第18話 俺は禁書に興味を持つ
図書館の奥で禁書の棚を見つけた。
ものすごく見に行きたいけど、その棚がある部屋に入るだけでも不味いかな。マルテにもダメだと言われた。
ちょっと係員を読んで、閲覧していいか聞いてみよう。
「申し訳ありません。その部屋は普段閉め切っていて閲覧どころか入室も禁止なんです。もう、メーチさん、開館時間は扉を開けっ放しにしないでくださいってお願いしましたよね。問題があったら私が責任を取らされるんですから」
対応してくれた人族の係員がドワーフ族の係員を叱っている。やっぱりダメだよな。
「ほほほ、ジメジメした空気が嫌だと本が言っておったからの。そんなに見られたくないなら、燃やしてしまえばいいんじゃ」
ドワーフのメーチさんがした過激な発言。確かに禁書なら大事に取っておく必要はないように思う。
「例え禁書でも、後世に残すことは意味があるんです。自分は内容を全部覚えているからって、無茶言わないでください」
え、すご。
「定期的に読み返しておるからの。ペトラ嬢もやれば覚えられるじゃろ」
「私の担当は実用書の棚なんです。禁書の何倍あると思ってるんですか。本の題名と大まかな内容は覚えてますけど、全て暗記するのは無理です。本の暗記は出来るのに、嬢って呼ばないでって何度言っても覚えないのはどうしてですか」
ペトラさんとメーチさんの言い合いが始まった。最初は音量を抑えていたが段々と大きくなり、他の係員が2人の仲裁に入った頃には館内に声が響き渡っていた。
仲裁に入った係員に謝罪されたけど、あなたは悪くないです。ペトラさんとメーチさんが悪いんです。
正気を取り戻した2人からもきちんと謝罪された。
解散する前に、メーチさんに質問があるんですけどいいですか?
禁書の内容を把握しているメーチさんなら何か面白い意見をもらえるかもしれない。
「ええぞ、なんでも聞け」
「禁書の内容はダメですよ」
メーチさんにしっかりと口止めをして、ペトラさんは仕事に戻って行った。聞ける範囲で聞いてみるか。
「みずまほうをおぼえる、いいほうほうはないですか?」
言葉足らずだった部分をマルテが細くする。5歳の姉が水魔法の練習をしているのですが、上手く出来ません。図書館の係員として何か良い方法を知っていれば教えてください。
「ふむ、魔法は想像力だと言うことを理解しているかね?図書館にある多くの魔導書は文字ばかりで、5歳の子供がしっかりと理解するのには時間がかかるじゃろう。それよりは挿絵がある絵本の方が頭に入りやすい。君たちはもう既に、手掛かりを掴んでいる筈じゃ」
うーん、はっきりと伝えてくれない。禁書に関係することなんだろうか。
絵本には何もなかったと思うけど、もしかしたら貸出中なのかな。
もうちょっと具体的に教えてほしい。
「ではもう少しだけ。魔法の属性を色で表現する、例えば火を赤と考えると、水の色はどうなるかの?」
「あおですか?」
俺は青と思う。マルテとマリーも異論は無さそうだ。
「ふむ、それも一つの答えだが、ある禁書には別の色が描かれておる。昔の人が書いた禁書だが、儂もその内容は納得できた。理解出来たら、魔法を格段に上手く使えるようになったんじゃ」
青じゃないのか。それなら透明?
「ほほほ、その手掛かりは既に掴んでおると言ったじゃろ。これ以上言うと禁書の内容を言ったも同じじゃから、あとは自分達で考えい」
そう言ってメーチさんは禁書を置いてある部屋に入っていった。扉はきちんと閉じられ、最早こっそりと覗き見る事も出来ない。最初に見つけた時に入っておくんだったと後悔。
だいぶ時間を使ってしまった。そろそろ帰る時間だ。もう一度絵本の棚を見て回る時間は無い。しょうがないから魔導書の中から1冊選ぼう。
マリーはもう絵本を選んでるよね。マルテはどうする?あ、料理本にするの?いいね、俺にも見せてよ。
3人が1冊ずつ借りて図書館を後にする。また後日朝から図書館に籠って本を漁ってやろう。
うちに帰って晩御飯を食べたら早速マルテに読んでもらう。
俺が借りてきたのは『四属性を修得するために』だ。姉さんだけじゃなく自分の役にも立つかなと思って。
うーん、ダメだ、面白く無い。論理的に魔法について語っているんだと思うが、言葉遣いが難しい。聞き慣れない言葉に頭が混乱する。一緒に聞いていたマリーはすぐに飽きて、1人で遊んでいる。俺ももう限界。10分くらいで終了してしまった。ごめんマルテ、噛み砕いた内容だけ、後で伝えて欲しい。
耳直しにマリーが借りた絵本を読んでもらおう。
え、なにこの絵本。俺、この本チェックしてないけど。
あ、マリーが最初からずっと持っていたからか。それは盲点。
タイトルは、『五行に基付く色使い』
え?何これ。木々が青いけど。幹も枝も葉っぱも青。
土は黄色。原色の真っ黄色が眼に痛い。
木々の間を縫って流れる川は、真っ黒。
水は、黒?
こ、これだああああ。




