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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
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第15話 俺はお祭りを最後まで楽しむ

 お祭りの残り2日間は楽しかった。


 当初の予定通り4日目はゆっくり休むつもりだったけど、姉さんがみんなを引っ張り外へと連れ出した。まだまだ遊び足りないらしい。


 お祭りは4日目でもまだ客足が絶えず、どこも賑やかだった。串を手に持っている人が多いが、クレープや芋を食べている人も見かける。


 俺はもう神さまへのお供物でお金を使いすぎたから好き勝手購入できなかったけど、姉さんとマリーが一口ずつお裾分けしてくれた。


 3日間連続で通ったジャム屋さんの近くを通ったら声をかけられた。


「普段は売れ残るのに今年は完売したよ。ありがとう」


 なぜかお礼を言われた。お供物用にいっぱい買ったからかな。


「じゃむ、おいしかったです」


 こちらこそと頭を下げた。来年もまた買いに来よう。




 5日目は立ち並ぶ屋台の雰囲気が変わった。甘い物を売っているお店が減り、代わりにお酒とおつまみを提供する店が増えた。多くの屋台が、屋台2店舗分のスペースを使って、テーブルとイスを用意している。

 最終日だからかお土産を売っている屋台もあった。王都の近隣の村から来ている人がターゲットなのかな。


 17歳で死んだ俺はお酒の味が分からない。小さい時に父さんのビールをひと舐めさせてもらったことがあるが、苦くて苦くて、これを美味しそうに飲む父さんが信じられなかった。


 売られているお酒はビールとワイン。産地によって屋台が分かれている。その産地特産の食べ物でおつまみを提供しているみたい。お酒を飲まずにおつまみを食べるだけでも美味しそうだ。


 お酒を売っている屋台の前を通る度に、ジークさんがマルテに怒られている。一杯でいいからというジークさんにダメだというマルテ。俺もおつまみを食べたい。料理目当てで姉さんと一緒にジークさんの援護にまわった。マルテごめんね。


 なんとかマルテを説得して、席が空いている屋台をようやく見つけた。人数が多いとこう言う時に困る。

 見つけたお店は、魚人族の店主が魚介料理とお酒を提供する屋台。この国では魚はあまり人気が無い。店主が普段経営しているお店も、魚人族の労働者しか来ないって言ってた。魚、美味しいのに。


 白身魚の塩焼きとスープを頼んだ。お酒はジークさんと母さんが。

 刺身や煮付けはなかったけど、白ワインを使った貝の酒蒸しがあった。食べたかったけど大人達に止められた。お酒はダメだって。残念がっていると店主が貝を焼いてくれた。こりこりとした食感で美味しかった。

 焼き魚も脂がのっていい感じ、スープもしっかりと魚の出汁が出ていた。基本的に味付けは塩か。醤油や味噌があると幅が広がるのにね。

 ジークさんが大事そうにお酒を飲む姿は可笑しかった。誰にも止められない母さんは2杯目を注文していた。


 その後も色々お店を見てまわった。こっそり醤油や味噌を売ってる店が無いか探してみたけど、残念ながら無かった。お土産を売る店に調味料も置いてあったけど、塩、胡椒、香草、お酢に油、そんなところ。醤油や味噌の製造法なんて知らないから自分では作れない。この世界のどこかで日本からの転生者が作ってくれていることを願うしかない。




 このお祭りの最後は王様の挨拶で締めくくり。でも屋台は閉まらず、夜通し飲む人達もいるらしい。挨拶の場所は初日と同じ場所。俺達もお城の横の広場に行って挨拶を聞いた。


「これから産まれてくる子供達を大事にしよう。2歳に達していない子供達を皆で見守ろう。2歳を過ぎた子供達よ、次の節目は6歳の魔力検査だ。そこでまた元気な姿が見られることを願っている。子供は宝だ。大人達よ、これからも宝を皆で守っていこう」


 王様の挨拶は広場からの盛大な拍手で締めくくられた。王様も笑顔で広場にいる人達に手を振っている。


 隣で姉さんが、魔力検査頑張る、と息巻いている。そうか、姉さんは次の誕生日で6歳だった。

 俺は4年後。魔力検査ではどういうことをするのか、今から楽しみだな。


 こうして誕生祭は幕を閉じた。ジークさんは俺達を屋敷まで見送った後、お祭りの屋台に行くと言って消えていった。しょうがない人だね、とマルテは呆れていた。でもマルテも母さんもアンナさんも一本ずつお酒を買っていたから、今晩は宴会だろうね。みんな、今まで育ててくれてありがとう。もう少し大きくなったら、美味しいおつまみを作ってあげよう。




 お祭りが終わって1ヶ月ほど経ち、父さんが帰ってきた。帰りも護衛の仕事を受けてきたらしい。


 久し振りに会ったら、思いっきり抱きつかれた。約2ヶ月ぶりだけど、ちょっと過剰じゃない?


 1年間の溜まった仕事をお祭り前後で消化するから、こんなに時間がかかるんだ。もっと定期的に行けばいいのに。


 父さんが帰ってきたから、絵師を読んで家族の絵を描いてもらうことになった。応接間に姉さんが小さい時の絵が飾ってあるけど、あれは姉さんが誕生祭を過ぎた時の絵だったみたい。


 せっかくだからとマリー家族とアンナさんも入れるようお願いした。


 応接間にある両親と姉さんが描かれた絵の横には、俺を含めて4人になった家族の絵が飾られている。


 そして俺の部屋には宝物が3つ飾られている。

 姉さんから貰ったナイフ。

 誕生祭で貰った剣。

 そして総勢8人になった家族の絵が、綺麗な額縁に収まっている。

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