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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
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第24話 俺は姉さんを応援する

 落水事故から幾日か、年が明けて2月、姉さんが6歳になった。


 年始にはマギー様とシュバルト様の教会へ挨拶に行った。

 今回は神域に呼ばれなかった。お供物を持って行かなかったから、ではないと思いたい。


 姉さんは自分の誕生日に水魔法を披露してくれた。

 水球を出現させ自由自在に動かす。水球を触らせてもらうと、ゼリーの様なぷにぷにした感覚だった。水球の内部に手が入っていくかと思ったけど、最外部に柔らかい膜が張ってあるのかな。


 思いっきり叩いてみて、と言われたので実行してみる。


 ぶっ。


 叩いた瞬間水球は破裂し、周囲に水をまき散らした。間近に居た俺はずぶ濡れ。

 ああ、あれだ、水風船だ。懐かしい。


 膜は風魔法を応用しているらしい。強度も自由自在。膜が無くても水球は作れるが、あった方が面白いでしょと笑ってた。




 これで姉さんは火水風土の四属性と金属魔法を修得したことになる。

 誕生日に姉さんの成長を見た父さんは、魔力検査で1番になれるぞと喜んでいた。姉さんも絶対1番になると宣言している。


 魔力検査。

 3月に6歳児を対象にして行われる検査で、瞬間的に放出できる魔力量を測定する測定試験と、動く的に向かって魔法を使う技能試験がある。

 2つの試験で好成績だった者は、その年代で1番魔法の才能がある子として表彰される。

 1番にならなくとも優秀な成績を残した子は注目されて、明るい将来が待っているそうだ。


「今年は確か第二王子が出てくるでしょ。去年の首位は第一王子だった。今年も王族が強いんじゃない?」


 1番になれるぞと舞い上がっている父さんに、母さんが意見する。

 王子かぁ。確かに王族って特別な才能を持ってそうだよね。


「いや、大丈夫だ。総魔研の知り合いに聞いたんだが、第二王子はあまり魔法の授業に熱心じゃないらしい。せっかくクリストフさんが教えても意味がないってさ。その点アリーは魔法の練習が大好きだもんな」


 母さんの意見に反対した後、姉さんに抱きついて撫で回している。

 そうまけん、って何だろう。


「総魔研は総合魔法研究部門と言って、お城で魔法について研究しているところです。そこの現在の部長がクリストフさん。色々な魔法研究をされている優秀な方ですよ」


 マルテが教えてくれた。詳しいね。

 ただ名が知られているだけですよ、とマルテは言う。あまり深く聞いてはいけないような気がしたから、踏み込むのは止めておいた。


「検査まで後1ヶ月。魔力量はそう簡単に上がらないから、技能試験で好成績を残せるようにしないとな。よっし、これから父さんと特訓だ」


 父さんが右手を高く上げて宣言している。周りの大人達が残念そうな目で見つめている。俺もそっちに参加しよう。


「あ、大丈夫。もうどうするかは決めてあるから」


 姉さんが速攻で拒絶した。父さんは予想外だったのか固まっている。俺を含め周囲の人間は、さもありなんって感じだ。


「みんなと相談して決めたの。ちょっとだけ見せるね」


 姉さんはそう言うと、抱きついていた父さんを引き剥がし、魔法の準備を始めた。

 周囲の反応に気付いた父さんが、俺だけ知らなかったの?、とみんなに確認している。仕事で忙しかったからね、しょうがないね。


「おいで、スザク」


 姉さんが魔法を発動。掛け声とともに姉さんの目の前に出現した炎が膨れ上がり、破裂する。

 破裂した炎からは、羽と首を綺麗に折りたたんで眠っている様子の生物が現れた。


「クケェェェェ」


 眠っていた生物は鳴き声と共に覚醒、翼を広げて浮き上がり、優雅に羽ばたいて姉さんの左肩に着地した。

 それは嘴から長い尾の先まで真っ赤な鳥。四神の一体であり、五行思想では火の象徴とされる南方の守護獣、朱雀だった。


 昔から姉さんは魔法で動物の形を作るのが得意だった。年を重ねるごとにどんどん器用になっている。

 でも火魔法で体を作っているはずなのに、触れている姉さんに引火しないのは不思議じゃない?


「ほう、凄く綺麗だね。羽や尾まで上手に表現されている。風魔法をうまく使って鳴き声を出したり、自分に引火しないよう保護しているのも見事だ」


 おお、そう言うことだったのか。水球に膜を張っているのと同じ原理かな。

 さすが父様、と姉さんに褒められて、父さんは自慢げだ。


 サイズは操作出来るけど、今の朱雀の大きさは鳩くらい。俺の手にはちょっと大きいけど大人が両手で掴める程度の大きさ。羽根を広げるともっと大きくなるけどね、あまり大きいと姉さんの肩に乗れないから。


「あとは土の麒麟と金の白虎が完成している。これから水の玄武を作らないといけないんだ」


 姉さんは五行の絵本に描かれていた四神と麒麟をとても気に入り、自分の魔法にすぐ取り入れた。

 草木魔法が使えないから蒼龍だけ仲間外れなのは残念。


 試験には火水風土の四種を操作して挑むことが決まっている。四属性をマスターしているの大きな評価点になるらしい。

 それに五行思想を付け加える。火は朱雀、水は玄武。土は麒麟だが、一目では何の生き物か分からないと思うから金の白虎にした。動物図鑑に鳥、亀、虎は記載されていたから、多分審査員も理解出来ると思う。


 そして問題は風。風は見えない。そこで風切音を使って威力を表現することになった。母さんが風魔法が得意らしく、率先して姉さんに指導していた。その技術は朱雀の鳴き声に応用されている。


 なぜそこまで色々工夫するのかと言うと、試験には芸術性も評価されるからだ。

 技能試験は魔法の技術を見せる試験で、魔法の威力、速射性、連射性、多様性などを考慮した技術点がつけられる。そして公表はされてないが暗黙の了解として、芸術点が加算されるそうだ。

 その加点を狙ってみんな色々工夫するらしい。子供だけでは考えられないような発想を持って試験に挑む。もちろん、大人が知恵を出しているんだ。

 知恵を出しても試験をするのは子供達。知恵通りに魔法が使えるということは充分な技術を持っている、ってことで誰も文句は言わないらしい。


 うちでは姉さんの考えを優先したけどね。

 姉さんの考えを元に、みんなで意見を出し合って完成したのがあの朱雀。

 あとは玄武を完成させて、同時に四種の魔法を操れるよう訓練するだけ。


 魔力検査まで1ヶ月を切っている。姉さん、頑張って

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