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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第24話 俺はクロエさんの言霊を聞く

 言霊の実演を終えて金属魔法を解除したマリーの左腕には、元通りのブレスレットが装着されていた。

 その金属製のブレスレットが無いとダメなのかな?


「何もない所に金属を作り出すのは初心者には難しいので、何か金属が有った方が良いんですよ。幸いクロエさんはブレスレットを持ってますからね」


 マリーに言われてクロエさんがブレスレットを掲げて見せる。何年か前に姉さんがクロエさんにプレゼントした奴だね。水魔法を込める為の鉱石が付いている特製ブレスレットだ。


「じゃあクロエもやってみようか」


 姉さんに促され、クロエさんが皆から離れる。

 目を瞑って深呼吸し、気持ちを落ち着かせている。クロエさん、頑張って。


「寒空に、清らかな白、ひらり舞う。我が身を護れ、其は拳なり」


 左腕のブレスレットを右手で握りしめ、力強く、言霊を発する。


「剛拳」




 何も起こらない。マリーの時の様な発光は勿論無く、クロエさんのブレスレットにも変化は無い。

 クロエさんの両目に少し水が溜まってきている以外は。


「クロエ、大丈夫だよ。もう一回やろう。次はきっと出来るよ」


 姉さんがクロエさんの左手を取り励ます。ブレスレットにも手を触れて、優しく応援する。


「このブレスレットには私の力が籠ってるから。この子がクロエを助けてくれるからね。もう一度落ち着いて、ヴルツェルの雪の白さを思い出して、マリーのお手本を想像して。一度見た事がある物は何だって作れるよ。さあ、もう一度、大きく息を吸って」


 2人が目を瞑って深呼吸を始める。姉さんが掛ける号令についついこちらも合わせてしまう。皆で息を吸って、ゆっくりと吐く。


 何度か繰り返した後、姉さんが静かにその場を離れる。

 クロエさんが1人で深呼吸を繰り返した後、意を決したように眼を開く。


「寒空に、清らかな白、ひらり舞う。我が身を護れ、其は拳なり」


 もう一度、頑張れ。

 応援するこちらにも力が入る。


「剛拳」


 クロエさんの左腕が薄く発光する。マリーの時とは輝き方が異なるけれど、確かにブレスレットが反応した。

 光を失った左腕には、元のブレスレットより幅の広い腕輪が手首をがっちりと覆っていた。


「で、できた。途中で止まっちゃったけど、出来ましたよね」


「うん、クロエが金属魔法を使ったんだよ。頑張ったよ」


 悔し涙を嬉し涙に変えて喜ぶクロエさんを姉さんがギュッと抱きしめる。

 姉さんと目が合った。近寄って声を掛けようとした俺に、何も言うなよと目が訴えている。はい、黙っています。


「じゃあもう一回行こうか。ブレスレットを元に戻すからちょっと待ってね」


 姉さんがパパッと魔法を使い、元の形状に戻す。そして改めて、ブレスレットに手を触れた。


「魔法を使った感覚を忘れないうちに、さあもう一度」


 今度はふっと息を一回は吐いただけで、クロエさんは詠い始めた。




 次は何回目だろう。日が沈んでも、クロエさんは詠い続けた。数を重ねるごとにブレスレットが少しずつ手袋へ成長し、姉さんの力で元に戻る。何回かに一回は、ブレスレットが輝かなかったが、それでも諦めずに詠い続けた。


 いつの間にかギャラリーも増えていた。建設部隊の方々が火魔法を使って暗い周囲を明るく照らす。傭兵団の獣人族が最前列でクロエさんの成否に一喜一憂する。皆で夕食を食べるのも忘れ、クロエさんを応援した。


「さあ、クロエ。今日はこれで最後だよ。そろそろクロエの魔力も無くなりそうだからね。頑張ろう」


 姉さんがクロエさんを送り出す。今度はブレスレットを元に戻しただけで、触らなかった。


 副団長を含めた獣人達が声援を送る。皆の声に背中を押され、クロエさんが大きく息を吸う。


「寒空に、清らかな白、ひらり舞う」


 副団長が拳を握りしめ、途中から一緒に詠う。何度も聞いて皆もう覚えてしまった。


「我が身を護れ、其は拳なり」


 獣人達だけじゃなく、見学者全員で合唱する。


「剛拳!」


 今までで一番眩しい光が、クロエさんを包み込んだ。




「あのクロエさんの魔法は、どこからどこまでがクロエさんの実力なの?」


 もみくちゃになりながら建設部隊や傭兵団員から賞賛されているクロエさんを眺め、姉さんに確認した。


「ん?なんのことかな?」


 明らかに恍けた様子の姉さん。ダメだよ、ネタは上がってるんだから。


「言霊を使ったら途中で止める事は出来ないって姉さんが言ったんだよ。失敗するか、成功するかのどちらかでしかないんでしょ」


「ちっ、気付かれたか」


 案外素直に犯行を認めるんだな。


「クロエさんが言霊を言う前に、何度か姉さんがブレスレットに触る時があった。その時に何か細工をしてたんだよね?」


「そうだよ。でも最後は何もしてないからね。言霊に成功したのはクロエの実力だから」


 最後はブレスレットに触らなかったもんね。全くブレスレットが反応しない事が途中で何回か有ったけど、その時も姉さんはブレスレットに触っていなかった。そういうことだよな。


 俺が姉さんの見事な手助けを褒めている視界の端では、父さんと爺さん、ソゾンさんの3人が何やらこそこそ悪だくみをしている。

 何を考えているのか分からないけど、クロエさんの頑張りに水を差すようなことはしないでほしいな。

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