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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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第68話 俺は戦闘を皆に任せる

 アプリちゃんを追跡してやって来た村で対面したのは、マルティナ様の護衛隊長を務める男だった。

 その護衛隊長の合図によって、屋根の上に潜んでいた複数の人間が俺達に向かって飛び掛かって来た。


 上空から襲い掛かって来る敵に、団員2人とマリーが対応する。

 団員は上空に向かって攻撃速度を優先した風魔法を撃ち込み、風の塊が数人の敵を吹き飛ばす。

 マリーは3体のメタルジークを瞬時に作り出して空中にジャンプさせ、各一人ずつの敵に斬り掛かった。


 俺達の視線を上に誘導した護衛隊長は地上に居た10人程度の仲間を動かし、こちらに向かって一斉に火魔法を放つ。半円状に並んだ人間が全く同じタイミング、同じ大きさ、同じ速度で火球を放つその姿は軍隊のように整然としていて、護衛隊長の統率力を表していた。


 空中の敵には対峙せずに警戒していたルトガーさんが、俺の前に一歩歩を進めて言霊を発する。


「炎壁」


 姉さんが開発した言霊を利用して放たれた火魔法は、閃光を伴いながら巨大な炎の壁を発生させ、飛来してくる火球を全て受け止めた。敵の火球を喰らった事で更に轟々と勢いを増した炎の壁は、熱気を周囲に撒き散らしながら、俺達と護衛隊長達と交通を遮断している。


「花火」


 炎壁の完成を確認したルトガーさんは続いて巨大な火球を上空に向かって打ち上げる。晴れ渡った大空に打ち上げられた花火は閃光と轟音を伴って爆発し、小さな破片の数々が壁の向こうに落下する。


 これは壁の向こうに居る敵に対する攻撃であると共に、俺達の居場所を周囲に伝える目印だ。

 後を追って来ているジークさん達も遠くからこの火球を目視出来ているはずだ。


「坊ちゃま、こちらは暫く私が対応しますので、壁のこちら側に着地した敵への対処をお願いします」


 先程屋根の上から飛び掛かって来た人の多くは壁のこちら側に着地し、団員やメタルジークと地上戦を繰り広げている。メタルジーク3体の操作に集中して無防備になっているマリーの身を護る為にも、こちら側の敵は速やかに無力化する必要がある。


 ロミルダ、大丈夫?力を借りていいか?


「は、はい。大丈夫です。急に色々な事が起こって混乱していましたが、炎壁の熱風と花火の轟音で漸く現実に帰って来られました」


 そうだね、俺も護衛隊長が出て来て驚いている。でも、こちらに協力する訳でも無く攻撃を仕掛けて来るのなら、それに対処しないといけない。


 ロミルダには草木魔法を使って相手を捕縛していって欲しい。

 これは、絡みついた物の魔力を吸い取って成長する植物の種だ。以前シビルさんが使っていた植物をエステルさんに再現してもらった。開発に随分と時間が掛かったから実戦投入は初めてだけど、ロミルダなら上手く使えるはずだ。

 まずは既に地面に臥している敵を捕縛した後、メタルジークと戦っている敵の邪魔をしてマリーを手助けして欲しい。

 勿論、ルトガーさんから離れないようにね。


「解りました、頑張ります。ゲオルグ様はどうするんですか?」


 俺は、あそこでアミーラが早く来いって呼んでるから行って来る。もう暫くしたらジークさんも到着して戦力は増えるから、それまではお願いね。


 種を受け取ったロミルダが早速草木魔法を発動し、団員の攻撃によって地面に倒れている敵を捕縛したのを確認したところで、炎壁の炎が届いていない路地裏からこちらを呼んでいるアミーラの下へ俺は駆け出した。


『何時まで経っても追いかけてこないから態々呼びに戻ったんだぞ。帰った時には美味い肉を期待しているからな』


 戻って来て偉いだろっ、みたいな顔をしてアミーラは尻尾を振っている。はいはい、アプリちゃんが無事に帰って来たらな。


『うむ、では早速行くぞ。私だけなら炎の中を進んで行くのだが、火の手を避けて先導してやるから感謝するんだぞ』


 一々恩着せがましく言わなくてもちゃんと御礼はする。さあ、行くぞ。




 俺はアミーラの背中を見ながら住居の隙間を縫って歩いた。

 遠くから爆発音と金属音が耳に届く。家屋間の切れ目から赤い光が射しこんで来ていて、未だに炎壁が健在なのが確認出来る。あの炎に対処するには土魔法で炎の全体を覆って空気を遮断するか、水魔法で大量の水を出す必要がある。向こうには優秀な魔導師が居ないのかもしれないな。


 それにしても、どうしてこの村の住人達は外に出て来ないのか。家屋の中には爆音も響き渡っているはずだ。

 何があっても外に出ないよう脅されているのか、出られないよう縛り付けられているのか、既にこの村には居ないのか。

 無人かどうかを家屋内に立ち入って確認する暇は無いが、戦火に巻き込まれて命を落とさないことだけを願って、俺は狭い路地裏を進んで行った。

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