表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第4章
205/907

第4話 俺は自分の決断を迷う

 冒険者ギルドに入植希望者達の身辺調査を依頼した4日後、冒険者ギルドから連絡が来た。割と調査に時間が掛からなかったなという印象。

 面倒な結果になっていないといいけどと愚痴りながら、父さんはギルドに向かって行った。明日にはヴルツェルから建設部隊が到着する。出来れば入植希望者も村建設に帯同して欲しいけど、無理して変な人達が入って来ても困るから慎重にやらないとね。




「元々北の国で傭兵を生業にしていた集団で、フリーエン傭兵団と名乗っていた。仕事でこの国に来たら北の国境が封鎖されて帰れなくなったそうだ。封鎖が解除されるまで40人が食っていける仕事が欲しいんだと」


 何それ怪しいんだけど。逃げ出した農民の方が良かった気がする。


「北の国境を通って来たことは確認されているの?」


「ああ、2月末日に入国手続きをした書類が残っていた。魔物の討伐依頼で来たそうだ」


 正式な手続きで国境を通過していたから調査時間が短くなったのかな。しかし魔物討伐依頼と言う点が怪しさを増す。


「態々他国の傭兵に依頼する必要があるのかな。王都の冒険者ギルドには沢山の冒険者が居るのに。しかも40人の集団で戦わないといけない魔物なんて国内にいる?」


「そんな魔物は生息していない。偶に少数では手に負えないようなドラゴン種が飛来してくることはあるが、だからと言って他国の傭兵に依頼する事なんて無い。依頼に関しては何かを隠しているのが明白だが、詳しい依頼内容は守秘義務の為に言えないそうだ。ギルドマスターは、要人を警護して来たか、あまり良くない物でも運んで来たんじゃないかと予想していた」


 守秘義務ねぇ。しかし偽の書類でも国境を通過出来るとか、警備が笊過ぎる。


「国境の封鎖っていつまで続くのかな?」


「ギルドマスターも正確には分からないそうだが、少なくとも2~3か月封鎖されるだろうと判断していた。商人も冒険者も完全に通行止めだそうだ。それでな、ギルドマスターとしてはこの傭兵団を我が家で雇って欲しいんだと。冒険者ギルドもいきなり40人を食わせる依頼なんて無いし、3か月も食料を援助する余裕は無い。だけど、食い扶持が無くて盗賊になられても困る。人材が欲しい男爵家に丁度いいから押し付けようって魂胆だ。うちだって急に40人を養うのはきついんだが」


「もうその人達は強制的に北の国へ帰した方が良いんじゃない?」


「何があっても門を開けないと国王が決めたんだと。王家への反乱に対して断固たる対応を取りたいんだろうな」


「北以外の国へ連れて行くって言うのは」


「自発的に出国するならまだしも強制的に追い出したらその国に対して角が立つ。そっちの国で盗賊行為を行ったらどうする?」


「こっちの責任じゃない気もするけど、向こうの国がどう思うかは分からないね」


「そういうことだ。俺も外交は分からん。で、どうしよう?」


 え、俺が決めていいのかな。受け入れたい。受け入れたいが彼らを信用する決め手がない。


「その人達は封鎖が解除されたら故郷に戻るの?」


「仕事があって安心して子育て出来るなら、定住しても良いと言っているらしい。ゲオルグが提案した子供への教育が気になっているようだぞ」


 それは良かった。マルテとジークさんも教師役を買って出てくれたから、質の良い教育を提供できるだろう。


「一番危惧しているのは、その人達は第二王子派が送り込んできた刺客なんじゃないかってことなんだけど、その点はどうなの?」


 あり得ると思うんだよな。間者というか、スパイというか。


「そこも分からん。対面した傭兵団の団長はそんなことないと言っていたが、証明する手立てはない」


「あ、会ったんだ。その人達は全員王都に来てるの?」


「いや、団長とあと2人だけだ。残りは国境の街で待機していたそうだが、仕事が無いから移動しようかと考えていた時にギルドで情報を得たらしい。で、話をするために3人で王都に来たそうだ」


「見た目は普通の人だった?」


「まあ、普通と言えば普通だ。団長としか喋ってないけど。見た目で言うと人族が団長含め2人で、残りが獣人族。団長と獣人族が前線に立つ戦士で、残りの人族は後衛を担当する魔導師かな。3人とも服装は汚れてたが、元気そうだった。まだ食事が出来るくらいの蓄えはありそうだな」


「そう」


 ふぅうっと大きく息を吐き、腕組みをして口を閉ざした。




「じゃあ、受け入れようか」


 しばらく天井を眺めて考えた後、じっと黙って待っていてくれた父さんに伝える。


「どうしてそう決めたんだ?」


「獣人族が居るから、かな?」


「人族と同じように獣人族は何処にでもいるぞ。もちろん北の国にもな。内陸に魚人族が居たら珍しいけど」


「まあそうなんだけど。シュバイン元公爵が人族至上主義を口にしたとドーラさんが言っていた。ドーラさんは人族至上主義なんて嘘だと言っていたけど、嘘じゃないかもしれない。元公爵だけの考えじゃなく、第二王子派で主流の考えなのかもしれない」


「人族至上主義なら獣人族を含む傭兵団なんて使わない、と思ってるのか。だが過去には、獣人族の命はどうなってもいいからと敢えて死地に向かわせる人族至上主義者も居た。人族至上主義者が獣人族を利用する場合は多いぞ」


「そういうのもあると思うけど、王子を誘拐した人も人族だったし、村を襲撃してきた人達も全員人族だった。現在の第二王子派は獣人族を使いたくないのかもしれない」


「う~ん。そう言えばこの国の近衛兵は全員人族だったな。王宮の中では他種族排除の動きが多少は有るのかもしれないな。地方の兵士には獣人族も居るとは思うが」


「まあ獣人族が居るからっていうのは後付けで、受け入れを決めたのはやっぱり人材が欲しいから。定住してくれると助かるし。でも念のため薬草を育てる温室は身元が確かな冒険者を護衛に雇った方が良いかもしれない。あ、40人を受け入れる代わりに、ギルドマスターに信頼できる冒険者を貸してもらうってのはどうかな」


「ふむ、その条件は悪くないな。なるべく安く、出来れば無料で貸してもらうよう交渉して来る」


 家から出て行く父さんの背中を見て、俺の判断でここまで決めて良かったのかと不安に感じ始めた。お願いだから他の人からも意見を求めてくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ