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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第59話 俺は久しぶりに第三王子と会話する

 武闘大会が終わってジークさんの控室で落ち込んでいる俺の下に、第三王子が護衛と共にやって来た。


 他の王族と共に観覧席に座っていた王子は豪華に着飾った衣装のままで現れ、先ずは優勝者のジークさんに祝辞を述べた後、俺の方に向き直った。


「ゲオルグ君お久しぶりです。また何か活躍したと耳にしていますよ。流石ですね」


 そんなに褒められたことはしていないし、そんなに目をキラキラとされて困る。どちらかと言うと今は毒殺未遂事件の事をあまり触れて欲しくない。俺が落ち込んでいる空気を察してほしい。


「何か凄い舟を作ったと兄から聞いてますよ。いつか機会があったら僕もその舟に乗せてくださいね」


 あ、そっちか。そっちね。ごめんごめん。ちょっと嫌なことがあってね。

 でも6月中には耐久試験が終わってヴルツェルの爺さんに売り渡されるから、それまでには村に来て貰わないと。


「ああ、それは残念です。この大会が終わったら王都を離れて、すぐに領地内の村々を回ることになっているんですよ。漸く与えられた領地に行くことが出来るので、ドキドキしているんです。ゲオルグ君は男爵領の村に行ったことがありますよね。その時はどんな感じでしたか?」


 明日の未来に胸をときめかせている王子の質問に、そう言えば新しく作った村以外では旧公爵領内の村には行ったことが無いなと思い至った。旧領都のザフトですら立ち寄ったことが無い。

 俺は随分前にグリューンへ初めて行った時の話や、新しい村を作り始めた時の話を少し大げさに膨らませて王子に話した。マリーも止めなかったからこれくらい大げさに言っても大丈夫だろう。


「そうですか、やはり僕も何か新しい事に挑戦した方が良いんでしょうか。兄は村に温室を建てると言っていましたが、僕は王都内で人気になっている揚げ物調理の魔導具を各村に広める事くらいしか考え付きませんでした」


 ソゾンさんが第三王子からは魔導具の注文が来ていると言っていたな。そっか、フライヤーを買ったのか。食の多様性を提供するのも悪くないと思うが、油が高価だし、あの辺りは港もないし畜産もあまりやっていないはずだ。野菜の天ぷらは美味しいけど、魚や肉が無いのはちょっと寂しいと俺は思う。


「僕もあのトンカツという食べ物が大好きです。確かにあの辺りは穀倉地帯ですから、お肉やお魚はどこかから運ばなければなりません。あ、今月頭から王家直属の冷蔵輸送部隊が発足して、もう動き出しているんですよ。その部隊を少し借りられないか交渉してみるのも良いですね」


 おお、話が早い。ヴルツェルの爺さんが重力魔法の言霊を独占する代わりに、氷結魔法の言霊を王家に広めると言っていたからな。もう部隊を変遷出来るほど言霊の使い手を集められるとは流石王家だな。


 そうだ、王子の領地は王都のすぐ北側だったな。5月頭に馬車で王都へ帰って来た時に感じたクレームをぶつけてやろう。


「なるほど、王都の北門で立往生を。それは大変でしたね。しかし王都へ入って来る人や物を調べるのは大切な仕事です。検問を緩める事は出来ないとしても、何か対策を考えたいですね」


 今後氷結魔法の言霊が民間にも広まったら輸送部隊数は絶対に増える。重力魔法の言霊が解禁されたらきっともっと増える。馬車の中で渋滞を待ち続けるのは勘弁してほしい。

 検問を担当する役人の数を増やしてもらうのが手っ取り早いが、ちょっと違う切り口での解決策を提案してみた。


「あ、その案は面白いですね。北門より手前に休憩所を作って、其処で順番待ちをするんですね。整理券を配って、門の役人と魔導具で通信できるようにして。通信用の魔導具、手に入るかなぁ」


 魔導具は何とかしますと王子の護衛が安請け合いをしている。俺も通信用の魔導具は作ったことが無い。ソゾンさんの手が空いたら聞いてみようかな。


 整理券を売買する人間も出てくると思うけど、それを禁止にするかどうかは判断に困るよね。高い金を払ってでも先に行きたいって人は絶対居るはずだから。整理券の順番を無視する優先券を作っても良いとは思うけど、不満が出ないような金額にしないとな。


「休憩所には食事処や御手洗を用意して、宿泊施設は、そうですね、急がない人はそこで一泊してくれるかもしれません。乗合馬車をそこで降りて、歩いて王都へ向かう人もきっと出てくるでしょうから、あまり王都から離れていないところに作るのが良いですよね。乗合馬車の停留所も作って、馬も飼えるようにして。ははは、あまり大掛かりになるといつか王都の一部として吸収されちゃいそうですね」


 俺のクレームをきっかけにして王子が次々と自分の考えを掘り起こしていく。


 街ってこうやって広がっていくんだな。王都西門の向こうにはヴルツェルの爺さん達が作った港もあるし、いずれそれも王都の一部になるだろう。いずれは門の外に定住する人が増え、住宅地が出来、その外側に新たな壁と門が作られるのかもしれない。

 しかし、今まではどうして誰も休憩所見たいな施設を作らなかったんだろうな。


「戦争が終わって人口が増えているようですし、何より物の輸送量が増えたから、馬車の数が増えて渋滞するようになったんだと思います。それに前領主は公爵ですから、行列に待たされてイライラしたことなんて無かったんじゃないですか?」


 そういう言い方をすると俺が堪え性の無い人間みたいじゃないか。きっと公爵が横入りしてたんだろ。


「ははは、すみません。では僕はこれで失礼しますね。休憩所の件は何とか頑張ってみます。助言ありがとうございました」


 逃げるように王子が帰って行った後、マリーが俺に向かって、漸く笑顔になりましたねと言って笑っていた。

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