第61話 俺は王子の不安解消に付き合う
「ローラントさんが生きているって噂を聞いて、アプリちゃんが探しに行こうとしています」
アプリちゃんの草木魔法お披露目会が行われたその日の夜、俺はマリーとロミルダからアプリちゃんの隠し事について報告を受けた。
俺と王子が席を外している間にドーナツを食べながら3人で談笑した結果、アプリちゃんが打ち明けてくれたそうだ。
やっぱり女の子に頼んで良かった。俺だったらそこまで話を聞き出せなかったかもしれない。
それで、その噂を聞いて何処へ探しに行こうとしているって?
お城の中を探すって話じゃないんだよね?
「お城の中でも王都の中でも無い事は確かなんですが、それ以上は教えてもらえませんでした。アプリ様はローラントさんが生きているという話を信じているようで、今度王都の外へ行く時に絶対探し出すんだと入れ込んでいました」
アプリちゃんは探す場所の目当てもつけているようだ。よっぽどその噂話を信じてるんだな。
誰から聞いたのかは教えてもらった?
「それもダメでした。絶対に教えてはいけないと言われたんだそうで。噂の出所や探す場所を誰かに教えてしまったらもう二度と会えなくなるんだとアプリ様は言っていました」
なるほど、そうやってアプリちゃんを騙しているのか。誰だか知らないが、小さな子供を騙して楽しいのかね。
それにしても、アプリちゃんはよっぽどローラントさんに会いたいんだな。
でも会ってどうするんだろう。もう一度、マルティナ様に仕えるようお願いするつもりなんだろうか。
「一番の希望はそれみたいですが、今までの事の御礼を言いたいんだと仰ってましたね。何も気持ちを伝えられずに、急に目の前から居なくなってしまったのが心残りだったようです」
なるほど、お礼を言いたい、か。
今までローラントさんによっぽど良くしてもらっていたんだな。
「そうですね。特にプフラオメ王子の領地経営が忙しくなって王都を不在がちになってから、ローラントさんとより長く過ごすようになったみたいです。兄として、もしくは父として、ずっと長く頼って生活して来たそうです」
俺にとってのマリーやマルテみたいに、アプリちゃんにとっては従者のローラントさんも大切な家族だったんだな。
マリー、いつもありがとう。偶に口煩く感じる時もあるけど、色々と手助けをしてもらって感謝してるよ。
「何ですか急に。熱でもあるんですか?気持ち悪いですよ」
ぐっ。折角アプリちゃんに倣って今までの御礼を伝えたのに、気持ち悪いは無いんじゃないかな。
「口煩いっていう言葉が無ければ素直に喜んだんですがね。素直に御礼だけを言わないゲオルグ様が悪いんですよ」
はい、すみませんでした。
「相変わらず御2人は仲が良いですね。私には同い年の幼馴染はいないので羨ましいです」
だいたいいつも俺が言い包められる関係なんだけど、ロミルダには羨ましく見えるかい?
マリーは時々傷口に塩を塗りたくってくる時があるから、あんまりオススメしないよ。
「そうだよ、こんなに何時でも何処でも勝手な行動をして他人に迷惑を掛けるような人は絶対にオススメしないよ。反省しても一晩眠ったらコロッと忘れるんだから。もっと感謝の気持ちを素直に伝えて来るような人を友達にした方が良いよ」
本当の事かもしれないけど、ちょっと言い過ぎじゃないか?
こっちが1つ文句を言う間に3つくらい返して来るのは狡いじゃないか。
ロミルダも笑ってないでマリーを止めてくれ。こっちはもう手を引いているのに次々と悪口が飛んでくる。一緒にマリーに謝ってくれ。
ということでアプリちゃんはローラントさんを探しに行きたいそうだぞ。
翌日、もう一度我が家を訪ねてきたプフラオメ王子にアプリちゃんの考えをマリーから伝えてもらった。
「ありがとうございます。何日か時間を空けて、何処か行きたいところが無いかと聞いてみます。もし時間が合えば、一緒に行ってもらえませんか?」
急に俺達が参加したらアプリちゃんも不振がるんじゃないか?
「皆で遊びに行こうとか言って、その辺は出来るだけ上手くやります」
まあ王子がそう言うのなら。
じゃあまた日程が決まったらロミルダも呼ぶから早めに教えてよ。俺はその間に、何か役に立ちそうな魔導具でも考えてみようかな。
でも、後もう1つ問題が。
流石に父さんに黙って王子様御一行と一緒に外へ出る訳にはいかないから、一緒に説得して欲しい。俺だけじゃ無理だからさ。




