第14話 俺はライバルの存在を羨む
「ドーラ達が居なくなってホッとしている。あの3人の飲み食い量は凄かったからな」
3人を見送った後、父さんが悪態をついた。俺は賑やかな人達が居なくなって少し寂しい。
姉さん達が学校へ向かって飛び立ったのに続いて、ドーラさん達もキュステへ向けて出発した。借りっぱなしになっていた商業ギルドの馬車を戻すついでに王都を経由する。
4月中には村の建設も一段落する予定で、爺さん率いる建設部隊は5月になる前にヴルツェルへ帰る予定だ。クロエさんも一緒に帰ってしまうのかな。姉さん達の勧誘に期待したい。
フリーエン傭兵団の人を雇った後も、冒険者ギルドにお願いして入植者を求めているが今の所反応が無い。最近届いた情報では国境封鎖が5月末日までと決まったらしい。傭兵団の家族を呼び寄せるのは2か月も先。このまましばらくは男臭い村になりそうだ。
さて、俺もそろそろ何か魔導具を作りたい。シビルさんの話では薬草を収穫出来るようになるのはもう少し先の話。竹は順調に育っているが今年は筍を収穫せず竹まで成長させる。椎茸は原木のままでまだ何も変化が無い。何か村の収入源にもなる魔導具を開発したいな。
こういう時は調査だ。団員の人達に今欲しい物を聞いてみよう。
「特に今必要な物は無いですね」
「水魔法が使えない俺達傭兵団も簡単に家で炊事が出来て風呂に入れる。快適な生活が出来て助かっているよ」
「東の山は歩いて登るには大変な場所があって、少し苦労しています。シビル様みたいにヒョイヒョイと山登りが出来ればいいんですが」
「俺の息子が今年2歳なんだが、誕生祭の為にいい剣が欲しいな」
「傭兵団に6歳未満の子供達は結構いるんですが、どこで剣術と魔法を教えて頂けるのでしょうか」
「そろそろ馬車引きを引退させたい牡馬がいるんだ。どこかから気立てのよい牝馬を買って来られないか?」
皆最初は遠慮がちだったが、色々な意見を伝えてくれた。あまり魔導具作りの役に立つ話は無かったけど、山での仕事を楽にする魔導具は作ってみてもいいかもしれない。
話を聞くと傭兵団の子供は10人以上いるそうだ。一番年上で来年6歳、魔力検査を受ける歳だ。北の国では魔力検査も誕生祭も無いが、この国で暮らすのならそれらに参加させたいと言っていた。誕生祭を迎える子供は3人。最近は家族が誕生祭の贈り物を用意することになっているが、ここは古に習って領主である男爵家が3人分を用意しよう。男子2人と女子1人。誕生祭は9月だからだいぶ先だけどね。父親だけじゃなく母親の意見も聞いて何を贈るかを決定しよう。
子供達を教育する場所はもう決めてある。建設を後回しにしているだけ。牝馬の件は、大きな牧場を持っている爺さんに相談した。
「それなら牧場から体の丈夫な牝馬を連れて来よう。対価を要求してもいいか?」
「あ、お金なら父さんの方へ」
「金よりも新しい船外機が欲しい。7月末にボーデンの水路で競艇を開催することがほぼ決定している。ボーデン公爵もきっと自分用に新しい船外機を用意するはず。儂も負けられないんだ」
そうか、競艇やるんだ。きっと今年も5月には王都で武闘大会を開催するだろうし、どんどん娯楽イベントが増えている。楽しみが増えるのは良い事だね。でも娯楽として楽しむのならある程度の制限を用意しないと。
「船外機の機能に大きな差があると、競争として面白くないんじゃない?」
「別に構わんだろ。競馬を行う場合でも同じ馬じゃないんだから。舟、船外機、船乗り、この3種を合わせた力比べだ。船外機一つで大きな差は生まれんよ。問題が有ったら来年から調整したらいい」
なるほど。爺さんのいう事も一理あるか。舟や船外機の規定を作って乗り手の腕だけで勝負するなら魚人族のチームが強そうだもんな。
「上手く行くか分からないけど、新しい船外機を作ってみるよ」
「あまり気負ってやらなくてもいいからな。牝馬はすぐに用意する。船外機が出来なければ金を貰うから」
出費が少なくなって安堵している父さんの為にも、船外機は完成させるよ。
「あの、王都で働く魚人族に去年から新しい船外機が出来たら売ってくれと言われているんだけど、もし完成したら競艇開催前でも売っていいかな?」
「ダメだ」
おうふ。まあ競艇で注目された後に売った方が高く売れるかもな。
「と言いたいところだが、売ってもいいぞ。ただ、ボーデン公爵には売らないでくれよ」
爺さんにウインクをされても嬉しくないんだが。
公爵に競艇で負けなければそれでいいらしい。爺さんとボーデン公爵は昔からの友人だけど、いつまで経ってもライバル関係なんだな。友達か。プフラオメ王子は元気でやっているかな。
ライバルがいる方角に向かって不敵に微笑む爺さんを見て、年をとってもライバルになれる友達が欲しいなと羨んだ。




