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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第68話 俺は競艇の街に移動する

 7月になり孤児院からやって来た子供達もふっくらとしてきた。もはや傭兵団の子供達と変わらぬ食事をし、同じように運動と勉学を励んでいる。


 父さんと正式に話をしたユリアーナさんとクリストフさんは1年間衣食住を担保する代わりに労働で返すことを契約した。もちろん子供達は働かせない。


 ユリアーナさんはマルテから魔導具の使い方を習い、フライヤーやトースターを使い熟して宿の炊事を担っている。競艇開催が近付き造船所の従業員も2号舟の耐久試験を続けているから、子供達の世話以外にも宿の仕事は無くならない。宿屋の新女将として、傭兵団の奥様方と連携して頑張ってほしい。

 子供達もそのうち宿暮らしを卒業する事になるだろうが、いまのところ造船所の人しか使っていない宿だからな。暫くの間従業員の控室と少しの客室を占拠するくらいは問題無いだろう。学校に通う年齢になればきっと寮に入るはずだからな。


 クリストフさんは今やエステルさんを師と仰ぎ、温室での仕事を楽しんでいるようだ。流石にお城で仕事をしていた知識人なだけはあって、傭兵団の方々がギブアップした難しい薬草達にも対応出来ているとエステルさんが褒めていた。出来れば薬の調合まで出来るようになってエステルさんの負担を減らしてほしいが、調合はまだやらせず見学させているだけらしい。

 それよりも先に草木魔法を教えるんだとか。しばらくは植物を触りながら、草木魔法の感覚を教え込んでいくそうだ。姉さんの影響か、エステルさんも人族が草木魔法を使える事に疑問を感じていないな。


 孤児院の子供達にはドワーフ族の子が居るが、アンナさん経由でソゾンさん夫婦からドワーフ族の教育指針を確認して来てもらった。

 土魔法を教えた後に鍛冶を仕込むことで大きな間違いは無いらしいが、人族や獣人族とは体格が異なるドワーフ族に戦い方を教えるのなら同じドワーフ族の戦士から習った方が良い、との助言を頂いた。必要なら戦い方を教えてくれるとも。年を取っても若い者には負けんわとソゾンさんが意気込んでいたらしい。

 ドワーフの子供達には希望するなら王都でドワーフ族の戦い方を学べるよう取り計らうと伝えたが、今はまだ他の子供達と離れたくないというので村に留まっている。時間が取れたらまたソゾンさんに村に来て貰おうと父さんと話し合った。




 そんなこんなで新しい村の仲間達を見守りながら、俺は自分のやるべき仕事を頑張った。


 姉さん用の舟の調整作業だ。


 相変わらず全速力で舟を乗り回す姉さんに対して、少しだけ最高速度を抑えて曲がりやすくした船外機に交換してみた。お気に召さなかったようで、すぐに苦言を呈されてしまったが。


 安全性を求めた結果だと説明したんだけど、我がお姉様は最高速度を求めて首を縦には振らなかった。

 水流の噴出速度を高めて加速力を上げてみた物もダメだった。姉さんの中では何よりも最高速度が大事らしい。


 リオネラさんと相談した結果、船外機は最高速度中心の使用に固定し、舟の方を弄ることで旋回性能を高める事を追求していった。


 競艇参加の仮登録を済ませた後もそれは続き、7月16日に舟はリオネラさんが用意した川船に乗せられ先ずは王都へ運ばれた。

 王都の造船所で一泊した舟は、村では出来なかった細かい部分の点検と修理に1日を費やし、翌7月18日、ボーデンに向かって出発した。


 途中の街で1泊した後、7月19日の夜に舟はボーデンに到着した。俺達の他に何隻もの舟が集まって来ていて、屋台も立ち並び、道端で大道芸人が人を集め、既にお祭りが始まっている事を感じさせられた。


 父さんは姉さんを連れて競艇参加の本登録をする為に、競艇開催本部となっている公爵邸へ向かって行った。この後係員が登録番号を持って舟の仕様を調べに来る予定だ。俺はリオネラさんと一緒に係員の到着を待つことにして、一緒に来ていた子供達を遊びに行かせた。団長を含めて数人の傭兵団員が子供達の世話を担当しているからそれほど危険な事も無いだろう。本当は全員で来たかったけど村を無人にする事は出来ないからな。居残りになってしまった人達には何かお土産を買って行こうか。




 父さん達と一緒にやって来た係員が舟のサイズ測定を行っている。


「リオネラさんは本戦の日だけ飛んでくるって言ってましたよね。明日アリー様が負けたらどうします?」


 緊張している俺を和ませようとしたのかマリーがからかってくる。

 大丈夫大丈夫、この日の為に頑張って来たんだから予選くらいで負けることはないよ。姉さんが操船を間違えて壁に激突しない限りね。


 サイズ測定以外はたいした審査も無く舟の登録も終わり、明日の予選組み合わせが決定した。


「え、予選から爺さんと対戦?」


 係員から手渡された組み合わせ票を見た俺は、思いがけない組み合わせに唖然としてしまった。

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