第17話 俺は図書館で本を探す
マギー様に姉さんの水魔法が上手くいかない理由を聞いてみよう。
「魔法を使うには想像力が大切だ。想像力で魔力元素を動かして創造するんだ。しかし、無から想像するのは難しい。想像には知識と経験が必要だ。だから子供よりも大人の方が魔法は得意だと言える。桃馬の姉さんに足りない物はそういう物だ。急がずにもう少し大人になるまで待てばいい」
まあそうなんだろうが、必死に頑張ってる姉さんに諦めろって言いづらいじゃないか。何か良い案はないですか?
「水を理解するために魚人族から教えを請うってのは悪くないと思うぞ。魚人族の水に対する考え方は人族と異なるからな」
うん、方向性は間違ってないと。自分では考えられないことを、他人の知識から吸収する。ということは俺の前世の知識も役に立つ?
「その知識を姉さんが理解出来たら役に立つだろう。ただ基礎学力の無い人間に水分子の話をしても、理解を得られないとは思うが」
なるほどね。姉さんが理解出来そうな範囲で、新たな知識を与えられるよう考えてみよう。
「他に無ければそろそろ回線を切るぞ」
長々とすみません。ありがとうございました。また聞きたいことが出来たら教会に行きます。
「そうだな、教会から来てくれるとお供物も受け取れるから助かる。じゃあな、窒息には気をつけろよ」
さらっとお供物を要求していった。まあ良いけどね。
命にも魔力にも呼吸って大事なんだな。気を付けよう。
姉さんを手助けするためには、俺にも知識が必要なのが分かった。前世の知識を活かすためにも、もっとこの世界のことを勉強しなければいけない。
ということでマギー様と話した数日後、王立図書館にやって来ました。もちろん1人では外出出来ないので、マリーとマルテも一緒に。
うちにある絵本は全部読んだ。いや、正確には読んでもらった。残ってる本は難しくて子供が読む内容じゃないらしい。
もっと学ぶために本が欲しいと強請ると、図書館で借りようという話になった。
うちからそんなに離れていないということで歩いて移動。晴れた日の散歩は気持ちいい。
しばらく歩くと、高さは無いが横幅が広い建物が見えてきた。お城や教会と比べると質素な造り、あれが図書館か。本は沢山集まると重くなるから、低い建物なんだろうな。
図書館の入口にある受付で手続きをする。マルテが昨日役所まで取りに行った住民証明書を3人分提出する。王都の住民じゃないと本は借りられないらしい。
住民確認が終わると初期登録料を支払い、ネックストラップが付いているカード型の魔道具を受け取った。これに貸出記録が残るらしい。再発行料がかかるから無くさないでね、と言いながら受付のお姉さんが首にかけてくれた。
登録料とは別に、入館毎に手付金を預ける仕組みらしい。本を破損したり紛失したりすると、その手付金から支払われるようだ。館内での閲覧と本の貸出のどちらにも適用され、問題無ければ返金される。本は大事にしないとね。
手続きが無事に終わったので入館し、近くにあった案内板を見る。文芸書や実用書など色々なジャンルに区画が分けられている。とりあえず児童書の棚に行こうか。専門書のコーナーに魔導書の記載もあったから、そっちも見に行きたいな。
静かな空間に紙とインクの匂いが広がっている。うん、悪くない。いろいろ見て回って、何を借りるか吟味しよう。
流石に図書館でマルテに本を読んでもらう訳にも行かないから、小声でタイトルだけ教えてもらう。絵本はタイトルと中の挿絵を見ると大体内容を理解出来る。片っ端から手に取っては近くの机で内容を確認していく。
取っ替え引っ替え本を運んでいる俺とは違って、マリーはじっくりと絵本を見つめている。もう気に入った本を見つけたのかな。
それなりに数はあったけど絵本の内容は寓話的な物が多かった。子供に教訓を与える系の本。そうじゃなくて魔法に関わる内容がいいんだけどな。まだ帰る時間じゃないよね、絵本は諦めて魔導書の棚に行きたい。マルテとマリーを呼んで移動する。ごめんねマリー、その絵本は借りて帰って家でゆっくり読もう。
魔導書の蔵書量は絵本の数倍はある。これはタイトルを読むだけでも大変だ。マルテごめん、お願いします。
どれも分厚い本だから棚から取り出すのも一苦労。棚にしまってある状態のまま読むために、マルテに抱っこしてもらう。
『魔法の基本』、『魔力の高め方』、『種族差による魔法の得手不得手』、『四属性を修得するために』、『氷結魔法と雷撃魔法』、『エルフは回復魔法を使えるのか』、などなど。
時間をかけてなんとか全てのタイトルを読んでもらった。大体タイトルで内容が分かった。本当は全部読みたいんだけど、さて、何を借りようかな。
「こっちにもあるよ」
マリーが声を上げた。最初の方は俺達について来ていたのに、飽きたのかいつのまにか歩き回っていたようだ。マリーが呼んでいる方に行ってみる。
開けられた扉の向こうに本棚が見える。雰囲気が違う空間。照明が薄暗く、埃っぽい。普段は人が立ち入らない場所みたいだ。
「禁書、貸出禁止」
棚に大きく描かれた文字をマルテが読んでくれた。
禁書と言われると、ちょっと覗いてみたい。




