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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第45話 俺は疼く好奇心を抑え込む

 俺達が空を飛んで造船所に着いた時、そこは煌々と魔導具の灯りが燈されて人々が往来し、日の出前とは思えない程の賑わいを感じた。

 その賑わいに何となく違和感を感じ、着陸せずに上空で待機していた俺達を視認した造船所の従業員が、動き回る人達の邪魔にならない所へ着地するよう誘導してくれた。


「なんか日中より人が多く感じますね。なにかあったんですか?」


「ちょっとしたボヤ騒ぎがありまして。火災はすぐに発見出来て大きな被害は無かったんですが、普段は全く火の気の無い所からの出火でしたので放火だと判断し、王都警備隊に連絡して来て貰ったところなんです。少し出発が遅れると思います。申し訳ありません」


 放火って。確かにそう言われると焦げ臭い匂いが漂っている。何が燃やされたんだろう。まさか新型舟が狙われたりしたのかな。


「リオネラさんが作った舟は大丈夫なんですよね」


「あれは大丈夫ですよ。対火性もバッチリなんで。造船所が焼け落ちても、あの舟だけは残りますよ」


 従業員のお兄さんがちょっと怖い例えをしながらも自信有り気に答えてくれた。きっとリオネラ派の人で一緒に舟を作ったんだろうな。


 俺達は現状を確認した後お兄さんに誘導され、いつもの造船所の隣の建物へと移動した。中に入ると見た事のない人族のおじさんがダニエラさんやリオネラさんから話を聞いていた。


「では恨みを買うような心当たりは無いということだな。後に何か思い出すことがあれば警備隊事務所まで連絡してくれ」


 どうやら犯人の情報を集めているようだけど、ちょっと偉そうな態度の人だ。警備隊の上の方の人なのかな。

 その人はダニエラさん達との話が終わった所で俺達の存在に気づき、こちらに話を振って来た。


「こんな時間に子供がうろつくとは、何か危険な香りがする。さては放火犯だな」


 おいおい、急に何を言ってるんだ。この人大丈夫か?


「その人達は先程話した仕事仲間です。依頼されて作った舟があるのに放火するはずないでしょ」


 ダニエラさんが俺達と警備隊の間に立って庇ってくれた。


「それならそうと先に年齢や見た目も詳しく説明しておいてもらわないと。では我々は他の従業員から話を聞くとしよう」


 犯人扱いした俺達に謝罪する事も無く警備隊は出て行ったが、すれ違いざまに何となくこちらを睨みつけられた気がした。う~ん、あんまり仲良くなりたくない人だな。


 少しだけ気分を害した俺にダニエラさんが頭を下げて来た。


「面倒なことに巻き込んでしまってすまない。警備隊への対応が終わるまでもう少しかかるから、ここでゆっくりしていてくれ」


「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、何を燃やされたんですか?」


「造船所とは別の倉庫に保管していた材木が一部燃やされた。今日は試運転のお蔭でいつもより早く住み込みの従業員達が働き出したから、幸い倉庫が全焼する前に消火できたけどな」


「態々倉庫内に侵入して材木に火を付けたんですか?」


「犯人もまだ捕まってないから理由は解らないけど、侵入したは良いが金目の物が無かったから放火したんじゃないかと警備隊は考えているようだ。こちらとしては燃やされたのが榧の材木だったから、あえて高価な榧を狙った嫌がらせじゃないかと思っている」


 榧って、リオネラさんが新しい舟に使ったあの高価な材木か。

 もしかして競艇の邪魔を。

 そう言いかけた時、ダニエラさんが先に発言して俺を制した。


「リオネラが舟を作ると偶に嫌がらせを受けるんだ。リオネラがやる気を出した舟の性能は同業者なら皆知っている事だからな。きっと今回も、仕事を奪われるとか馬鹿な事を思った連中の仕業だろう。こちらの問題だからゲオルグは首を突っ込まず、今は休んでおけ。寝不足なのかマリーと2人で酷い顔をしているぞ」


 そう言った後ソファーに座るよう指示された。

 おっと、ニコルさんに注意されたばかりだったのにまた好奇心が疼いてしまったか。

 俺が依頼を出さなきゃボヤ騒ぎも起きなかっただろうと思わなくもないが、首を突っ込むなと言われてしまっては仕方ない。ソファーに座ってゆっくりしていよう。


 冷たい風に当って眠気を覚ましたつもりだったが、柔らかいソファーに凭れ掛かった俺はものの数分もしないうちに眠りに落ちてしまっていた。




「あ、ようやく深い眠りに落ちてくれましたね。若い時に睡眠時間を削ると体に良くないですよ。おかげさまで妹さんを助ける事が出来ましたので、その後報告に。ではごゆっくりお休みください」




 夢の中でアマちゃんに会った気がした。話の内容はよく解らないけど、俺の体を気遣ってくれているようだった。珍しい事もあるもんだ。今日は雷雨になるかもしれないと夢の中の俺は考えていた。

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