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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第29話 俺は舟作りに動き出す

 昼食を食べ終わった俺達は店主にくれぐれも口外しないようにと厳命して店を出た。ここの店とは今年の誕生祭でも連携して屋台を運営するだろうから、きっとこちらとの仲を損ねるような行動には出ないと信じているよ。


 店を出た俺達は親方に連れられて、それほど歩くことなく、とある建物の敷地内に入った。川沿いに建てられた結構な敷地面積を持つ大きな平屋の建物。親方は近くに居た魚人族を捕まえて責任者は何処だと聞いている。教えてくれた魚人族にお礼を言って俺達は、一番大きな建物には入らず、それに隣接しているプレハブの様な小さな建物の中にずかずかと入って行った。


「ダニエラは居るか?」


「はいはい、居るよ。狭い部屋でそんなにデカい声で喋るんじゃないよ」


 親方の声に反応して部屋の奥から出て来たのは、親方と変わらないほどの大柄な魚人族だった。捲り上げた袖から出ている筋肉は、どんな物でも軽々と持ち上げられそうな印象を受ける。やや暗い紺色の髪は短く切り揃えられていて、凛々しい表情にとても似合っている。そして服に隠れていても目立つ豊満な胸が、ダニエラさんは女性であると物語っている。


「ダニエラは此処の船大工達を取り仕切っている魚人族だ。いい女だろ。俺が後20年若ければ放っておかなかったんだが」


 そう。ここは船を作る場所。親方自身も船を作る事はあるが、素早く正確な船を作る船大工を紹介してくれるというので、ここに足を運んだんだ。

 隣の大きな建物が造船所だろう。こちらの小さな建物は事務所か、それとも従業員の控室か。来客用と思われるちょっと豪華なソファーとテーブルが並んでいるから、ここで商談とかも行うんだろうな。


「孫まで居るクソ爺が何言ってんだよ。奥さんに言いつけるぞ」


「おお、それは困った。じゃあ俺は退散するぞ。帰る前にまた船着場に寄ってくれ。じゃあなゲオルグ」


 自分で面倒な感じにしておいて、ダニエラさんの怒声を聞いた親方はスタコラサッサと逃げ帰ってしまった。単純に仕事に戻ったんだと思いたいが、このちょっと重たい空気をどうしてくれるんだ。


「で、お客さん達は何の様で此処に?」


 ダニエラさんは機嫌の悪さを隠そうとせず、ソファーにドカッと腰を下ろす。ダニエラさんから対面に座れと手で指示され、俺とマリーはソファーに腰かけた。アンナさんはその後ろに控えている。


「初めまして。フリーグ男爵家長男のゲオルグ・フリーグと申します。今日は船着場の親方から船大工を紹介されて此処に来ました。よろしくお願いします」


 俺に続いてマリーとアンナさんも自己紹介を済ませる。


「ああ、今話題のフリーグか。勝手に大規模な水路作るから川の水位が変わったと川下の貴族が不満に思っている、と最近噂になっているフリーグな」


 え、そんな噂が?

 親方も船着場の他の魚人達もそんな話を教えてくれなかったけど。


「川下と言うが作った水路から下流はもうシュテンゲル川だ。あの大河の水位が変わるほどの物ではないと魚人族は皆理解している。実際に近くまで見に行った奴もいるしな。だが、そこまで川に詳しくない人族には効いているんじゃないか?」


 は、はあ。親方達は意味の無い噂話だと理解して触れないでくれたのかな?

 そんな親方達とは違ってダニエラさんは態々フォローしてくれたようだ。どうやら優しいところもあるみたいで安心した。


「で、要件は水路で使う舟作りか?」


「いえ、今日来たのはフリーグ家からの依頼と言うより、俺個人からの依頼でして。今年の7月にボーデンで開催予定の競艇に使う舟を一緒に作って欲しいんです」


 それまでソファーに深く腰掛けて背凭れに寄りかかっていたダニエラさんが、競艇と聞いた瞬間前傾姿勢に身を乗り出した。


「そうか、今年はやるのか。その競艇に一枚噛めるってことだな。これから作る舟が競艇に採用されるとなると、かなりの利益を見込めるな」


 あ、ダメだ。きちんと説明しないと。ダニエラさんがぶつぶつと皮算用を始めてしまっている。ちょっと話を聞いてください。




「なるほど。フリーグ家と公爵家の勝負かつ、船外機作りの師弟対決か。売れるかどうかは勝敗次第って事だな。まあそれは分かった。魔導具の調整の為に早くから舟を用意したいのも分かる。だが競艇の内容が詳しく決まる前から舟を作るのは金の無駄になると思うぞ?」


 ダニエラさんはこの造船所を取り仕切っているからかお金の事が気になるみたい。豪快そうな見た目には似合わないなと思うのは失礼かな?


「競艇に使われなくても舟の製造や魔導具の調整に関わった技術は残ります。技術をお金で買うと考えたら安い物ですよ」


 お金を掛けて作った舟が爺さん達の作るルールの範囲外になってしまったら勿体無いとは俺も思うよ。でももう開催予定まで2か月を切っているからね、出来る準備は進めていかないと間に合わない。


「まあこちらは金さえ払って貰えれば十分だ」


「あ、出来れば競艇の事は暫く伏せてもらえると助かります。今月中には詳細が公表されるまでは他言無用でお願いします」


「残念ながら舟作りは1人では出来ない。何人もの人間が製造工程に関わっている。極力この造船所から漏らさないようにさせるが、噂好きのバカはどの人種にもいるんだぞ」


「わかりました。極力、でお願いします」


「では奥に行くぞ。我が造船所の天才設計士を紹介しよう」


 ダニエラさんに促されて席を立った。天才とは大きく出たな。姉さんみたいな自由奔放型の天才が居たらどうしよう。

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