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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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第36話 俺は謹慎中の出来事を思い返す

 5月、去年と同様に武闘大会が行われた。

 同じじゃないのは今年は姉さんの演技が無い事と、俺が観戦できなかった事。そして父さんは競技場内の売店に外の屋台にと去年よりも手広く事業を展開していた。


 姉さんは演技をしない代わりに、観客席を飛び回って売り子をした。まあ俺が父さんに提案したんだけどな。今年も大会に出たいと騒ぐ姉さんと、出したくない父さんとの間で争いになっていたから。

 大会後、大儲けだったと自慢して来る姉さんを見て、悪くない提案だったとほくそ笑んだ。


 剣士の部は今年もジークさんが優勝。

 魔導師の部と混合の部の優勝者は聞いたことが無い人達だった。西の国から来た魔導師と、キュステの冒険者ギルドを根城にしている冒険者らしい。


 冒険者と言えば、今年もエルヴィンさんやラインハルトさんが参加したらしい。予選は通過したが、本戦で2人とも優勝した人と対戦して負けたそうだ。

 子供達の引率役として観戦していたマルテが、エルヴィンさんに対して苦言を呈していた。

 あまり魔法の実力が変わってないって。

 以前魔法を教えていた者として気になるんだろうね。

 まあ向こうに時間が出来たら、また教えてあげたらいいんじゃないかな。

 最近は有名になったみたいで護衛の指名依頼で頻繁に国を出ているみたいだけど。




 6月、俺は競艇用船外機の改良に時間を費やした。

 競艇の事はなるべく考えたくないと思っていたけど、姉さんがどうしても今年は優勝するんだと言って聞かなかった。

 武闘大会では姉さんに我慢してもらった分、父さんも一歩譲って競艇への参加を許可した。

 出るからには今度こそ勝つと言う父さんの要請もあって、俺は船外機を改良した。


 まあ、家から一歩も出られず、調整はリオネラさん達に丸投げだったけどね。こっちの方も一歩譲ってくれればいいのに、とずっと思っていた。




 7月、ボーデンで競艇が開催された。

 結果、圧倒的な操船技術を見せて姉さんが優勝。

 去年と違って今年は第一王子を含めた王族が数名観戦した為か、流石に公爵家の好き勝手には出来なかったようだ。


 2着はヴルツェルの舟。去年俺達が作った舟から少し改良したそうだが、高速でコーナーに突っ込む姉さんの度胸には及ばなかったようだ。

 そして、公爵の船は5着に沈んだ。


 実は3着と4着の舟もダニエラさんの造船所で作った舟で、俺の船外機が搭載されている。


 偶然?

 たまたま?

 さあ、どうだろうね。




 8月、例年通り暑い夏だった。

 家の中に引き籠っていても暑いものは暑い。


 アイスで涼を取りながらぐでぐでしてると、村から緊急事態だと連絡が来た。


 去年村の各家庭に配った冷蔵庫の魔導具が次々と故障しているらしい。


 俺はすぐに新しい冷蔵庫を作って村に送り、故障の原因を探るために壊れた魔導具を回収した。


 冷蔵庫を分解して中を調べると、魔石の一部に亀裂が入り、ドワーフ言語の文字列を分断してしまっていた。

 ソゾンさんに診てもらうと、おそらく連続使用に耐えられず、魔石に負荷がかかって破損したんだろうと言われた。


 冷蔵庫は冷蔵機能が途中で途切れたら意味が無いから、魔石を2つ搭載し、どちらかが動いている時はどちらかが魔力を蓄えて休む構造にしている。

 動いている方の魔石の魔力が切れたら、休んでいる方が動き始める。1つの魔石にめいっぱい魔力を込めると約1日は稼働できるようにしているから、1日置きに動き続けるわけだ。


 高価な魔石を使えばもう少し寿命は延びるんだろうが、流石に今の謹慎状態で大規模にお金がかかる事は出来ないから、依然と同じ魔石で作り直した。

 安くて数が多い魔石を使うと冒険者ギルドから喜ばれるという理由もある。在庫処理が出来るから。

 冒険者がギルドへ頻繁に持ち込んで来る小さくて安価な魔石は大量に在庫が有り、割と手頃な値段で品質の良い魔石はいつも品薄。そして極稀に討伐される魔物の魔石は、高額過ぎて売れ残る。グランドブルーアイシャークの魔石なんかは普通は誰も買わない魔石だ。


 そんなわけで安い魔石に何度も何度もドワーフ言語を刻み続け、ついでに予備の冷蔵庫用魔石も沢山用意して村へと届けてもらった。俺が居なくても予備の魔石が有れば向こうで対応出来るはずだ。




 もうすぐ9月。漸く謹慎が明ける。


 謹慎明けすぐに村での誕生祭が待っている。


 時間が有り余ったから誕生祭用のプレゼントも既に手元にある。


 今年の誕生祭で祝われる子供は、今の所2人だ。去年みたいに急遽増えるかもしれないけど。


 1人は人族の男の子。今年もソゾンさんに立派な剣を作ってもらった。


 もう1人は獣人族の女の子。両親が特にこれと言った物では無く、子供の将来の為になる物をと丸投げして来たから、積み木にしてみた。


 立方体、直方体、円柱、三角柱と色々な形を作って、それぞれの形に四色の色を付けている。

 さらに面取りをして安全面にも考慮した。結構な数を用意したけど、マリーの魔法でちょちょいのちょいだったね。


 積み木は自由に組み立てて遊んでもらっても良いが、指示カードを10枚用意した。

 そのカードには積み木の完成形を載せてあり、お手本通りに同じ形を作ってみよう、と記されている。

 数種類しか使わない簡単な物から、作った俺でももう一度作るには戸惑う複雑な構図まである。

 遊びながら想像力を養えるんじゃなかろうか。役に立たなかったらごめんね。


 でも気に入ってもらえたらカエデ達にもプレゼントしようと思ってるから、高評価をこっそり期待している。

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