を捕縛する。

 隊長達が隠れてしまったのは面倒だが、マリー単独の時に隊長達と鉢合わせなくて良かったと思っておこう。


 縛り終わったら、アミーラも連れて一緒に探しに行くぞ。アプリちゃんを早く助けないと。


「あの壁際で縛られている人達はどうしますか?」


 取り敢えずそのままにしておこう。火は消したから、今すぐどうにかなることはないよね。

 解放した人達がローラントさんに復讐しようとしても困るからな。


「解りました。では早速ルトガーさんと合流しましょう」


 うん、アミーラも行くよ。




 廊下を入口方面に進むと、金属同士の衝突音が聞こえて来た。誰かと誰かが剣で打ち合ってる音だ。

 音がする先は食堂方面だな。


 このまま食堂に突入するのも良いけど。

 よし、一度玄関から外に出て勝手口側に回ろう。


 玄関から屋敷を出ると、すぐそこで縛った敵を監視しているロミルダと団員2人と遭遇した。


「あ、ゲオルグ様。無事で良かったです。先程到着したジークさんも中に入って行きましたが、出会いませんでしたか?」


 ジークさんも到着したのか。それなら中で斬り合っているのはジークさんだな。ルトガーさんは何処へ行ったんだろう。


「ここからは出て来ていないので中に居ると思うのですが」


 解った。俺は裏の勝手口からもう一度中へ入る。もし他の団員が援軍として到着したら、屋敷に入って左に進んだ突き当りの部屋で縛られている人達を保護して欲しい。ローラントさんと敵も1人捕縛しているから間違えないように。


 俺の言葉に団員が1人、一歩前に出る。


「それなら、俺が先に中へ入り、2人を連れて来ます。ロミルダがしっかり縛ってくれているからここは2人に任せても大丈夫でしょう」


 じゃあそれでお願い。あ、ついでにこれと同じ魔導具が焼け焦げた壁際に転がっていると思うから回収して来て。

 うん、敵の残党が隠れているかもしれないから、気を付けて。


 ロミルダ、もし既に回復魔法の魔導具を使用していたら予備を渡すけど、どうする?遠慮はするなよ。


「瀕死になっていた敵を回復させるために使用したので、交換してください。可能なら更にもう1つ貸して下さい」


 2つね。在庫はまだあるから大丈夫。敵を回復させてあげるのも良いけど、自分の身を護るのを最優先に使ってくれよ。


「はい、ありがとうございます」


 よし、じゃあ行くぞ。


『待て、少し腹が減ったぞ』


 そんなことを言っている場合じゃない。早くアプリちゃんを追いかけないと。


『肉ならなんでもいいぞ。少し食わせろ』


 だから、今は急いでいるの。


「言い合っている時間の方が無駄です。アミーラごめんなさい。日持ちする燻製肉しか有りませんがそれで良ければ」


 マリーがリュックからカリカリに乾燥された燻製肉を5つ程取り出し、アミーラの前に置いた。


『まあ無いよりは良いか。頂くぞ』


 ばりばりと大きな音を立てて燻製肉を噛み砕き、アミーラは一瞬のうちに食べきってしまった。確かに言い合って説得するよりは短時間だが、見ているだけで喉が渇きそうな食べ方だ。


『うむ、あまり美味い物では無かったが少しは腹が膨れたぞ。では食後の運動へ行こうか』


 なんでお前が仕切るんだよ。はあ、言い合いしている暇は無かったな。急ごう。




 屋敷をぐるっと回って裏口に向かう。


 裏口はさっき俺がこの建物に侵入する時に使って扉を閉めたが、今も扉は閉まったままだ。ここから逃げていない、と判断していいかな。


 扉を少し開けると、金属音が聞こえてくる。よし、まだ戦っているな。

 出来れば戦いの隙をついてアプリちゃんを保護したい。


 マリーもアミーラも、頼んだよ。


 息をひそめてこっそりと、俺達は再び台所から侵入した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ