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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
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第14話 俺は死神について考える

 あ、しまった。

 窒息に対する魔法のこと、聞くの忘れてた。他にも聞きたいことがあったのにな。まあ、アマちゃんにお供物を渡す時でいいか。


「あ、終わった?じゃあそろそろ帰りましょうか」


 案内してくれた女性と長話をしていた母さんが俺に気付いた。心配されてないのは信頼されている証拠?

 2歳の子供を信頼しすぎるのはどうかと思うけど。


「あんない、ありがとうございました」


 女性にお礼を言って教会を後にする。もう日が沈んでしまっていた。馬車の御者さんにも待たせたことを謝罪をする。魔法か何かで灯されている街灯の下を、ゆっくりと馬車に乗って帰る。


 お祭り中にもう一度教会に行きたい。俺1人で外に行くことは出来ないから、大人についてきてもらわないといけない。母さんは明日、用事はないかな。お供物も新しく買わないと。


「ほかのかみさまにあいに、あしたもきょうかいにいきたい」


「そう、じゃあ明日はマリーがお城に行くのと同じ時間に出ましょうか。マリーとマルテをお城で降ろした後、教会に行きましょうね」


「またじゃむがほしい」


「いいわよ。でもこのお祭りの買い物は明日で最後ね」


「うん、ありがとう」


 流石に何個も買いすぎたか。マギー様のジャムも結構高かったからな。もう買えなくなるのは残念だけど、仕方ないね。




「こんにちは、今日はお祈りですか?」


 マリー達を降ろし、途中でジャムを買って、シュバルト様の教会に着いた。

 ジャムのお店では今日も来たの?って言われてしまった。気に入ってくれてありがとう、とも。

 3日間連続で子供が買いに来たら、流石に覚えるか。でもあの店のジャム、凄く美味いんだ。今日は二柱分買ったから更に目立ったね。


 教会に入ると男性に話しかけられた。こっちの教会の案内係かな。


「はい、おいのりにきました」


「では礼拝堂までご案内します」


 案内人に続いて教会の奥へと進んで行く。作りはマギー様の教会を左右対称にした感じだな。


「しずかで、いいですね」


 あっちの教会は煩いとは言わないけど、賑やかだった。単純に参拝客が多いせいだけど。


「はい、静かに落ち着いてお祈り出来る教会ですよ」


 皮肉に取られてないよね?

 礼拝堂には2人ほど先客が居たけど、お祈りする場所は十分に空いている。


「ゆっくりとかみさまに、おれいをつたえてきます」


「ほう、どういったお礼なのか伺ってもよろしいですか?」


 案内人が興味を示した。お祭りの日に子供が来るのは珍しいんだろうね。


「死のかみさまに、いままで死をとおざけてくれてありがとう。これからもおねがいしますって」


 死を強調して言ったつもりだけど、ちゃんと伝わったかな。案内人は驚いたような顔をしている。母さんに、いってきますと伝えて祭壇に登る。


 マギー様と同じようにシュバルト様の像も立派だ。左手には剣を、右手には天秤を持っている。何故に天秤?天秤って裁判なイメージなんだけど。死の裁きを与えるとかそういう意味なのかな。


 マギー様の時のように音を鳴らさないよう注意して、合掌し、黙祷する。

 しばらく待って目を開けると、目の前にシュバルト様が立っていた。


「こんにちはシュバルト様」


「こんにちは桃馬くん」


 今日は自然な笑顔でシュバルト様は出迎えてくれた。


「今日は昨日渡せなかったお供物を持ってきました。マギー様と同じ物ですが、是非受け取ってください」


「ありがとう。マギーも凄く喜んでいましたので、私も嬉しいです」


「それで、もう1セットのジャムがあるんですけど、これをアマちゃんに渡していただけませんか?」


「いいですが、神におつかいを頼みますか」


「すみません。今日はマギー様の教会がとても混んでいて入れないんですよ」


「ああ、祭りの日中は毎年混んでいますからね。こっちはガラガラですが」


 やっぱり気にしてるよね。


「死の神さまの印象をちょっとずつ変えていこうと思っているので、気長に待っていてください」


「そうですか、ありがとう」


 ちょっとずつな。人々の印象はそう簡単に変わらないと思うから。


「ではアマちゃんによろしくお願いにします。それともう一つ、マギー様の治癒魔法が窒息にも効果があるのかどうか、シュバルト様分かりますか?」


「んー、それは私には分かりませんね。マギーに連絡するよう伝えておきますよ」


「ありがとうございます」


 これで用事は全部かな。マギー様から連絡が来るのなら、聞きたいことをまとめておかないと。


「ではこれで失礼します。これからもよろしくお願いします」


 こちらこそと言って手を振るシュバルト様。瞬きした後には大きな像に置き換わっていた。一瞬の瞬きで移動するなら、特に黙祷する必要もなかったのかな。


「かあさん、おまたせしました」


 昨日同様案内人と話し込んでいる様子の母さんに謝罪する。気にしてなさそうだけど、一応ね。


「君、死を遠ざけるとはどういう意味かな?」


 案内人が話しかけてきた。ここでしっかりと死の神の印象を良くしないとな。説明しづらいけど。


「んー、死のかみは、いのちをそうさするかみ。てんびんといっしょ。いのちを死にかたむけるか、せいにかたむけるか、どっちもできるかみ。しゅばるとさまは、そういうかみだとおもいます」


 通じたかな。像が持っている天秤に絡めてみたけど。


 案内人は何かを考えるように黙り込んでしまった。ありがとうございました、また来ます、と伝えると生返事が帰ってきた。まあいっか、母さん行こう。


 これで神さまの用事は終わったね。肩の荷が下りた気がするよ。使えるお金も無いし、お祭りの残りはゆっくりしようかな。

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