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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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第49話 俺は王子達を出迎える

 10月頭の昼食後、プフラオメ王子達の来村を聞いた父さんは慌てていた。


「普通王族が来るなら先触れを寄越すだろ。なんで急に来るんだよ。ゲオルグは何か聞いてなかったのか?」


 聞いてないけど。

 なんでそんなに慌てる必要があるのさ。

 友達が友達の所に遊びに来ただけでしょ。


「王都の我が家に数時間滞在されるのでさえ緊張するのに、いきなり村に来るなんて俺の精神が耐えられない。村の住人達が王妃に対して失礼な態度を取ったらどうする?」


 マルティナ様は多少の事では怒らないと思う。

 それに村の人達に悪さをするような人は居ないから大丈夫でしょ。住民達を疑うなんて酷い領主だこと。


「ぐっ。別に疑っている訳ではないぞ。最悪の状況を考えた結果だ。そんな事よりも急いで迎える準備をしなければ」


 あっ、逃げた。

 まあ父さんが神経質になる気持ちも分かるけどね。旧公爵領を3人の王子達と分割統治して競い合っているんだから。村の中でその王子に何かあったら、ライバルを蹴落とす為にとか何とか邪推されかねないもんね。




 父さんが大慌てで村の各所に指示し、王子達を迎える準備を形だけでも整えようと苦戦していると、団員を含めた数人に護衛された馬車が村に到着した。

 馬車は王族が乗っているとは思えない程、普通の、塗装が剥げる程使い古された極普通の馬車だった。


 護衛に先導された馬車が村内の道端で動きを止めると、中から慌てた様子のプフラオメ王子が飛び出して来た。


「ゲオルグさん、最近妹の様子が変なんです。知り合いの医者に見せても体調が良くならなくて。急な話で申し訳ないのですが、妹を助けてあげて下さい」


 お、おう。

 確かに急な話だな。


 取り敢えず俺だけではどうしようもないから、イゾルデ先生に同席をお願いするぞ。それから念の為にニコル先生も呼びに行ってもらおう。




 マルティナ様に抱えられて馬車から降りて来たアプリちゃんは呼吸が荒く顔が紅潮して、熱を持っている事が目に見えて理解出来た。

 取り敢えず立ち話をするような状況ではないから、イゾルデ先生の診療所に連れて行ってベッドに横たわらせた。


 話を聞くと俺達が男爵家の村に来たのと同じように、アプリちゃんもプフラオメ王子が治めている領地の誕生祭に参加する為暫く王都から離れていた。誕生祭の後プフラオメ王子領に5日間滞在し、王都に戻る途中から発熱が始まったそうだ。


 アプリちゃんは一年に一度は熱を出して寝込むような子だったらしく、当初は今回もその発熱だと思ったようで、いつも見ている医者から貰った薬を飲ませて落ち着いたそうだ。


 しかし例年とは違って、9月中旬頃から今日に渡って発熱と解熱を繰り返した。


 最初の頃は医者の薬で落ち着いていたらしいが、ここのところは発熱する時間が長くなり薬が効いていないらしい。


 風邪?

 にしてはそんなに頻繁に繰り返すのは変だと思うが、男爵家の薬草で作った薬は試してみたんだろうか。


「解熱剤だと聞いていますが昔から同じ薬なので男爵家の同じ薬草は使っていないかと」


「王家に仕えている医者は2人居るけど、先生の名前は?」


 俺と一緒に事情を聴いていたイゾルデ先生が質問する。


「バルトルト先生です。僕達を産まれた頃から見て下さっている先生です」


「ああ、あの腕は良いけどちょっと頭の固いバルトルト先生ね。市井の診療所のようにもっと新しい物を取り入れるべきだと思うけど」


 イゾルデ先生が軽く毒づき、調合室の方に向かった。

 軍で長く働いていたイゾルデ先生だから城内にも色々な知り合いが居るんだろうな。


 調合室から戻って来たイゾルデ先生は粉末の薬と緑色のやや粘度が高い液体が入った瓶を持って来た。


「まず、こちらの液体を先に飲ませて、その後に粉末の薬をぬるま湯と一緒に飲ませます。液体の方は栄養剤、粉末の薬が男爵家の薬草で作った解熱剤です。発咳や疼痛は無いようなので、鎮咳や鎮痛の効果は含んでいません。薬を夜も飲ませて明日までに熱が下がらなければ違う医者に診てもらった方が良いでしょうね」


 あら。イゾルデ先生は粘らず、すぐにお手上げだと言うんですね。意外です。


「戦場で色々と経験するとね、是非の判断が早くなるのよ。今呑ませた薬でダメなら私の手には負えないから別の手段を考えた方が良いという事。もしかしたら医者以外に頼った方が良いかも」


 えっ、またそう言う話?

 ローザ様にかけられた呪いのような物がアプリちゃんにも襲い掛かっているって?


「それはどうか解らないけど、無駄に長く薬を投与するのはこの子の為にもならないからね」


 まだ呼吸は少し荒いが、薬を飲んで少しだけ顔の赤みが落ち着いてきたアプリちゃんの頭を、イゾルデ先生が優しく撫でる。


 少し口は悪いが、イゾルデ先生は良い先生だ。

 ニコルさんを呼び付ける必要は無かったかもしれないね。


「ほらほら。これから汗を拭いて服を着替えさせるから、男は出て行きなさい。どうしても手伝いたいって言うなら話は別だが」


 はい、出て行きます。さすがに女の子の裸を見る訳には行かないからね。

 王子は残る?

 うん。じゃあ、また時間を置いて様子を見に来るから。

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