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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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第44話 俺は不思議な猫を父に紹介する

『うむ。やはり肉は焼いた方が美味いぞ。私も試してみたが魔法で焼くのはなかなか難しくてな。魔力が強すぎて消し炭にしてしまうのだ』


 皿の上に置かれた焼いた鶏肉をアミーラが美味しそうにがっついている。


 姉さんから逃げ出して暫く居なくなっていたアミーラは、夕食時になったことを匂いで感づいたのか、新居の玄関の前で飯をくれと鳴き始めた。因みに俺達も一緒にローザ様達と夕食を頂いていた。


 俺には早く飯をくれ美味い飯をくれと聞こえていたが、ロジーちゃんの耳にはにゃあにゃあ鳴いているように聞こえるらしい。

 鳴き声を聞いたロジーちゃんは予め用意していた皿を持って玄関に向かい、凛々しくお座りして待っていたアミーラの前に皿を置いた。


「アミーラはね、焼いたお肉とお魚が好きなの。パンも食べるよ。でも私と一緒でお野菜はちょっと苦手なの」


 ガツガツと肉を喰らうアミーラの背中を優しく撫でながら、ロジーちゃんがアミーラの好みを教えてくれた。

 食事中なのに背中を触らせるなんて、アミーラはよっぽどロジーちゃんに心を許してるんだな。


「私も触りたいなぁ」


 姉さんがロジーちゃんを羨ましがっているが、嫌われているらしい姉さんにはちょっと難しいだろうねぇ。

 姉さんも何か食べ物を与えたら仲良くなれるかもよ?


「じゃあ今度おっきな魚、捕まえて来るよ」


 はいはい、あんまり無理をしないでね。


 俺達は暫くの間、アミーラの食事風景を眺めていた。




『飯を食った後は毛繕いをして眠るのがいつもの習慣なんだが、どうしてもと言う用事とは何ぞ。私を何処に連れて行く気だ?』


 歩くのも面倒だとアミーラが言うからロジーちゃんに抱いてもらって一緒に歩いている。姉さん達も後ろに居るけど。

 俺も用事の内容は知らないが、行き場所は我が家だ。ローザ様から聞いた喋る猫とやらに、父さんが会いたいらしい。


『ゲオルグの父というと、私があの家に住むことを許可してくれた人間だな。面倒だが礼くらいは言っておこうか。そうと決まればさっさと用事を終わらせようぞ』


 自分で歩かない癖に何がさっさと終わらせようだよ。

 抱えてくれているロジーちゃんにお礼を言うのが先だろ。


『私はいつでもこの子には感謝している。いつも美味しい食べ物を食べさせてくれてありがとう』


 お礼を口にしながら顔の近くにあったロジーちゃんの手をぺろぺろとアミーラが舐める。


「ふふ、くすぐったいよ。何か嬉しい事でもあった?」


 言葉は理解出来なくても、ロジーちゃんは何となくアミーラの気持ちが分かっているみたいだ。

 一応通訳すると、今日の食事も美味しかったってさ。


「どういたしまして。これからもよろしくね、アミーラ」


 うむ。口では違うと言っていたが、アミーラは完全にロジーちゃんのペットだな。

 気持ちよさそうに撫でられているアミーラの姿を同族が見たらどう思うだろうね。


『母意外の同族に会ったことは無いからわからんな。父親も名前しか知らない。同族に会えるなら会ってみたいと思う。イケメンだとなお嬉しいぞ』


 はいはい、偶々出会えたら可愛い雌猫が居ると勧誘しておきますよ。




 男爵邸の会議室では父さんの他にジークさんや団長、パスカル先生など多くの人が席についていた。

 食事の後にアミーラを連れていくと連絡しておいたから再度集まったんだろう。もしかしたら帰らずに待っていたのかもしれないけど。


 会議室に入ったアミーラはロジーちゃんの手から飛び降りて、優雅に歩く姿を皆に見せつけ、華麗なジャンプで父さんの目の前のテーブルに飛び乗った。


『貴方がゲオルグの父親かな。新しい家に住む事を許可してくれて感謝している。私に用事があるようだが、お礼に少しは話を聞いてやってもいいぞ』


 優雅にお座りしているが、尻尾をぶんぶんと振って感情を表している。傍から見ると只の上機嫌な猫だな。


「おいゲオルグ。この猫が本当に喋る猫なのか?」


 おや?

 父さんにはアミーラの声が聞こえないのか。

 確か魔力量が豊富な人間と意志疎通できると言っていたはずだが。魔法が使えない俺が父さんより魔力量が高いなんてあるんだろうか。


「ちゃんと喋ってるよ。家に住むことを許可してくれてありがとうって」


 俺が首を傾げている間に、姉さんが父さんに通訳する。

 うん、姉さんは間違いなく聞こえているね。他に声が聞こえた人はこの中に居るのかな?


 俺の質問に対して手を挙げたのはマリーだけだった。


 こうなって来ると魔力量の高い子供にしか声が聞こえないんじゃないかとも思えるな。


「パスカル先生の仰っていたディザスターキャットの特徴はあるな。そう断定しても良いですよね?」


 父さんがアミーラを無視してパスカル先生に話しかける。

 声が聞こえないからってアミーラを無視するのは良くないと思うよ。


「そうですな。白毛、短毛、オッドアイ、聞こえない声。南方に生息するディザスターキャットと見て間違いないでしょう」


 パスカル先生が父さんの問いに答える。ディザスターキャット。それがアミーラの種族名だろうか。パスカル先生は植物以外の知識もあるらしい。


 だが、それがどうしたんだろう。


「ゲオルグ、通訳しろ。南方に住むディザスターキャットがなぜこんなところにいる?あなたを追い出した魔物とはどんな魔物だ?」


 いつになく真剣な表情で父さんがアミーラに問いかけた。

 よく解らないけど、アミーラがここに来た経緯を知りたいのかな?

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