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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第95話 俺は魔力検査の慰労会に参加する

 魔力検査の結果発表から3日後、お城で魔力検査の慰労会が開かれた。

 検査結果上位3人の表彰と顔見せが主な目的。派閥仲間への挨拶、結婚相手の選定ために、検査を受けた同い年の子を持つ親だけでなく、多くの貴族が参加する。今年は第三王子が一位だから、派閥に接触しようと多くの貴族が参加するんじゃないかな。


 3日以内で王都に到着出来ない距離に住んでいる子はどうするんだろう。そういう子が上位に入ったら開催を遅らせるそうだ。毎年上位に食い込むのは貴族の子らで、その子らは概ね王都で生活するから開催を遅らせる機会はそう多くないらしい。因みにエマさんが3位に入賞して以来、民間からの入賞者は出ていない。


 マリーはもちろん参加だ。何せ2位だからな。マルテもジークさんも喜んでいたが、俺の前ではあまり感情を表に出さない。俺に遠慮する事なんかないのにね。


 俺は参加を見合わせようかと当日まで考えていた。上位2人は知り合いだから顔合わせをする必要も無いし、変な噂が流れているみたいだし。そう思っていたら姉さんが一緒に行こうよと言って来た。どうもお城での食事を楽しみにしていたらしい。クロエさんがヴルツェルに帰っちゃったのも原因だと思う。


 結局男爵家総勢7名で慰労会に参加した。子供3人と大人4人ね。

 城に入ると各所で俺の噂話が聞こえた。良い噂話は全く無い。耳栓でも持って来たら良かったな。俺が気にしないようにしているから、皆も黙って聞き流している。みんなに迷惑かけてるなとちょっと後悔。


 慰労会が開かれる大部屋に到着すると、プフラオメ王子がアプリコーゼちゃんと共に扉の前で開場を待っていた。妹ちゃんは今日もニット帽を目深にかぶっている。帽子が好きなんだな。


「あ、ゲオルグさん。今日は参加しないのかと思っていました。会えて嬉しいです」


 噂話は王子の耳にも入っているんだろう。


「俺は来るつもりなかったんだけど、姉さんがどうしても行きたいって言うから」


「やあ、王子、ごきげんよう。1位おめでとう。クロエもおめでとうって言ってたよ」


 気軽な言葉遣いとは裏腹に、優雅なカーテシーで姉さんが王子に挨拶をする。そういうのは母さんが教えているんだろうか。王子もボウアンドスクレイプで対応。俺もやった方が良いの?


 ひとしきり家族が王子に挨拶したところで開場時間となった。まだ会場内の人は疎ら。これから会場に人が溢れるようになるまで待って、王様による上位の表彰が行われる。暫くは会場内に用意されている食事を堪能しながらの御歓談タイムだ。


 以前姉さんの慰労会に参加した時はお城の料理に驚きを覚えたが、この前も食堂で料理を食べたし、俺が広めた料理が多く出されていて新鮮味は無いな。お城に勤める料理人のアレンジに期待したい。




 時間経過と共に、王子の元へ挨拶に来る人が増える。でも王子より、離れた席に座っているローゼマリーさんの方へ人は流れている。父さんによると、ローゼマリーさんの父親である南方伯は現王と仲が良く、第一王子が王位を継ぐべきだと以前から標榜しているそうだ。シュバイン公爵の凋落により第二王子派の貴族が第一王子派の南方伯に近づこうとしているんだと。そんなに簡単に鞍替えできる物なのか。派閥というのはよく分からないな。


「こっちが弟のゲオルグで、こっちが弟の乳母の娘マリー。で、こっちがプフラオメ王子と、王子の妹のアプリちゃん」


 ぼーっと南方伯周辺の人込みを眺めていると、姉さんの声が耳に入った。

 そちらに目を向けると姉さんと手を繋いだ女の子が。なんかエマさんと知り合った頃を思い出すな。


「こんにちは、ローゼマリーです」


 はい、存じ上げています。俺達3人もローゼマリーさんに挨拶を返す。


「あっちの席で暇そうにしてたから連れて来たの。これ、美味しいよ」


 魔法で椅子を呼び寄せ、ローゼマリーさんを座らせる。続けざまに、こんもりと盛られた唐揚げをオススメしている。無理矢理連れて来られたんじゃないといいけど。


「ありがとうございます。今日はお城での食事を楽しみにしていたんで嬉しいです」


 薦められた唐揚げを美味しいそうに頬張る。楽しんでいるようだけど、お父さんと一緒に居なくていいんだろうか。


「ローゼマリーさん、あちらの席で皆さんのお相手をしなくてもよろしいんですか?」


 俺が声を掛けた時、一瞬だが鋭い視線で睨まれたように感じた。


「大丈夫です」


 簡潔に答えるローゼマリーさんに少し違和感を覚える。俺、何か嫌われるようなことしたっけ?


「ローゼマリーさんの技能試験を観てました。あれは姉さんの朱雀ですよね。4体も操れるなんて凄いですね」


「私は歴代1位を保持しているアレクサンドラさんを尊敬しています。そのアレクサンドラさんの弟なのに、魔法が使えないなんて恥ずかしくないんですか?」


 おうふ、強烈に痛い所を攻撃された。そういう感情が俺への態度につながっていたわけね。


「ふっふっふ。甘いねローゼちゃん。うちのゲオルグを舐めてもらっては困るのだよ。この唐揚げはゲオルグが広めた物。ゲオルグを時間を掛けてローゼちゃんを笑顔にする魔法を仕込んでいたのだ」


 なんか回りくどい言い方をして姉さんに褒められた。褒められたんだよね?

 魔法を使えなくても人の役に立てると言いたいんでしょうか、それとも検査では測る事が出来ない魔法が存在するとか、と王子が真面目に首を捻っている。そんなに深い事を考えてないと思うぞ。単純に唐揚げを自慢したかっただけだよ。

 いつの間にか現れていた第一王子も、その通りだとか言って姉さんを甘やかさないでください。

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