表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
358/907

第66話 俺はアミーラと取引をする

 倉庫内を調べ終わったジークさんから中の様子を聞いてこれからどうしようかと相談していると、倉庫の屋根から飛び降りて来たアミーラと遭遇した。


 お前は何でこんなところにいるんだよ。


『にゃっはっは。退屈していたからお前達について来たのだ。もう少し周りに注意して移動しないと、何時でも襲い掛かれる隙が有ったぞ』


 ジークさん達も護衛に参加して馬車移動していたんだからそこまで危険な状態でもなかったでしょ。

 それにこの辺りにはアミーラみたいに性格が悪くて凶暴な魔物はいません。


『お前達と一緒に居たあの子を探しているのなら、私への発言は注意した方が良いぞ。私はあの子の行方を知っているからな』


 あの子ってアプリちゃんの事か?

 事の重大さに気づいたマリーが、アミーラと会話出来ない人達に通訳を始めた。


『私はお前達が眠っていた家の屋根で休んでいたんだが、夜更け前にその子がもう1人の人間と共に屋敷から出て来たんだ。美味そうな匂いをさせていたから屋根から飛び降りて近寄ったら、その子が食べ物をくれた。肉ではなかったがまあまあ美味かったぞ。私がその食べ物を食べている間に2人は居なくなったが、まだ匂いは強く漂っていた為追跡した。そしてたどり着いたのがここだ。先程、お前達が来る前にその子は多くの人間達と共にここを離れ、街の外へ向けて移動したぞ』


 なっ。なんでそんな大事な事をもっと早く言わないんだ。

 どっちへ行った?

 どの方角の門だ?

 早く後を追わないと、最早何処へ行ったのか解らなくなってしまう。


『まあそう慌てるな。あの子がこの建物に入った時と違って、出て行った時には更に強烈な匂いを発生させていた。あの時に取り逃した匂いだ。あいつらはまだ匂いを辿れる範囲に居る。どっちへ行ったのか教えて欲しかったら、後で肉を腹いっぱい食わせろ。あの匂いの元凶を食べさせてもらえるなら、なお良いぞ』


 あの時って、ローラントさんが逃げだした時だな。

 わかった。匂いの元凶を食べさせるのは多分無理だが、父さんに頭を下げて一番良い肉を食べさせてやる。だから、早く教えろ。

 いや、教えてください、お願いします。


『よろしい、では行くぞ。最速で移動するからしっかりついて来いよ』


 取引に応じたアミーラは瞬時に倉庫の屋根に飛び上がって移動を開始した。どうやら屋根伝いに走って行くらしい。


 俺はルトガーさんに抱えられて空を飛びながらアミーラを追跡する。俺達の後ろにマリーとロミルダ、そして団員が2人。

 飛行魔法が使えないジークさんは俺達が進んでいる方角に向かって走ってついて来る。同じく飛べないリカルドさんは、方角を確認した後一度屋敷に戻ったようだ。飛べない自分の代わりに屋敷を警備している残りの団員達を回してくれるのかもしれない。


 ジークさんがついて来ているのを確認しているとザフトの街から外へ出る北門が近づいていた。

 アミーラはそこで止まることなく、街を囲う塀を軽々と飛び越えて外へ出てしまった。

 楽々魔物の出入りを許してしまう壁に利用価値があるのかどうかわからないが、俺達人間は一応門で入出手続きをする必要がある。


 すみません。今は緊急事態なもので。


 下で声を出している役人や兵士の対処はジークさんに任せて、俺達はアミーラの追跡を優先した。これが収まったら絶対に謝りに行こう。


 マリー、後から来るジークさん達が迷わないように、例の目印をお願い。


「既に1粒撒いています。父にも一度育てて見せているので、問題無く後を追えるでしょう」


 さすがマリー、話が早くて助かる。

 後方の地面を振り返ると、既に魔法によって育った1本の黄色い花がこちらへ顔を向けていた。


 最近草木魔法の便利さに助けられっぱなしだな。


 俺はこういう場合の道しるべに同じ植物を並んで植えていくことを考えた。ある程度熟練した者が使う草木魔法なら地面に植えなくても植物を開花させることが出来る。それを空から一定間隔で撒いて道しるべとする。花の向きで方角も伝えられる。一応この国の植生と季節に合った花を選んでいるから、知らない人が花を摘んでしまうのは避けられていると思う。

 まあ実戦投入はこれが初めてだから、不備があったらまた後日修正すればいい。




 アミーラはこちらを確認することなくどんどん目標に向かって走っている。あの小さな体からどうやってと思う程の速さで走り続けている。

 その速さにルトガーさんは俺を抱えても問題無くついて行く。

 少し遅れそうになったロミルダは団員の1人に介助してもらっていた。ロミルダは飛行魔法の習得を放棄して草木魔法を覚える事を優先したからな。魔力検査が終わってから飛行魔法を練習していたが、高速で長時間飛び続けるのはまだきつかったようだ。

 やっぱり、リカルドさんと一緒に屋敷へ帰した方が良かったかもしれない。


 でも今更ロミルダを引き返させる訳にはいかない。道しるべのお蔭で迷わないとは思うが、1人で離れさせるのは不安だ。だからと言って団員を1人付けるとこちらの戦力が不安になる。アミーラは倉庫から複数の人間が出て来たと言っていた。こちらも人数は多い方が良い。


 北へ向かって進む大きな街道から東へ延びる脇道へ入ったロミルダは、まだまだ止まることなく走り続ける。

 高速で走るロミルダや飛行魔法で追いかける俺達とすれ違った馭者さんの顔が印象的だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ