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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第56話 俺は休憩時間の演武に見惚れる

 武闘大会各部門の準決勝が始まる前に、姉さんがもう一度場内に登場した。


 参加者達が休憩する間のインターバルを姉さんが埋めるらしい。うちに頼り過ぎじゃないかとも思うが、姉さんは目立てて嬉しそうだし、父さんは依頼料が懐に入って嬉しそうだし、これはこれで良かったんだろうな。


 模範試合とは違い、今度は姉さん単独で、魔法の演武を行った。

 内容は五行の魔法で作った四神と麒麟の舞。

 5体が自在に生き生きと空中を飛び回る姿は壮観だった。姉さんが魔力検査で披露した時は肩に止まれるくらいのサイズ感だったが、今は姉さんが難なく乗れるほどの大きさが有り、姉さんの成長を感じさせられた。


 更に蒼龍や白虎、麒麟に子供の希望者を乗せて空中散歩を演出していた。落下の危険を恐れて親から止められる子供達も居たけど、見ているだけでも楽しそうだったし、良い暇つぶしになったと思う。跨ると火傷する朱雀と濡れる玄武は寂しそうに独りで空を飛びまわっていたけどね。


 魔力検査で姉さんの真似をしたローゼマリーさんのように、これを見て体験した子供達もきっと姉さんの魔法に憧れるんだろうな。真似るならせめて違う形の生き物を作るよう指導しよう。それぞれの個性を大事にしないとな。




 姉さんの演武中に多くの観客が食事やトイレ休憩を済ませ、30分ほど経ったところで準決勝が行われた。

 因みに食事には男爵家の他に爺さんや東方伯も絡み、結構な規模で競技場内に売り子を配置し、軽食や酒を販売して儲けていた。ニコルさん直伝のハンバーガーとフライドポテトを俺達も購入したがとても美味しかった。闘技場の外には屋台も多く立ち並び、誕生祭並に盛況だったそうだ。


 戦士の部の準決勝は剣士対剣士、拳士対拳士の戦いだった。ジークさんの相手は南の国からやって来た剣士らしく、ジークさんと制限時間を目いっぱい使って斬り合っていた。あのジークさんの本気に付いて行けるとは相当な実力者だが、誰が見てもジークさんが攻めている割合が多かったため南の剣士は判定で負けてしまった。悔しそうにしながらもジークさんと握手をして会場を去る姿に、観客からの拍手が鳴り止まなかった。


 エルヴィンさんは準決勝で敗北してしまった。相手は老齢に差し掛かった男性で、お城の総合魔法研究部門で部長を務めた事があると言う優秀な魔導師だった。

 お互い足場を攻撃するのは面白くないと思ったのか、風魔法や水魔法等色々な工夫して相手を台から落とそうと試みた。が、エルヴィンさんの若さ溢れた勢いのある魔法を、相手が老獪に受け流し、隙をついてはエルヴィンさんに小さな風魔法を何発も当てていた。

 たたらを踏みながらも何度か踏みとどまっていたエルヴィンさんだったが、最後には連続で風魔法を受け、台から叩き落されてしまった。準決勝敗北は残念だが、以前のエルヴィンさんよりも成長した姿を見られて、俺は嬉しかった。


 混合の部ではヴェルナーさんが何とか勝利を収めて、準決勝は終了した。俺の知り合いで決勝に残ったのは2人。ジークさんは順当と言っていいが、まさかヴェルナーさんも此処まで勝ち残るとは思わなかった。ヴェルナーさんの分も投票券を買っておけばよかったかな。まあヴェルナーさん達が参加している事に気が付いたのはジークさんに全額賭けた後だったけどね。




 決勝戦の前に再度インターバルが挟まれた。今回は姉さんじゃなく、ギルドが手配した舞踏集団による演武が行われた。集団で息を揃えて剣を振りまわす姿に暫く時を忘れて見惚れてしまった。姉さんが魔法で見せた演武とは違う凄さがあるね。


「美人ばかりでよかったですね」


 隣で一緒に見ていたマリーが変な事を言ってくる。俺は演武をしている人達が全員美人だから見惚れていたんじゃなくて、剣技が素晴らしかったからでな。さて、決勝戦が始まる前にトイレに行ってこようかな。




「いいか、それにこの毒を塗って確実に相手を斬りつけろ。お前が決勝戦に出るとは思わなかったが僥倖だ。これまで何度も命令に背いて来たお前だが、今後お前の母親が無事で居られるかはお前の行動に掛かっている。もう、裏切るなよ」


 トイレから席に戻る途中、曲がり角の向こうから何やら不穏な話が聞こえてきた。何も聞いてないフリをして顔を見てやろうかと覗き込んだが、もうそこには誰も居なかった。


 決勝戦で相手に毒を盛る密談。いったい誰が。ニコルさんには首を突っ込むなと言われるだろうが、流石にこのまま放置は出来ない。

 斬りつけるとなると戦士の部か混合の部の出場者という事になるが、ジークさんは除外。ジークさんの対戦相手も獣人族の拳士だから違う。そうなるとヴェルナーさんとその対戦相手か。


 2人に話しに行くか?

 いや、もし先に毒を盛る側に当ってしまったら、俺の身が危ない。今日は剣も種も持って来ていない。俺は丸腰では戦えない。


 よし、先ずはジークさんに話をして、その後は警備を担当しているギルド職員にも伝えよう。


 そう決めた俺は、ジークさんの控室を探して走り出した。

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