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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第86話 俺は第二王子の政策に憤慨する

 生理食塩水を用意し、薄手の布で包んだ氷嚢を複数作り、更に室内を氷結魔法で冷やしてもらっていると、患者3人を連れた団員達が入室して来た。夫婦と女の子か。


 騒ぎを聞きつけて野次馬に来ていた団員の奥さん数人を呼び寄せ、患者の奥さんと女の子の服を脱がせてもらう。脱がせた部分には水を掛け、風魔法で風を送って冷ます。首筋と脇と足の付け根にはいっぱい作った氷嚢を配置する。


 指示を出した後、患者の旦那さんを連れて男性陣は別の部屋へ行こうとしたが、旦那さんが裸を見られるより離れ離れになる方が嫌だと訴えて来るからこの場に留まった。奥さんの隣で旦那さんも同様に服を脱がせ、風を送り、氷嚢を配置した。旦那さんも足元がおぼつかない状態だったがしっかりと意識があったため生理食塩水を飲ませ、エステルさん特製の栄養剤も口に含ませた。暫くして女の子も何とか自分で飲める程度には回復したから、肺の方へ誤嚥しないよう少しずつ慎重に口に運ばせた。


 3人の中では奥さんが一番重症だった。アンナさんに抱えられて王都から飛んで来たニコルさんに診察してもらって、漸く自分で生理食塩水を口に出来るようになった。暫く経過観察した後問題なさそうだと判断したニコルさんが王都へ帰る時、こっそり回復魔法を使った、これは貸しだから、とぼそぼそっと耳打ちしてきた。患者から診療費を取らない代わりに俺への貸しということにしたんだと思うが、人命が救えたんだから多少の貸しは気にしないでおこう。多少だよね?




 すっかり元気になり自由に動き回れるようになった旦那さんに、どうしてこうなったのか確認した。


 なぜこんな子供が、みたいな顔をしているから、男爵が不在の為男爵家長男である俺が責任者代行ですと名乗った。あ、そんなに頭を下げないで。


 どうやら夫婦2人はこの暑い中、朝からほとんど水を飲まず、子供に水を飲ませる事を優先したらしい。


 子供を優先する考えは素晴らしいが、なぜこんな暑い日に子連れで外に出たのか。出るのなら馬車を使った方が良かった。もしくはローブみたいなものを頭からすっぽりかぶって直射日光が当たらないようにするとか。


 俺の追及に旦那さんはあまり言いたくはないといった様子で、渋々その理由を話してくれた。


「私達がどうしても今日、子供を連れて住んでいた村を離れなければならなくなったのは、誕生祭のせいでした」




 ああ、イライラする。第二王子の意志なのか、それとも王子を取り巻く大人が悪いのか。ほんとにろくでもない話だった。


 この家族が住んでいた村は旧公爵領にあり、さらには男爵家が借り受けた領地内だ。男爵家の村から割と離れた所にあり、どちらかというと旧領都であるザフトや第二王子領の村へ行った方が近い位置にある。その村は男爵家には従わず、税金を第二王子へ支払っている村だ。もちろん、誕生祭での祝福も第二王子の所で行う予定だった。


 しかし、その誕生祭で問題が起こった。


 誕生祭の贈呈品を第二王子側で用意する代わりに、結構な金額を要求したらしい。贈呈品は男女貴賤の差無く同じで、第二王子の名が刻まれた特注の剣だとか。新しい領地に第二王子の威信を広める為なのか分からないが、両親の子供に対する思いを無視した愚策だと思う。せめて無料で提供するというのなら褒める所もあるが、損に目を瞑れない程子供の数が多かったんだろうか。


 しかし、この金額を支払えない人達が居た。


 旧公爵領の農地を耕す小作人達だ。農地の多くは各村に2人か3人居る豪農が所有し、そこの畑を耕す雇われ農民達。

 少ない給料で税金等を払って切り盛りしていた所に、贈呈品の金銭負担。払えないと村長に直談判したら借金してでも払えと迫られたそうだ。娘の大事な誕生祭の贈呈品に剣は要らないと粘ったら、それならこの村から出て行けと追い出されそうになってしまった。


 そこで行き場に困った時に、以前父さんが領内に広めた情報を思い出したらしい。


 借家の荷物を僅かな金銭に換え、村長に村を出て行く事を伝えると引き留められることも無くスムーズに送り出された。男爵家の村の場所を正確に教えたのは、村長の最後の良心だったのかもしれない。


 だが出発してしばらくすると背負っていた子供が夏の日光にやられ、子供に水を飲ませていたら奥さんがふらつきだし、ついに最後は旦那さんも力尽きてしまったそうだ。

 団員達が割と遠くまで見回りをしてくれていてよかった。これもマルテが飛行魔法を教えた成果だね。




「それで、その。急な話で申し訳ないのですが、私達家族をこの村に住まわせては頂けないでしょうか」


 奥さんと子供が回復したのを見届けた旦那さんが懇願する。


 断るつもりはない。誕生祭の贈呈品もこちらで用意しよう。でも一応こう言わざるをえない。


「俺は領主代行なので、念の為父に確認を取ります。返事が帰って来るまで村の宿でゆっくり休んでください。滞在費はこちらで負担しますので気にしないように」


 俺はすぐに団員に依頼し、王都の冒険者ギルド経由でグリューンに連絡してもらった。




 父さんの返事は勿論入植オッケーだったため、この3人家族を村に迎えた。空き家が無いから当分は宿生活になるけど。


 更に父さんは団員達を動かし、こっそり領内の各村を回らせ、誕生祭の金銭負担に悩んでいる家族を勧誘した。結果2家族が話に乗って移住してくれた。


 急な話だが子供達には罪は無い。誕生祭をしっかり祝ってあげられるように準備を急がないと。

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