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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
222/907

第21話 俺は船外機について考察する

 俺の意に反して、ソゾンさんと船外機で勝負することになってしまった。


 爺さん達の競艇勝負と連動する形だが、俺達の勝敗は競艇の結果だけではなく、船外機単独の性能、原価、競艇後の販売台数なども考慮する。レース結果だけだと舟の性能や操縦者の腕も反映されるからね。


 とはいえレース結果を蔑ろには出来ない。爺さんに相談してレース会場となる水路の詳細を聞いておこう。


「そうか。あいつめ、ゲオルグの師匠に依頼するとは。本気で勝ちに来たな。まあしょうがないか。最近は船外機の複製が出回るようになってきたが、どれも劣化複製じゃからな。本物を作れるのはソゾンさんとゲオルグだけじゃ」


 最近船外機を作ってなかったけど別の人が作った物が出回ってるのか。


「こうなったら前言撤回だ。ゲオルグ、確実に良い船外機を作ってくれよ。競艇でボーデン公爵に勝てたら報酬をやるからな」


 爺さんに両肩をがっしりと掴まれて、力強く応援された。ちょっと肩が痛いです。


「待ってろよリューベ。儂の孫は強いぞ」


 ライバルに向かって爺さんが吠える。公爵位にある人を名前で呼べるのは爺さんくらいだろうな。


「それで、競艇ではどういう水路を走るのか教えて欲しいんです。直線が多いのか、曲線が多いのか。どれくらいの時間走るのか。その辺りを教えてください」


「まだどういう風に競争するかは決まってないんだが、ボーデンの外堀の役割をしている水路を使うのは確定していると言ったな。街を囲う外堀は上空から見るとほぼ六角形の形をしている。だから外堀を走るだけなら曲がり角は鈍角になる。王都ほどではないが街道の要所であるボーデンは町も大きい。外堀の直線も長いからかなり速度を出せるだろう。ただ、もしかしたら街中を走らせたいと公爵が言うかもしれん。その方が観客も増やせられるからな。外堀から街の水路に入るなら角度はきつくなるぞ。それから、ボーデンの水路は川と交通を水門で塞ぐことが出来るから、川の水を気にする必要は無い。今言える事はこれくらいだ。今度地図を持って来させよう」


 歳を感じさせない早口で水路の事を説明してくれたが、正直有益な情報は無かったように思う。

 ボーデンには一度行った事があるが、態々外堀に注目したりなんかしなかった。大きな街だったことは覚えているけど。とりあえず地図を貰ったら1周するのに掛かる時間を計算しなくては。


「出来れば地図は正確に距離が分かる物だと助かります。それと、なるべく早めに競艇のコースを決めてください」


「うむ。この村から帰る時にボーデンへ寄って公爵と話してくるから、その時には決まるだろう。その話し合いで舟の大きさも決めようと思っている。舟の大まかな規定を早めに決めないと他の参加者も困るからな」


 爺さんは1人乗りの小舟を提案して来るらしい。街中の水路も走るのなら小さくないとね。そのうち海や大きな河で競ったりもするんだろうか。


 爺さん達は4月末に帰る予定だから、話し合いは5月中旬頃になるかな。競艇の開催が7月末だっけ。コースの確定を待っていたら準備期間が足りないかもしれない。今までの考えを止めて、直線重視型と曲線対応型の2種類を主軸に作成しよう。直線重視は最高速度を、曲線対応はブレーキ性能と加速度を重視してドワーフ言語を構成しよう。ふふ、病気で引き籠っていた時に妹と対戦していたレースゲームを思い出すな。


 船外機を安く販売することを考えたら小さな魔石しか使えない。小さな魔石には数多くの言語を入力できない。どんなコースにも対応できるように色々なパターンを試行錯誤するしかないな。高価な魔石が使えたらそれ1つで何でも対応出来る物を作れるのに。


 ぶつぶつと1人で考え事をする俺に、爺さんは励ましの言葉を残して仕事に戻った。


 ドワーフ言語は色々なパターンを考えるとして、船外機の形はどうする?

 魔石の位置は水面下の方が良いかな。魔石の位置と水流の噴出孔を近づける設計にしよう。近い方が魔石から放出される魔法の損失を少なく出来るはずだ。


 でもそれなら魔力の補充はどうする?

 レース中に魔力切れなんて最悪だ。小さい魔石には魔力を多く注ぎ込めない。レース時間によってはレース中に魔力補充が必要になる。魔石が手元に近い方が補充はし易いはずだ。1人乗りの舟になるんだったら手元で色々操作出来た方が良い。


 魔石を2つ付けるか?

 それって安い魔石にした意味が無くなるんじゃないか?

 いや、安い魔石だからこそ出来ることか。舟の後方に水流を発生させる魔石と、船の前方に魔力を蓄え船外機のオンオフを操作する魔石に分けるとか。

 そうなると前方の装置でハンドル操作をする設計にした方が良いか。以前作った船外機は、船外機自体を傾ける事で方向転換していたが、1人で高速の舟を操作しながら後ろの船外機を触るのは危ないよ。前方不注意は事故の元だ。




 よし、とりあえず手を動かそう。

 アンナさんに同じ魔石を数個買って来てもらって、他の水魔石のサイズと値段も聞いて来てもらおう。

 新しく言語を考え直す必要が出来たから、クロエさんにはゆっくりナイフを作ってもらおう。

 船外機作りが有る程度進んだら、船の設計にも手を出そう。


 早く競艇の詳細を決めて欲しい。早くしないと色々考えすぎて、俺の頭がパンクしてしまうかもしれない。前世から俺は体を動かす方が好きだったんだから。

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