第67話 俺は村の案内を続ける
村の子供達が学ぶ魔法教室はお昼前まで続けられる。
剣術よりも時間を取っているのはこの国にとって大事なイベント事である魔力検査の為だ。魔力検査を終えてからは、剣術が好きならジークさんに習う時間にしても良いと伝えてある。ジークさんも暇そうだから、誰か習ってくれると嬉しいんだが。
俺?
俺はドワーフ言語の研究に忙しいから、剣術の時間を増やす暇は無いかな。
昼食後は休憩時間。
まあお昼寝の時間だ。寝る子は育つ。体を休ませるのは大事なことだ。
俺はこの時間を使ってユリアーナさん達を村の各施設に案内した。
各施設と言っても、水路、池、倉庫、温室、竹藪くらいしかないけど。水路の向こうには少しずつ畑が広がり始め、山林も整備が進んでいる。建築作業は止まっているが、成長し続けている村を案内するのは気持ちが良かった。
休憩後の14時からは勉強の時間。
読み書き計算を学ばせていて、いずれは教科書的な何かを用意したいと思っている。そしてこの時間の為に、計算を教えるのに便利な道具、そろばんを全員分作った。
商人や役人はアバクスという俺の知ってるそろばんとは違う物を使っているようだ。父さんに聞いても使い方がよく解らなかったから、俺の知っているそろばんを作った。珠をスムーズに動かす機構に苦戦するかと思ったけど、姉さん達が草木魔法で簡単に作ってくれた。姉さんがそろばんに乗って家の廊下を走り回っているのを見た時は、どの世界の子供も同じ事をやりたがるんだなと思わされた。
子供の中には勉強が好きな子も嫌いな子も居るが、皆そろばんで計算するのは気に入ってくれた。そろばんでチャンバラをやっていた過去の俺も見習うべきだな。
勉強の時間は姉さんが帰って来るまで続く。
だいたい17時から18時くらいに戻って来る。夕食まで姉さんの魔法を見学したり、一緒に舟に乗ったりして遊んでいる。エステルさんは温室に籠って忙しくしているけど。
夕食後は家族の時間。
仕事を終えた両親と仲良く過ごす。明日も朝が早い。今日学んだ事を両親に話しながら、ゆっくり体を休める時間。
「だいたいいつもこんな感じで1日が終わります。子供達は仕事せず、体力作りや勉学を行わせています。新しい子供達もこの流れで生活することになると思います。ただ、此処にいる子供達より少し年齢が上なので、行う内容は少し上級な物に変える必要があるとは考えています」
夕食を終えた後、ユリアーナさんとクリストフさんを男爵邸に招いて、子供達の教育について話をした。
「しかし、衣食住の費用は自分達で稼がないと」
ユリアーナさんが現実的な意見を言って来るが、俺はそれを否定する。
日中アンナさんが王都で仕事をしている父さんから今後の方針を聞いて来てくれたから、それに則って話を進める。
「今、この村に住んでいる傭兵団の家族にはそれらを無料で提供しています。そのうち畑や山で採れた物が売れるようになり一定の収益を見込めるようになるまでは、男爵家が負担すると決まっています。子供達は暫くは宿屋で寝起きしてもらう事になりますが、急に来たとはいえ、就学前の子供から金銭を徴収するつもりはありません」
俺の言葉を信じられない様子のユリアーナさんに、明日父が帰って来たらもう一度話を聞いてみてくださいと伝えた。まあ一応父さんに確認したとはいえ、子供の口からだとにわかには信じられないだろうな。
「子供と違って村に居る大人達は、衣食住が無料な代わりにそれぞれ仕事に従事しています。畑仕事、山林の管理、王都間の輸送部隊などなど。ユリアーナさんとクリストフさんにも村に居るなら何か仕事をやってもらうことになりますが、お2人は村に定住する予定でいいんですよね?」
俺の質問に2人は首肯する。
「ユリアーナさんは宿で子供達の世話する事が主な仕事になると思います。炊事洗濯掃除、20人の子供達の面倒を見るのは大変だとは思いますが、他の人も手助けしてくれるでしょうから頑張って下さい。クリストフさんは職歴を生かして、魔法教室の先生か、勉学の先生を担当して欲しいんですが、他に何かやりたい事はありますか?」
「そうですね、エルフ族の温室には興味を引かれました。出来ればそれらの先生を担当しながら、温室にも係われるといいんですが」
温室に入った時に明らかにテンションが上がっていたからな。夕方もエステルさんの仕事ぶりを見学していたようだし、そう言うとは思っていた。
「今まで何人も薬草管理を挫折していますので、それを出来るようになるとこちらも助かります。今は調合室で薬を作っていると思いますので、邪魔をしないよう明日の朝エステルさんに相談してみましょう」
調合室に行こうと腰を上げていたクリストフさんを急いで制した。今調合室に行くと絶対に俺が怒られるので止めてください。勝手に入るのもダメです。それだけは守って下さいね。




