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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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第46話 俺はアミーラを刺激しないよう注意する

「くっ、くやしい。絶対に上手く行くと思ったのに。くやしいぃぃ」


 意識を取り戻した姉さんが敗北した状況を理解して悔しがっている。

 それよりも、姉さんの体調は大丈夫なのか?


「うん。ちょっと手足が痺れてるけど、大丈夫。雷撃魔法は当たると意識を持って行かれるから気を付けないとね」


 電撃を喰らったのか。大丈夫そうでほっとしたけど、一応後でイゾルデ先生に診てもらおうね。


『にゃっはっは。小娘もなかなか良い動きをしたが、まだまだ爪が甘かったな。上手く大技を隠していたが、攻撃が直線的過ぎるぞ』


 勝ち誇った様子で姉さんに声をかけたアミーラだが、真っ白だった体毛のあちこちが茶色く焦げている。姉さんが放った火魔法の影響だろうな。


『私が落とす雷の威力、速度、発動間隔を見切って火球を合わせて来たのは見事だ。一発目の火球で起こした音と光に紛れて、更に強力な二発目を放っていたのも良い。二発目は特に強力で、ドラゴンブレスと同程度の威力が有ったぞ。お蔭で私の綺麗な毛並みが台無しだ。しかし、火魔法に自信を持ち過ぎたのか、放った直後が隙だらけだった。私ならすぐに身を隠すぞ』


 アミーラの助言に姉さんは悔しがっている様子から少しだけ頬を緩ませる。


 何人かの団員が斬りかかって手も足も出なかったのに、姉さんの炎は多少なりともアミーラに届いたんだな。


『届いたというか、私が問題無いと判断して防御に集中しなかっただけだぞ。まあ防御に専念していたら、娘の隙を付いて一撃を喰らわす事は出来なかった、かもしれないが』


 はいはい、そうですか。アミーラが強いのは理解したから、村の中で不必要に暴れて建物を壊したりしないでよ。もちろん、ちゃんとご飯は食べさせるから。


『不味い飯だとダメだぞ。美味い飯を食べさせてくれるのなら、攻撃したりはしないからな。では、私はもう眠いから休ませてもらうぞ』


 一度大きく欠伸をしたアミーラは、同じく大きな欠伸をしていたロジーちゃんに抱かれて、一緒に広場を去って行った。


「ははは、かなり本気の、業火よりも更に強力な火魔法だったんだけどな。お姉ちゃんも疲れてお腹空いちゃったから、家に連れて帰って美味しい物を食べさせてよ」


 よっこいせと体を起こした姉さんが、俺の背中に凭れ掛かって来る。

 もう手足の痺れも取れたんでしょ。重いから自分で歩いてよ。それに夕食はもう食べたんだから、今からまた何か食べたら太るよ。


「え~、つかれた~。甘い物食べた~い」


 わかった。わかったからちゃんと歩いて。マルテに頼んで何かおやつを作ってもらうから。




 アミーラが力を示した翌日、父さんの指示により複数の男性が村から出て行った。

 彼らは食料と金銭を馬車に積み込んで南の国を目指す。

 国境を越えて調査中の団員達を援護して活動範囲を更に広げる為だ。それをする理由は。


「ふふふ。龍の活動痕跡を調べて、龍の鱗でも見つけてみろ。ふっふっふ。売るもよし、装備を作るもよし、王家に献上するもよし。いや~、夢が広がるな」


 上機嫌な父さんが朝からその理由を口遊んでいる。もう何度も聞いて、聞き飽きたわ。父さんも城に龍の件を報告しに行くんでしょ。さっさと行ったらどうなの?


「久しぶりにカエデ達と会えるから気持ちが昂っちゃったんだ。今日は王都の家に泊まるから帰って来ないぞ。何かあったらマルテとジークにちゃんと相談しろよ。アミーラは必要以上に刺激しないようにな。じゃ、行って来ます」


 はいはい、行ってらっしゃい。


 王御方面に飛んで行く父さんを見送った後、俺はアミーラの様子を見に行くことにした。




 ローザ様の家を訪ねると、そこにアミーラは居なかった。ローズさんやロジーちゃんと一緒に朝の稽古に出かけたらしい。

 マルテの魔法教室だな。今日は何処でやってるんだろう。マリーはマルテから聞いてる?


「今日はプールで水魔法と氷結魔法の練習をするって言ってましたよ」


 へぇ。じゃあ金属魔法を覚えていないローズさんとロジーちゃんは見学だけかな。あ、ローズさんは少し水を動かせるって言ってたっけ。


「子供が増えて年齢差と共に魔法の実力差、修得速度にもバラつきが出来てますからね。教師が母とクレメンスさんだけでは個人の進捗状況に合わせた訓練が出来ないって言ってましたよ。だから最近は1日に練習する五行の属性を固定して、数日置きに属性を変えているんだとか」


 学校に通っていて不在な子も居るけど、子供の数は結構多い。

 確かに1対1で教える時間は取り辛いよな。

 でも今日の水魔法もそうだけど、草木魔法の時間は見学者が多くなって暇そうだ。


「自分が魔法を使えない時は人の魔法を見て勉強するんですよ。それに属性の相性も学べます。火魔法と土魔法しか使えない子が水魔法で攻撃された時、火と土どっちの魔法で防ぐべきか、とか」


 そりゃあ土魔法だろうね。


 まあ姉さん並の業火を操れれば、中途半端な水魔法は蒸発してしまうだろうが。


「そうですね。なかなか出来る人は少ないでしょうがそれも方法の1つです。そういう事を考えつつ自分でやってみる事が大事なんだと母が言ってました」


 自分で体験すると言うのは大事だと俺も思うが、小さな子供が怪我をしないように気を付けてとマルテに言っておいてね。


 そうやってマリーと雑談しながらプール近くの広場に到着した俺の目には、逃げ回るアミーラと、それを追いかけ回す子供達の姿が飛び込んで来た。


 ちょっ。アミーラを不必要に刺激しないで。

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