表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
20/907

第12話 俺は神様と再開する

 マギー様がようやく笑い終わった。何処がそんなに面白かったんだろうか。


「いや、笑った笑った。まさかあそこで、あんな大きな音を鳴らすなんてな。周りの人の顔見たか?傑作だったぞ」


 つい癖でやってしまったんです。


「すみませんでした。どう参拝するのが良かったんでしょうか」


 お、姿は子供のままだけど神の世界に来たら流暢に話せるようになった。これも何かの魔法かな。


「んー。まあ目を瞑って黙祷するだけで良いよ。跪いてとか、手の組み方とか、うるさく言っている教会もあるみたいだけど、気持ちがあればなんでも良いよ。何かやらないと気が済まないって言うなら、手の平を合わせて合掌するだけにしときな。合わせる時に大きな音は立てるなよ」


 そう言ってまた笑い出した。思い出し笑い。そんなに面白かったか。


 笑い終わらないけど、もう話を進めよう。


「今日この教会に来たのは今までのお礼を言うためです。この世界に産まれてから2歳と4ヶ月、怪我をしてもすぐ治り、病気で寝込むこともありませんでした。マギー様がかけてくれた魔法のおかげです。今までありがとうございました。そしてこれからも、よろしくお願いします」


 精一杯の感謝を込めて伝える。途中からマギー様も真面目な様子で聴いてくれた。


「どういたしまして。これからも魔法はしっかりと機能する筈だ。でも私はアマちゃんに頼まれたからやっただけだ。アマちゃんと連絡することも出来るけど、どうする?家族のことも聞いておきたいだろ?」


「あ、そうですね。よろしくお願いします」


 俺の了承を聞いて、マギー様が眼を瞑る。何かブツブツ言っているが聞き取れない。これから何が始まるんだろう。


 マギー様が目を開き、右手を水平に上げその先を見る。つられて俺もその先を見る。礼拝堂の壁がぐにゃっと回る。少しずつ回転が速くなっていき、少しずつ色が薄くなっていく。最終的に壁が無くなり、新たな空間が出現した。


「ああ、やっぱり日本のお饅頭は美味しいです。こしあんたっぷり、こっちは白あん、つぶあんも好きですよ。ああ、いくらでも食べられますね」


 新しくできた空間に見知ったダメな女神がいた。机の上に箱を広げ、両手いっぱいに饅頭を持ってかぶりついて幸せそうだ。声をかけてみよう。


「そんなに食べたら太るぞ、アマちゃん」


「そう、それが問題です。しかし今は美味しいおやつを食べる時、そんなことは頭の片隅に追いやってしまいましょう」


 ダメだ。会話をしている風だが、完全に饅頭に目がいっている。


 マギー様が溜息を付いている。ちょっ呆れ気味だ。あ、動いた。アマちゃんの背後に音も無く近付いたマギー様。どうすんの?


「いったああい」


 背後から後頭部をぽかり。いい音が聞こえた。痛がっていても両手の饅頭を落とさないところは流石だ。


「何ですかマギー。叩かないでって言いましたよね」


「今日空間を繋げるから宜しくって伝えたよな。何やってんだよ」


 ようやくアマちゃんが饅頭から目を逸らした。周囲をキョロキョロしてるアマちゃんと目が合ったので手を振っておく。


「あ、しまった今日でしたか。供えられたお饅頭に気を取られて、逃げるのを忘れていました」


 そんな大きな声で情けないこと言うなよ。


「あ?逃げる?」


 マギー様がちょっと怒ってる。まあそうなるわな。


「いや、何でもないです。それよりあそこで手を振ってる子は誰ですか?」


 それでは誤魔化されないと思うけど。


「桃馬だよ。桃馬の今世の姿。今回の名前はゲオルグだ」


 呆れ顔で話を進めるマギー様。アマちゃんに慣れるとそうなるのかな。


「げっ」


 えええ、そんなあからさまに嫌な顔しないでよ。最初に会った時殴ろうとしたのが不味かったかな。いい印象を残す為に丁寧に対応しよう。


「お久しぶりです。おかげさまで元気に暮らしています。そっちの家族の様子はどうですか?」


「あ、ああ、お久しぶりです。皆さん元気に暮らしてますよ。心配事は何もありません」


「そうですか、ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」


 何もなくてよかった。これからも1年に1回は聞きに来よう。


「マギー様、ありがとうございました。安心しました。これは今までのお礼にと持って来たお供え物です。どうぞ受け取ってください」


 ずっと持っていた紙袋をマギー様に渡す。断られるかもって思ったけど素直に受け取ってくれた。


「お祭りで食べて美味しかったジャムを何種類か持ってきました。パンやワッフルに乗せて食べてください」


 神さまって食事するのかなと思ってたけど、饅頭をバクバク食べるアマちゃんを見て不安はなくなった。マギー様も喜んでいるみたいでよかった。


「私の分は?」


 お供えを催促するってどうなの?


「アマちゃんにお会い出来るとは思っていなかったので用意していません。すみませんが、マギー様と分けてください」


 アマちゃんが紙袋を覗こうとして、マギー様が紙袋を隠している。喧嘩しないでね。


「美味しそうな物をありがとう桃馬。あとで頂くよ」


 紙袋を奪おうとするアマちゃんを片手で制してマギー様が言う。分ける気はなさそうだ。マギー様も甘い物が好きそうで良かった。


「アマちゃん、今日はこれで帰りますが、また今度同じ物を買って来ます。なので今日は諦めてください」


 必死なアマちゃんを見るに耐えないから、つい言ってしまった。お祭りはあと3日あるから買う時間はあるだろう。問題はお金だけね。


「あ、ありがとうございます」


 マギー様と争って息を切らせたアマちゃんにお礼を言われた。これで買って来なかったら天罰とか無いよね?


「悪いな、桃馬。でも帰る前にもう1つ用事があるんだけど、いいか?」


 まだ何かあるのか。教会に着いた時は夕方だったから、あまり長居出来ないぞ。


「手短にお願いします」


「そう時間はかけないよ」


 俺の背後からマギー様とアマちゃんじゃない、別の声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ