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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第43話 俺はニコルさんに怒られる

 日が沈みかけた頃、姉さんとエステルさんが村へ帰って行った。

 それに伴いこの食事会もお開きとなる。もう少し飲んでいくと言う大人達は置いといて、俺達家族と王子、それにニコルさんが席を立った。


「ゲオルグ君のお蔭で面白い事になりそうなの。ありがとう」


 鷹揚亭を出る前にエマさんに声を掛けられた。手を取ってお礼を言われたことで舞い上がってしまい、話の内容を詳しく聞けなかったのが心残りだ。


「ではゲオルグ君、武闘大会でまた会おう」


 エマさんの笑顔を見て固まっている俺に苦笑しながら、王子は護衛の人達と共に先に出て行った。

 王子に続いてニコルさんが、少し話があるから歩きながら話そう、と声を落として話しかけてきた。そんな感じで言われるとちょっと怖いんですけど。

 エマさんに奪われていた意識をがっつりニコルさんに持っていかれ、俺は慌ててニコルさんについて外に出た。


「また色々やっている見たいね。患者さんが噂をしてるわよ。貴族の中に男爵に近寄ろうと考えている人が増えているみたい」


 貴族で働いている使用人が不満の捌け口として診療所で溢していくらしい。うちの使用人達はやってないよな。不満があるなら聞くから、余所で男爵家の内情を暴露しないように注意しておかないと。


「男爵家にはこれからエルフの薬を卸してもらう予定だから一応報告しておくけど、第二王子の一派は男爵家のことを随分不満に思っているそうよ。リリーが動けない今、何かやってくるかもしれない。アリーにも学校であまり派手な事をしないよう注意したけど、貴方も気を付けてね。男爵家が潰されると私も困るから」


 特に何か悪巧みの計画が持ち上がっていると言う話では無く、不満が溜まっているから導火線に火をつけるような行動は慎むように、との助言だった。

 妊娠中の母さんは俺達を護るより自分の体やお腹の子供を護らなきゃいけないし、父さんは村での仕事に追われている。ドーラさん達も国を離れて助けを求められない。自分で事態を解決する力を持たない俺は、助けてくれる人が居ない間は大人しくしておいた方が良い、と。


 確かにニコルさんの言う通り。今回もまた深く考えずに行動した結果、大きな魔石を買った話が広まってしまった。買うしかなかったとはいえ、売店のお兄さんに口止めくらいはしておけばよかったなと後悔している。


「そんなに落ち込んだ風に見せたって、明日になったらどうせ忘れるんでしょ」


 何度も同じような注意をされているからな。ニコルさんも呆れているけど同じ転生者仲間として言わずにはいられないようだ。わかっているんだけど、ついね。つい、体が動いちゃうんだよ。何か良い薬はないかな。


「エルフの薬にもゲオルグの物忘れを治せる薬は無いよ」


 でしょうね。なんでこんな性格なんだろう。前世からこんな感じだったかな。すぐに調子に乗る性格は前世から改めたはずだ。マリーはどう思う?


「さあどうでしょう。好きな女性の事になると視野が狭くなる性格だとは思います」


 そんなことないし、質問の答えになってないし。


「あとは、割と積極的に色々な事に首を突っ込む性格ですね」


 なにその批評。好奇心旺盛ってことですよとマリーが付け加えるが、絶対に良い意味で言ってないよね。ニコルさんには暫く好奇心を封印しなさいと言われてしまった。ま、まあとりあえず競艇用の舟を作らないといけないから、それは許してほしい。それが終わったら、ね。


 他にも俺の行動について色々な噂話を聞くとぼやくニコルさんに対して、母さんが口を開いた。


「ゲオルグは私に似て風魔法が得意だから、風の便りが耳に届くのは仕方のない事なのよ」


 母さんだけが俺の味方だよ、ありがとう。

 実際には魔法を使えないけど、新風を巻き起こすとか風の便りとか、そういった表現を使って俺の話をする時、母さんは俺の事を風魔導師だと言う。俺もそう言われることが好きだ。魔法が使えなくても母さんの子供だという事を強く感じられるから。


 ゲオルグは優しくしても伸びない、厳しい環境に置いた方が良く育つタイプだとニコルさんに言われたが、俺は植物か。もっと褒めて美味しい水をくれないと、腐っちゃいますよ。




 それからしばらく、ニコルさんと母さんの話を聞いていた。主に産まれてくる子供の事と、少しだけ俺の教育方針を。

 家路の途中でニコルさんと別れ、俺達家族だけになった時。


「ニコルはああ言うけど、私は子供達には自由に生きて欲しい。私も両親の思い通りには育たず自由に生きてきた。仕事も、結婚相手も、子供の名前も教育方針も。だからゲオルグも好き勝手やっていいのよ」


 母さんだけじゃなく、父さんも割と自由に行動しているよな。姉さんに至っては言わずもがなだし。


「でも、1つだけ大切にして欲しい事があるの。今日、ゲオルグの誕生日を祝って色々な人が来てくれた。私達夫婦が動けなくてもきっとあの人達が貴方を助けてくれるわ。これからも人との繋がりは大切にして欲しい」


 確かに今日のメンツはなかなか一堂に会さないだろう。俺1人の力で繋がった人脈ばかりではないが、今はもう俺の知り合いと言っていい人達だ。母さんの言う通り、良い関係を保って大事にしていくと宣言した。これは忘れないように気をつけたいな。

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