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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
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第6話 俺は村予定地に向けて出発する

 ドーラさんと争ったギルドマスターが先に酔い潰れた宴会の翌日、ヴルツェルから建設部隊が到着した。馬車5台に資材と作業員を詰め込み、護衛が乗る馬車が更に2台という大所帯。部隊は王都に入らず、門の外で野営している。ここまでの街でも野営だったそうだ。


「これほどよい宣伝の機会は無い。フリーグ家の名を国外にまで轟かせてやろう」


 建設部隊を態々率いてきた爺さんが、トンカツを食べながらフリーグ家の未来を語る。ヴルツェルは婆さんと伯父さん家族に任せ、最近は普段からヴルツェルとボーデン領内を往復しているらしい。いつも新しい事をしようと考えている所が、年老いても元気が漲る源なのかもしれない。


「東方伯にもきちんと話を持って行っておけよ。除け者にされたと後で文句言われても詰まらんからな」


「親父と同じ日に連絡したけど、東の国境が怪しいから人手は出せないと言われてる。村が出来たら村内で食料を安く売ってもらう約束は取り付けた。東方伯が運営している揚げ物屋なども出店して来ると思う」


 トンカツに齧り付きながら、親子二人の会話を見守る。国境が不安なんて嫌な話だね。

 父さん達とは少し離れた所で、姉さんとエステルさんがクロエさんを勧誘している。一緒に新しい村に住んでくれたら俺も嬉しい。農業経験者は手が出るほど欲しい人材だからね。


「今日は少し体調が良くないので、この辺で失礼します。貴方もお義父さんも、明日があるんだから飲み過ぎないでね」


 珍しく母さんがお酒を飲まず退室しようとしている。そう言われてみたら顔色が少し悪いように見える。シビルさんに薬を貰って来ようか?


「ニコルに診察してもらっているから大丈夫よ。村の建築には付いて行けないけど、羽目を外して怪我しないように気を付けるのよ。お父さんの言う事を良く聞いてね」


 優しく俺の頭を撫でた後、母さんは自室に戻っていった。ニコルさんに診てもらったんなら大丈夫だと思うけど、あの母さんが家に残るなんて只事じゃない。重い病気じゃないといいけど。




 翌朝、母さんに見送られて村建設へ出発。向こうに行っても役に立つか分からないし、具合が悪そうな母さんが心配だから残ろうかと思ったけど、問題無いから行って来なさいと母さんに追い出されてしまった。ルトガーさんも居るし、アンナさんも残ることになったし、問題無いっちゃ無いんだろうが、心配じゃないか。


 商業ギルドから馬車を2台借りて、建設部隊と共に移動を開始する。計9台の馬車による大移動だ。

 俺、父さん、マルテ、ジークさん、マリー、ソゾンさんの馬車。ドーラさん、シビルさん、バスコさん、団長、副団長の馬車。この2グループに分かれて移動する。御者はジークさんと副団長が担当。姉さんとエステルさんはクロエさんが乗る馬車に同乗している。煩く騒いで他の皆さんに迷惑かけてないといいけど。


 王都から北に進み、旧公爵領を西から東に流れる川を越えて、夕方には旧公爵領領都ザフトに到着。街には入らず東に進路を向けて、川沿いを東に進みながら野営出来る場所を探す。この川の南側は第三王子が担当する領地だ。連絡を取っていないけど王子も領地経営を始めているだろうか。

 日が落ちる前に比較的大きな広場が見つかり、野営をする準備を開始した。


 初めての野営にテンションが上がりまくっていた姉さんだが、作られた夕飯を見てがっくりと肩を落としている。お昼は母さん達が用意してくれたお弁当を食べたけど、夕飯は保存食で作った簡単な料理だ。堅いパンと小さな野菜が少し入ったスープと乾燥させたお肉。さすがに大人達は文句を言わなかった。文句を言いそうなドーラさんはこっそりと持って来たお酒を嗜んでいる。俺も何か用意するべきだったなと思いながら、味気ない食事を喉に押し込んだ。


 翌朝、朝食前にラジオ体操を行った。俺達が普段通り体操を始めた所、昨日も俺達と一緒に体操をした爺さんが参加し、それに釣られて多くの人が参加した。参加しなかったのは朝食作りを担当した人達とドーラさんとシビルさんくらいだ。傭兵団にも取り入れようと、団長と副団長も熱心に体を動かしていた。


 流石にランニングや剣術稽古はスキップし、朝食を頂いた。姉さんに配慮してくれたのか、朝方近くの川で捕らえた魚を調理し、子供達には魚のスープを食べさせてくれた。朝食係の方々、ありがとうございます。


 朝食後は手早くテントなどを撤収し、村建設予定地に向かって馬を歩かせた。北の畑に向かう小さな水路を越えながら東に進むと、川幅がどんどん大きくなる。このままずっと進めば王都を横断してきたシュテンゲル川と合流する。建設部隊は川の合流地点に至る前に北へ進路を変更した。

 この辺りから水路を作って、村の近くに貯水池を作り、別の水路からシュテンゲル川に水を戻す予定だ。水関係はなるべく早く取りかかりたいな。


 ザフトから此処まで割と頻繁に農業用の水路が見られたが、この辺りは少ない。公爵家はザフト周辺から優先して水路を建設していったんだろう。領地の端っこは後回しか。この辺りで農業をする住人は苦労しただろうが、我々には好都合だ。船も通れるような立派な水路を建設しよう。


 北上して暫く、日が頂点を越えた辺りで、俺達は建設用地に到着した。

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