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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第5章
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第34話 俺はニコルさんの答えに賛同する

「ゲオルグの考え通りだとしたら、父親である王様にもエルフの血が混ざってるって事でしょ」


 忙しいからと帰りたがるニコルさんを無理矢理押し留め、アプリちゃんの件で相談に乗ってもらった。


 どうしてアプリちゃんにだけエルフの血が強く出たのか。

 なぜアプリちゃんは魔法が使えないのか。

 もしかしたら転生者かもと思いつつ、自分の考えを説明した。


 一緒に来ていた部下を先に返して嫌々耳を傾けていたニコルさんに、そんな事知るかと一蹴されるかと思ったが、話を聞いたニコルさんは少し時間を使って考えてくれた。

 考えた末に音量を落として、国王にエルフの血が入っている可能性を言及した。


 やっぱりそうなるよね。

 俺もそうじゃないかと考えていたんだ。


「ゲオルグが考えるように魔法を覚えるのに血が大事なんだとして、火魔法を覚えられないって事は火の遺伝子を受け継いでいないって事になる。母親であるマルティナ様からは木行の遺伝子を受け継いだとして、娘が火魔法の遺伝子を受け継がない為には、父親も火以外の遺伝子を持っている必要があるな。エルフ族の特徴が強く出たと言うのなら、父親からも木行の遺伝子を貰ったんだろう」


 ですよね。

 両親から木行の遺伝子をそれぞれ引き継いだ結果、アプリちゃんはエルフと同じように草木魔法から魔法を覚えなければならない体質になった。

 プフラオメ王子は火魔法が使えるから、火火か火木の遺伝子を持つという事だよね。


「1つずつしか受け継がないんだとしたらね。魔法が得意なアリーを見ていたら、五行全ての遺伝子を持っているんじゃないかと思うけど」


 確かに姉さんは規格外だもんな。俺の想像など軽く飛び越えて行きそうだ。


 姉さんが遺伝子をいっぱい持っているのなら、両親も2個以上持っている可能性が有るよね。

 土魔法が得意な父さんは土の遺伝子を、風魔法が得意な母さんは風魔法の遺伝子を持っているのかな。


「さあどうだろうね。遺伝子工学が発達してないこの世界では想像でしか話せないからね。まあ私が居た頃の地球でもまだまだ発展途上だったけど」


 珍しくニコルさんが前世の話をする。転生者だとばれたくないからあまり口にしないんだよな。今日はサービス精神旺盛な日の様だ。


 転生と言えば、まだ本人には確認していないんだけどアプリちゃんが転生者である可能性はどうだろうか。


「さあ、どうだろうね。転生者じゃなかったら面倒な事になるかも知れないから、その子が草木魔法を覚えられなかった時に、直接聞いてみたらいいんじゃない?」


 ニコルさんならすぐに食いつきそうな話題だと思ったけど、意外と冷静だな。まあニコルさんの言う通り無理に聞こうとせず様子を窺いますか。


「それよりも私は今、サクラに目を付けてる。こっそり英語で話しかけると反応してくれるんだよ。勿論今日もね」


 あ、それで上機嫌なのか。でも同じ家に2人も転生者が来る事ってあるのかな。


「ゲオルグは神様に気に入られているみたいだから、そういう事もあるかもしれないだろ。じゃ、私はこれで帰るから。また来月来るから大人しくしておきなさいよ」


 ああ、ちょっと待って。

 国王にエルフの血が流れている可能性については誰かに話しておいた方が良いと思います?

 両親からエルフの血を引いていると解れば、アプリちゃんの気持ちは多少楽になると思うんですけど。


「この国は人族至上主義の思想が少し残っているから、あまり歓迎されないだろうね。私には政治の話は理解出来ないから、男爵に話して意見を聞いてみたらいいよ」


 父さんもあまり政治の事が解ってるとは思えないけどな。どちらかと言うと商人よりの思考をしてるから。




 ニコルさんが帰り、アプリちゃん達のお迎えが来た後、俺は母さんに国王の血の件を相談してみた。

 俺はせめて国王とマルティナ様には話しておくべきじゃないかと思う。


「そう、エルフの血がね。可能性の話だからそれを何処まで話すかは難しい判断ね。とりあえず私からマルティナ様には話しておくわ。後はあの人が帰って来たらもう一度相談ね」


 まあそれでいいか。

 人族至上主義を掲げていた国の国王が混血だったなんて知ったら、色々おかしなことを考える人が出てくるかもしれないもんな。




「あ~、う~。わかった、国王と宰相には話しておく。2人とも頭は良いから、話を理解してくれると思うけど。それ以降の判断は国王達に任せるから、他には公言するなよ」


 数日後に我が家に顔を出した父さんに、エルフ族の血の件について話した。

 この前母さんからマルティナ様に話が伝わったけど、他には誰にも話してないよ。


「そうか、第三妃には伝えたのか。その件も報告しておく。それ以外にはもう広めないように」


 まあ俺は謹慎中で家から出られないから、広めようがないけどな。




 翌日早速父さんは国王に話しに行った。

 取り敢えず話の内容は理解してくれたようだが、公表はしないと言われたそうだ。

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