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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第3章 俺は魔力試験に挑む
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第89話 俺は魔力の測定に挑戦する

 検査開始時刻になり、列に並んでいた子から順番に検査装置、込められた魔力量を感知して数字化する装置、へ移動していく。

 トップバッターは公爵家の息女。次は俺と同じ男爵家の子息とその子に付き従う男女、よく似てるから双子かな。それから男爵家の息女と従者と思われる女の子が後に続く。俺の後ろの方に並んでいる人達は大きなグループを作って談笑している。同じ派閥に属する家の子達なんだろうか。派閥内の会合とか無いと他家と知り合うタイミングは無いよね。


「ゲオルグ・フリーグ」


 俺の順番が来た。王子とマリーに見送られ、検査装置へ足を向ける。


「歴代一位の弟だ」「最近領地が栄えている男爵家の」「フリーグ家は第三王子派に鞍替えか」「今日知り合いになっておいた方がいいかも」


 周囲の噂話が耳に入る。同級生たちも検査に従事する職員たちも好き勝手に話しているな。あんまり注目されると緊張するから止めて欲しいが、王子と仲が良いと知られては仕方ないか。


「この魔導具の窪みに手を乗せ、魔法を発動する要領で魔力を注いでください。くれぐれも魔法は発動しないように」


 職員の一人から説明を受ける。興味深い魔導具だ。どういう構造なのかとても気になる。

 気になるが、さあ、やりますか。


 魔法の使い方は分からないけど、やるしかない。

 右手を魔導具に当てる。目を瞑って姉さんや母さんが魔法を使う様子を思い出し、魔力を込める。


「反応しませんね。もう一度お願いします」


 首を傾げる職員さんに促され、もう一度魔力を込める。今度はバスコさんを見習て、むんっと気合を込める。


「う~ん。ちょっと変わってください」


 職員さんに場所を譲る。パパッと魔導具を点検し、最後に自らの魔力を込める。職員さんの魔力は問題無く測定されていた。やっぱり俺からは魔力が放出されていないらしい。


「分かりました。ゲオルグ君は別の魔導具を使って再測定をします。申し訳ありませんが順番は最後になります」


「判断が速いですね」


 上司に確認しなくていいんだろうか。


「貴方のお姉さんの測定時も魔導具は可笑しな反応を示していました。それ以降魔導具で異常な反応を示した方は最後に別の魔導具を使って検査し直すという規定になっています。お姉さん以降でそれが適応されるのは初めてですが」


 ああ、そうですか。ここでグダグダやってても渋滞するだけだもんな。またフリーグ男爵家かって感じなのかも。

 ではまた後ほどよろしくお願いしますと伝えて魔導具を離れた。


 次に呼ばれたマリーとすれ違うときに軽く事情を伝える。


「敵を討って来ます」


 物騒だな。力み過ぎて魔法を発動させないようにね。

 マリーを見送り王子の元に戻る。


「最後に回されちゃった」


 何でもない事のように伝えた俺を、王子が励ますように言葉を紡ぐ。


「じゃあ僕の次ですね。一緒に他の人の検査を観ましょう。きっと楽しいですよ」


「そうだね。とりあえずマリーの魔力測定が終わったら、技能試験について行こうか。まだマリーが何をやるか知らないんだよね」


「そうですか、僕も楽しみです」


 おおおっと驚嘆の声が上がる。マリーがかなり良い成績を残したようだ。姉さんの記録には届かなかったが現在1位。自分の事のように嬉しくなる。


「凄いです。僕も頑張ります」


 マリーの結果を聞いて王子が気合を入れる。


「さすがにアリー様には届きませんでしたが、良い結果が残せたと思います。ゲオルグ様の敵は討ちましたよ」


 検査を終えたマリーが少し安心したような表情を見せる。俺はまだ死んでないけどな。


「これから移動して技能試験に行ってきます」


「あ、俺達も観に行くよ」


 マリーと王子と一緒に技能試験を行う場所、普段は兵士の訓練場として使われる場所へ移動した。


 4人の検査員が1人1つの土塊を的として魔法で動かし、それを魔法で撃ち落とすのが検査内容だ。先に測定試験を終えた子達が順番に実技を見せていた。火魔法と土魔法がメインで風魔法を使うと能力があると思われるようだ。


「では、言って来ます」


 俺の順番を抜かして、マリーの順番が来た。訓練場に入り、動き始めた的と対峙する。


 魔力を練ったマリーが、魔法を発動する。


 マリーの周囲に金属の大きな塊が出現し、徐々に形を変えていく。手が伸び、足が生え、関節が出来、頭が現れ、人型の金属が完成。これは、ゴーレムと呼べばいいんだろうか。表情はついていないが、背格好はジークさんに似ている。身近にいる人物を模倣したんだろう。金属のジークさんは普段やっているラジオ体操を模して、体の動きを確認している。


 更にマリーは魔法を続け、金属ジークに両刃の巨大な直剣を持たせた。


「行け、メタルジーク」


 マリーが格好つけて名前を叫ぶ。明らかに姉さんの悪影響だ。

 命令を受けた後、身体に似合わず素早い動きを見せたメタルジークは、上段から剣を振り下ろして的を叩き落としていく。まさか物理攻撃を行うとは思っていなかったのか、的を動かすはずの職員が呆然としてしまったため、マリーの実技はあっという間に終わってしまった。


「もう少し色々と考えていたんですが、拍子抜けしました」


 もっと見せ場を作りたかったと残念そうにマリーが言う。職員はかなり驚いていたから、十分印象を残せたと思うよ。

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