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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第81話 俺は薬草学の本を貸し出す

 古本屋で数冊の本を購入した翌朝、学校に通うために村から飛んで来たエステルさんに薬草学の本を見せてみた。子供達に見せる前に、専門家から見てこの本の内容が正しいのか確認しておきたかったから。


「これは、著者ルシアン、ですか。ちょっと待ってくださいね、中を見てみます」


 パラパラと本を捲るエステルさんの肩越しから、興味を持った姉さんが覗いている。知ってる知らないと毎回耳元で声を出されるのはさぞ煩かろう。


「私も知らない草花が有りましたが、知っている物の内容は全て正確でした。私の知識より更に深く書かれているので、私も勉強になります。流石ルシアンといった所ですね」


 本の内容にエステルさんは太鼓判を押してくれたが、流石と言われても作者の事は全く知らないから賛同できない。ルシアンさんというのは有名なエルフなんですか?


「ルシアンは私の大叔父の名で、子供の頃から草木の知識に関しては右に出る者は居ないと言われていた方です。私が産まれるずっと前に、世界の植物を見て回りたい、と宣言して出て行き、今も行方不明かつ生死不明だそうです。このルシアンがその大叔父ならこれくらいの物は書き上げるでしょうし、もしこれが偽名でルシアンの名を語っているとしても、ルシアンの名に恥じない内容だと思います」


 なるほど。少し古い本だから、ルシアンさん本人かも知れないよね。後ろの方に書いてある薬草の調合にも目を通してもらったけど、調合が不得手だったかどうかはエステルさんも知らないようだ。


 もう一度頭から、今度はじっくりと読み進めようとするエステルさんに、そろそろ時間ですよとアンナさんが声を掛ける。

 学校に行くために本を手放すのを躊躇したエステルさんに、この本を一日貸してもらえませんかと頼まれてしまった。

 まあいっか。暫くエステルさんに預けておこう。その本は村で子供の教育に使う予定だから、読み終わったら村に置いといてくださいね。


 俺の了解を聞いたエステルさんの笑顔を見送った後、俺はエステルさんに桃の苗木について聞こうと思っていた事を思い出した。あぶないあぶない。アンナさんが見送りから帰って来たら、聞いてもらうよう伝えておこう。マリーも忘れないように覚えといて。




 剣はソゾンさんに依頼した。桃の苗木はまだこれから。魔導書の類は購入出来なかった。誕生祭用の贈呈品はまだ3分の1しか目処が立ってない。


 メーチさんの言う通り、魔導書は自分で作った方が早いかもしれない。でも魔導書って有名な魔導師が書いてあるから価値があると思うんだ。魔力を高める方法とか、水魔法を練習する方法とか、そんなものは名も無い人間が書いても誰も共感してくれない。姉さんが書いたのならともかく、俺が書いてもなぁ。


「それなら団員達も知っている魔導師の言葉を、ゲオルグ様が集めて本にしたらどうですか?」


 マリーが突飛な事を言ってくる。知ってる魔導師って姉さんとかマルテとか?


「そうですね、火魔法は母が良いでしょう。土は男爵、金属はソゾンさん、草木はエステルさんが適任かと。アリー様には、何を頼むか難しいですね。水魔法は魚人族の親方か、エマさんに」


 ああ、エマさんね。そういえば最近会ってないな。ニヤけてません、足を踏まないでください。


「ドワーフ言語の本は作らないんですか?」


 踏み降ろした足を持ち上げながらマリーが話題を変えた。そういえば昨日もこの話をしたな。


 ドワーフ言語も作って置きたいんだけど、先ずは希望に応えて魔導書かな。


 今日は図書館に籠って魔導書の類を読み漁ろう。何年か前に読み込んだけど新しい本もあるみたいだし、どのように書かれているのかもう一度しっかり見直して、本作りの参考にさせてもらうぞ。




 アンナさんにエステルさんへの伝言をお願いし、俺は図書館を訪れた。


 あ、今日はメーチさんへの用事じゃないんで大丈夫です。はい、暫くはお酒を持って来ません。ご迷惑をおかけしました。


 もう。昨日俺が帰ってからメーチさんは何をやらかしたんだよ。おかげで軽く怒られたじゃないか。今度持ってくるとしても、コップ一杯くらいにしようかな。




 マリーとルトガーさんにも手伝って貰い、俺は夕方まで魔導書を読み漁った。どういう内容が書かれているのかを持参した紙に箇条書きして、後で傾向を纏める予定だ。


 主に書かれている内容は著者が実践した練習方法。そして師匠から受け取ったという訓示。魔物討伐や戦争で魔法を使った経験。よくよく考えたら魔導師の日記だなと思い、少し笑ってしまった。


 基本的に火水風土の四属性が掛かれている。金属魔法は土魔法に含まれ、偶に氷結魔法をマスターしている魔導師が本を書いていたが、草木、雷撃、重力魔法は言及されていなかった。まれに光魔法、闇魔法、時空魔法など聞き慣れない言葉も出て来たが、大概そう言う魔法はそれを書いている著者本人しか使用していない物だった。


 そういえば雷撃魔法だって全然知られてないよな。草木魔法はエルフで、重力魔法はドワーフ族が使っているみたいだけど、俺が知っている雷撃魔導師はドーラさんしかいないし、魔導具に関しても通信用の魔導具でしかお目にかからない。ドーラさんはどうやって覚えたのかな。誰かに教わったんだろうか。村を出て行って3カ月以上たったけど、今はどのあたりだろうか。もう海を渡ったのかな。


 マリーに注意されるまで、俺は手を止めてドーラさんの事を考えていた。

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