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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第26話 俺はお尻が痛くなる

 4月末日。

 名残惜しくも建設部隊とソゾンさんが帰路に就く。

 今日は学校が休みでやることが無いと言う姉さんが朝から張り切っていた。エステルさんとマリーも同様だ。

 爺さん達は帰っても良いけどクロエさんは残って欲しい。しかし、ヴルツェルには大事に育てていた畑があるからと言われると、これ以上クロエさんを引き留める事が出来なかった。せめて王都まではと俺も少しの荷物と一緒に馬車に同乗した。序だから王都での予定も済ませようと思う。


 村を去っていく馬車隊は、この村にやって来た時とは比べ物にならない速さで、新しく出来た街道を駆け抜けていった。激しい揺れによってお尻が痛くなった頃には、重力魔法を広めるんじゃなかったと後悔が押し寄せていた。




 姉さんが重力魔法の言霊を開発した翌日から、爺さんは帰路の為に言霊を皆で覚えようと練習した。

 流石はフリーグ家の当主、建設部隊の中では爺さんが一番に使えるようになった。それでも10日以上は掛かっていた。爺さん曰く、目に見えない重力を意識するのが難しいらしい。姉さんですら言霊を作るのに5日は掛かっていたはずだから、10日とちょっとで覚えられたのは優秀と言っていいんじゃないだろうか。


 爺さんの他には建設部隊の中で2人、傭兵団員の中ではアヒムさんが、重力魔法の言霊を覚える事が出来た。アヒムさんは氷結魔法の言霊も簡単に使い熟せていたから、傭兵団の中では圧倒的に優秀な魔導師だね。もちろん男爵家の関係者は俺とジークさんを覗いてマスターしていた。


 村に滞在している建設部隊の馬車数は7台。馬車に重力魔法を掛けて村を出るに当って、ソゾンさんを含めても4人では数が足りない。そのため王都までは男爵家から人を貸すことになった。そこで名乗りを上げたのが姉さんとエステルさんとマリーだった。


 王都からこの村に到着するまでは馬車で1日半かかったが、重力魔法を駆使して1日で移動する。途中で野宿することなく王都に辿り着けるならかなり有用だ。

 と思ったが、実際に乗ってみるとかなり辛い。馬車が軽くなったことで馬が速度を上げる。速くて軽い物体はちょっとした段差でも大きく跳ね上がる。我が村が新しく整備した街道ではとても調子が良かったが、一歩街道から出ると快適さは微塵も感じられなかった。


「速くなるのは良いがここまで揺れるとなると考えものだな。壊れ物は運べないし、戦場に着いた兵士がフラフラでは戦えない」


 お昼の休憩中に爺さんがそう溢した。現在はザフトの街を越えて王都へ南下する街道を少し進んだ辺り。計画通りこのまま進めば、日没前に王都へ到着出来るだろう。このままの速さで進めば、だけど。


「馬車を改良しないと大変な事になるね」


 流石に馬車に乗り慣れた面々は乗り物酔いをしていないようだったが、俺のお尻はもう限界を迎えている。


「ゲオルグは馬車の改良も出来るのか?」


「出来ないよ。競艇が終わったらソゾンさんに教えてもらおうかな」


「そうか、では儂からも話を聞いてみるか」


 休憩が終わるまで爺さんはソゾンさんと馬車の改良について話し合っていた。現在ソゾンさんが抱えている依頼が終わったらまた相談する事になったみたい。王都で誕生祭を迎える子供達の剣も作らんといかんし、本当に休む暇が無くなったとソゾンさんはぼやいていた。




 休息を終えて再開した地獄の馬車旅は王都に到着するよりも前に終わりを迎えた。夕方の城門前に入都手続きを待つ馬車が行列を作っていたからだ。どんなにこちらの馬車が速くてもここで追い抜くのはマナー違反。今回は建設部隊も王都に入る。村で資材を放出してスペースが空いている馬車に王都でしか手に入らない商品を満載し、帰路の街で売りながら帰るそうだ。さすが商売人。

 列が進むのを待つ馬車の中で暇を持て余していると、姉さんが別の馬車から飛んで来た。


「私とエステルはこのまま村へ帰るよ。エステルが明日の朝も薬草の世話をしないと心配だからって。一緒に帰るなら抱えて飛ぶけど、どうする?」


 そうか、エステルさんは外泊出来ないんだ。


「俺は久しぶりに母さんの顔も見たいし、明日王都でやりたいことがあるから。エステルさんには面倒な仕事を押し付けてごめんって謝っておいて」


「エステルが心配性なだけだから大丈夫だよ。じゃ、また明日ね」


「あ、2人で移動したらまたアンナさんに怒られるよ」


「はいはい、ちゃんとアンナを呼んでくるから心配しないで。じゃあね」


 そう言い残して姉さんは馬車から飛び立って行った。本当に大丈夫なんだろうか。


「ちゃんと城門の方に飛んで行ったから大丈夫だと思いますよ。ゲオグル様も心配性ですね」


 姉さんの行方を目で追っていたマリーにそう断言された。姉さんに関しては心配しすぎるくらいが丁度良いと思っているんだが?




「ただいま」


 はあ、やっと王都の男爵邸に着いた。王都に入って来る馬車ってあんなに多いんだな。俺も姉さんに引っ付いて先に入都した方が良かったな。


「おかえり。久しぶりに見たらちょっと背が伸びたかしら」


 屋敷に入ると早速母さんが出迎えてくれた。お腹の子を気遣ってか、普段よりもそっと優しく抱き寄せて。

 俺も久しぶりに会えて嬉しいよ。会ってない間に色々あったんだよ。姉さんから聞いてるかもしれないけど、俺の話も聞いてよ。

 母さんの体に障らない程度に、夜遅くまで母親に甘えて過ごした。

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